皮膚呼吸しか知らない蛙

アスペルガー症候群当事者が、2次障害に溺れることもありながら社会に適応していく道のりを綴っていきます。

発達検査結果アセスメント事例 - WISC-Ⅲ実施にあたっての注目点 -

2008-12-01 00:31:24 | ウェクスラー知能検査
前回の続きです。

WISC-Ⅲの検査結果と解釈

WISC-Ⅲ実施にあたって注目する点について

1.検査場面での行動

知能検査での反応の様子は、飽きてくると「わからない」と即答したり、検査器具を手でもてあそんだりする。検査中、席を離れることはなかった。

一対一場面での行動観察と、検査者視点の対象児の印象・特徴的行動を観察。

2.反応の特徴
問題説明が終わる前に検査を開始したり、興味のない設問になると「わからない」と即答することが多く見られた。
検査室に入ってきた時、対象児はどんな様子であったか。対象児は年齢相応に見えたか。身長、体重、顔の特徴、また、身だしなみ、清潔さ、服装、姿勢などについて印象に残ったことだけを記載する。
対象児は協力的であろうとしたか。正答を得るために努力したか。検査に集中したかなど。
また、対象児の視覚、言語、運動の問題で検査中に観察したことを記載する。

<絵画配列><絵画完成><符号><積木模様>では、説明が終わるのを待てずに取りかかろうとした。
<類似><単語><理解><知識>では言葉少なげに答えていた。<単語>で「犬」→「怖いもの」、「太陽」→「眩しいのできらい」など言葉の説明ではなく、主観を答えていた。
<類似>では「リンゴ」と「みかん」で「色が似ている」と回答し、「電車」と「バス」では、「人を乗せて運ぶ交通機関。朝と夕方は通勤客で混んでいる。」と年齢不相応な社会的認知が垣間見られる回答もある。
<理解>では簡単な言語表現での反応にとどまり、質問を出しても答えは広がらなかった。
<組合せ>では「馬だ」などと完成図を予想することは出来たが、ピースを組み合わせることに失敗した。
<算数>は、答えた問題は全問正解だったが、分からなくなったら即あきらめた。

検査する前に、主訴と背景となる情報に基づき、焦点をあてる側面を検査全般ととおして考えておく。

(1)情緒・行動面
①活動レベル
例えば、緊張・落ち着きのなさを示す証拠としては、爪をかむ、足をブラブラさせる、そわそわする、口数が多い、つかえながら話すなどである。
②注意の範囲(気の散りやすさ)
課題に集中したか。検査中に休憩はどの程度必要だったか。検査者が提示した一連の数字を順番通りに復唱する課題<数唱>で、1問ずつ注意の喚起が必要だったか。
③失敗や困難時の反応
1:制限時間いっぱいまで課題を続けたか、それとも簡単に断念したか。
2:支持や援助を頻繁に求めたか。
3:ちょっと失敗しただけで、他の課題に対するやる気を失うことはなかったか。
4:うまくいかなかった時、攻撃的になったか、それとも依存的になったか。
④自己に対する態度
1:対象児は自己をどうとらえているか-自信を持っているか、それとも自信を失っているか。対象児の自己の捉え方と現実との一致度はどうか(例えば、自信満々の言動を示したが、検査の結果はよくなかったとか、その逆とか)。
2:対象者は検査者の承認を得る為に、どんな行動を示したか。検査者が対象児の課題を解こうとする努力を褒めた時、どんな反応を示したか。

(2)認知面
①言語のパターン
対象児は積極的に話したか、それとも質問された時だけ答えたか。語彙の豊かさは年齢に比べてどうであったか。
②問題解決のスタイル
1:熟考型か衝動型か。
2:試行錯誤によるものであったか。
3:自分の作ったものの再確認をして検査者に提示したか。
③記憶力、創造性

(3)下位検査の反応と特徴
“質的分析”とは、下位検査の成績を表す評価点では知ることの出来ない、各検査項目レベルでの対象児の得点・失敗パターンの分析のことである。例えば<知識>で、順序に関する問題(「火曜日の次の日は何曜日ですか」)ができないとする。これは、WISC-Ⅲのプロフィール分析で<算数><数唱><符号>で対象児の成績が悪い場合、「対象児が物事を順序関係のなかで理解する能力(継次処理能力)において弱い」というアセスメント仮説を支持する1つの証拠となる。
<WISC-Ⅲ アセスメント事例集 -理論と実際-  より引用>

評価点を決定する検査者の判断にも依存し、下位検査の成績を表す評価点では知ることの出来ない、対象児の情緒・行動・認知パターン・反応の特徴なので、WISC-Ⅲの得点結果だけを渡される場合には知ることができない。
しかし、対象者の特性の多くが表れているので、検査前の焦点のもと、矛盾のないアセスメント仮説を確立するためにとても重要な要素となる。 
「検査の順番のはじめのほうだけ答えられた」のと「順番がばらばらで答えられた」場合では解釈も変わる。
同一下位検査において類似する間違え方をしている際には、よく観察し、どの様に考えていたのかを尋ねてみることも必要。

検査者によって+2点、+1点、0点と評価点をつけることになりますが、検査者自身の「知識」「常識的感覚」なども求められる為、かなり多くの情報をとり逃してしまったり、一方的な解釈になってしまうことがあり得るので注意が必要だと思います。
評価点として直接見られないという点も問題で、検査者はなるべく詳細を記載することが望まれる所かも知れません。 



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