徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

人類とは何か なぜネアンデルタール人は滅び、我々は生き延びたのか?

2013年06月01日 | 進化

ディビッド・ホロビンの ”天才と分裂病の進化論” は実に面白い。ここで示される人類進化の道筋(と諸説を併せる)は次のようになります。

1.まず700万年前にチンパンジーとの共通祖先から直立歩行能力での分岐が起った。 この分岐は以前、本ブログで言及したことのある背骨の小さな骨片の変異がきっかけとなっている。この変異により、猫背の背骨が反対側を向く仰け反りの形になった(一種の奇形です)。これにより人類の祖先は、いやでも直立せざるを得ない状態になった。

2.そして200万年前に脳の巨大化が始まった。 よく、直立歩行の結果として両手が使えるようになり、それが脳の巨大化を招いた、という説を言われるがこれは全くの間違いです。直立歩行を始めて500万年の間、事実として脳は全く大きくなっていない。脳の巨大化と直立歩行は独立のイベントなのだ。

この脳の巨大化は脂肪代謝に関わる生化学的な突然変異に拠るものと推測されている。チンパンジーには皮下脂肪がほとんど無いのに対して、ヒトはたっぷりと皮下脂肪を溜めている。女性の胸と尻、あるいは丸々と良く肥えた新生児、これらはヒトに特有なものです。

そして、脳は60%が脂肪で出来ている。進化を考える時、ついつい良く使うから進化すると考えがちで、脳も使えば進化して大きくなる...という思い込みがあるが、事実はそうではない。進化は突然変異により起るのだ。ヒトの尻と胸と皮下脂肪を形成した、たった一つの変異が同時に脳の脂肪代謝を変えて巨大化を招いた...にすぎない。

3.ヒトの化石は必ず当時の水辺で見つかる。汗っかきのヒトは水を携帯しない限り、サバンナでは一日と持たない。(チンパンジーがひょうたんに水を詰めて暑いサバンナを歩き回ったなんて冗談以外に想像できません)

すべての新生児には水泳能力がある事をご存知であろうか?生まれたての赤ん坊は嬉々として泳ぐ。チンパンジーの赤子はもちろん溺れる。大人のチンパンジーは極度に水を怖がる。

そう、ヒトはチンパンジーとは違う半水棲動物なのです。そして、呼吸を止めて潜る能力は、呼吸を制御して話す能力を生み出した。

4.脳は巨大化したが、その脳が生み出した石器文化はあまりにも退屈で、200万年の間、あまり代わり映えはしなかった。たった3万年前のネアンデルタール人の石器もそうで、どの石器も社会的学習によるコピーが連綿と続いていた。

しかし15万年前に突然、知の爆発が起った。アルタミラノの洞窟壁画を見よ。あのような写実的でダイナミックな芸術は15万年以前には存在しなかった。石器もこのときから谷ごとのバリエーション、作家ごとの違い、創意工夫、200万年間変わらなかったものが全く違う変化を始めたのだ。 この時ω3脂肪酸代謝に関する突然変異が起ったのだとD.ホロビンは主張する。

この変異はω3脂肪酸が欠乏すると統合失調症を引き起こすが、ω3脂肪酸が充分ある状態であれば脳の反応機構を変えて創造性を発揮する。(この変異は脳だけで無く、全身の生化学反応と関連している。たとえば、リューマチの患者からは統合失調症は発症せず、統合失調症の人はリュウマチには成らない。)

なぜ、このような事がいえるかと言うと現在でも創造的な作家や、古くからの名家と呼ばれる血筋から高確率で統合失調症が現れる事実があるからだ。統合失調と人類の創造性、あるいはリーダーシップとは表裏一体なのだ。統合失調症は人種を問わず一律に約1%という高率で発病する。これはこの症状が人種に分離する前からあった源初的なものであることを示している。

そして、ネアンデルタール人にはこの能力は無かった。かれらは明らかに現生人類である我々よりも大きな脳を持っていた(平均で約10%)。にもかかわらず、退屈な石器を造りながら二万五千年前に絶滅した。その違いは、たった一つの遺伝子の違いによる。統合失調症遺伝子だ。 つまり、我々人類は ”Homo・Insania ホモ・インサニア 狂ったヒト” と言うわけだ。もちろん、ネアンデルタール人を殺ったのは狂ったヒトだ。彼らが到底考え付かない卑怯な(つまり独創的な)闇討ちで襲ったのだろう。

ちなみに、ω3脂肪酸は魚介類に多く含まれ、人類が水辺で漁労・採集生活を続けている限りこの遺伝子は良い面だけが発現し、統合失調症は出なかった。しかし、農業が始まり、工業化が進むにつれω3脂肪酸摂取は1/30になり、統合失調症の発現率が先進国で増加している。

5.古代人には意識が無かった、という説(神々の沈黙;ジュリアン・ジェインズ)がある。彼等は神の声を右脳で聞き、それに従って意識無く行動していた。これは統合失調症状と類似している。そして、言語・物語の成立に伴い、現在の意識が芽生えた。2000年ほど前の事だ。

チンパンジーと我々の遺伝子はほんの少ししか違わない。(と同時に、我々とバナナは60%の遺伝子を共有し、酵母とは40%を共有している。) その、ほんの少しの違いが我々とチンパンジーを隔てているに過ぎない。進化は突然変異により引き起こされ、決して行動の積み重ねでは起らないという事です。

”Only the Paranoid survive. パラノイアだけが生き残る” インテル創業者の一人であるアンディ・グローブが残した至言だが、これは決して誇張や皮肉や冗談ではなく、実は人間の本性を、そしてネアンデルタール人が生き残れなかった理由を指摘しているのです。




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