皮膚呼吸しか知らない蛙

アスペルガー症候群当事者が、2次障害に溺れることもありながら社会に適応していく道のりを綴っていきます。

発達検査結果アセスメント事例 - プロフィール分析の結果と解釈 -

2008-12-03 19:57:57 | ウェクスラー知能検査

前回の続きです。

WISC-Ⅲの検査結果と解釈

1)プロフィール分析の結果と仮説の採択

空間視覚化が比較的強い
対象児は、図形問題やグラフの問題など、瞬時に正答してしまうことが多かった。検査では、<積木模様><記号探し>に生き生きと取り組んでいた。これらの検査では、誤答はほとんどなかった。他の検査ではあきらめが早かったが、間違えないようにとじっくり取り組むため、やや時間がかかり得点が上がらないものもあった。
これらの根拠により、この説が支持される。

「言語記憶」「短期記憶」が比較的強い
対象児は検査中、聞き間違い、聞き返しがほとんど見られず、<算数>の長い文章題も聞き返すことなく正答していた。<数唱>では順唱での正答率が高かったが逆唱が著しく低い為評価点は低かった。評価点が得られなかった設問は「わかりません」と即答が多く、再度質問しても同様で途中までの回答すら見られなかった。これは聴覚的な記憶、ワーキングメモリーは十分機能していると思われるが、正答を導き出せない事に対する不安が考えられる。また<符号>においても相対的に高い評価点が得られており、聴覚、視覚ともに短期記憶は強いと考えられる。
これらの根拠により、この説が支持される。

「常識(原因 - 結果)」「社会的理解」が比較的弱い
検査結果では、<理解>の評価点が相対的に低かった。原因と結果を予測することが必要な<絵画配列>で、ある特定のパターンでの誤答が確認された。
対象児は、主訴として友人関係でトラブル、勝手な行動をとることが挙げられている。本児は、興味の偏りやこだわりが強く、様々な社会生活を通して社会性を取得する機会が少なかったことが考えられる。
これらの根拠より、この説が支持される。

「言語概念化」が比較的弱い
検査結果では、<単語><理解>の評価点が相対的に低かった。
検査時、場面にそぐわない言動が見られた。これは、言語概念を用いて場面を把握し適応する能力が弱いためと考えられる。<単語>では出題者の意図に無関係な独語、主観を語ることが見られた。<類似><単語><理解><知識>では、小さな声で答え、自信がなさそうな態度を示した。
これらの根拠より、この説が支持される。

「言語的推理」が比較的弱い
検査結果では、<理解>の評価点が相対的に低かった。
「隣家から煙」の課題では、「クサイ」、「モクモク」と言語的表現に乏しく、現実的課題に対応して推理することが困難であることが考えられる。
これらの根拠より、この説が支持される。

文化的負荷の高い知識が比較的弱い
検査結果では、<理解>の評価点が相対的に低かった。
対象児は1歳半から保育園に入園し不適応反応を示し、以後集団不適応が認められている。家庭内においても孤立しがちで、文化的知識に触れる機会が乏しいと言える。<理解>の課題においても始めの数問に素点がつくだけで、文化的負荷が高い課題では口ごもることがしばしば見られた。
これらの根拠より、この説が支持される。


2)WISC-ⅢとK-ABCの結果の比較

1.数唱
WISC-Ⅲでは「±」、K-ABCでは「+」であった。WISC-Ⅲの評価点は、逆唱の点の低さによるものであった。これは順唱、逆唱の両方において同様の記憶方法を用い、逆唱で失敗したためだと考えられる。この結果は、場面の切り替わり対する適応の弱さや、イメージングの弱さを示すと考えられる。日常生活におけるこだわりの強さからもこの解釈が支持される。

2.算数
WISC-Ⅲでは「S」、K-ABCでは「-」 であった。WISC-Ⅲでは聴覚刺激のみでの出題であり、K-ABCは視覚的手がかりである絵に基づいて聴覚的に出題される。
K-ABCの<語の配列>で、視覚刺激と聴覚刺激の両方に注意するのが難しい様子が見られたことから、<算数>でも同様に感覚統合における困難さが表れたものと考えられる。WISC-Ⅲの<理解>において、言語から類推する状況の手がかりを掴めなかったとも考えられ、本児の推理能力の弱さを表すものと考えられる。


次回『総合所見』に続きます。



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