徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

ワンダフル・ライフ ;バージェス頁岩と生物進化の物語 を読んで

2015年03月09日 | 進化

カナダ、ブリティッシュコロンビア州のロッキー山脈バージェス山付近の頁岩から5億数千万年前のカンブリア紀の化石が出てくる。 S.J.グールドは著書、ワンダフルライフでその内容と意義を紹介している。

地球が45億年前に出来て最初の増殖する分子生命が深海底で発生し、原核生物が現れ大気中酸素を造り出し、原核生物(古細菌?)であるミトコンドリアとそれを取り込んだ細胞が真核生命に進化し、代謝の表面積制限を脱した真核細胞が多細胞生物を形成するまで約40億年。その後の5億数千万年で多細胞生物は驚異的な進化を遂げ我々人類を生み出した。

バージジェス頁岩はこの最初の多細胞生物の爆発的進化を化石として残している。カンブリア・エクスプロージョンと呼ばれる爆発的進化だ。このバージェス頁岩化石の解析から解った事実は従来の弱肉強食に基づく漸進的進化の考えを大きく覆すことになった。多細胞生物出現と同時に短期間(500万年)の間に我々の祖先である脊索動物を含む、あらゆるタイプの生物の原型が現れたのだ。単純な生命から徐々に複雑な形態の生命に進化する、というモデルは崩れ去り、むしろ生命進化は初期の爆発的な多様性の中から偶然に生き残った形態の生物が現在の生物相を形成しているという事を意味している。

なぜ、このようなカンブリア紀に爆発的進化が起こったかを、まだ誰も説明できては無い。しかし、進化と言うものが正統的な適者生存に基づくダーゥイニズムによるものでは無さそうだ、と言う事をこのバージェスの化石群は示している。この事実の指し示すものは進化における偶然性だ。もし、漸近的な適者生存であれば進化の道筋は必然的に単純な生命から意識を持つ人類につながる。しかし、バージェス頁岩の示す生命の多様性とその後の収斂の過程を見ると、生き残りは偶然性に支配されているように見える。つまり、進化の歴史の過程で人類が出現したのは大いなる偶然の結果だと言う事になる。

グールドは繰り返し言う、もし進化のフィルムを巻き戻して再生する事が出来るなら、生命は決して同じ道筋を辿らないだろう、と。意識を持った人類が出現したのは奇跡的な偶然の積み重ねの結果だということだ。

バージェス頁岩化石からのメッセージを拡大解釈するとSETI問題につながる。宇宙における知的生命の可能性だ。SETIプロジェクトでは、すでに60年以上も電波探査を行っているが地球外知的生命の痕跡は見つかって無い。そして、地球上にも過去に知的生命が訪問した痕跡は無い。これ等の事実と進化の偶然性を併せて考えると、人類はもしかしたら宇宙で唯一の知的生命なのかもしれない。我々は宇宙で一人ぼっちの存在かもしれない、という事だ。少なくとも銀河系には他の知的生命体は存在しない、と言い切って良いだろう。そうなると、我々の存在の意味は大きい。宇宙の存在を意識できる唯一の存在。

内輪もめをしている場合では無い、我々は宇宙に普く拡大していく義務が有る。


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