不思議な音の国は、上巻・下巻の2冊からできています。
著者のイリーナ・ゴリンさんは、「2冊に1年以上費やすべきではない」と仰っています。
実際、週2回レッスンの生徒さんは2冊を終えるのに、1年もかかっていないように思われます。半年もすると次のシリーズに進んでいるのがyoutube で見るとわかります。
私の所は全員、週1回30分レッスンです。
毎日、最低1時間練習をしている生徒さんで上巻は12回レッスンがかかりました。
上下巻合わせると、1年2カ月かかりました。
(コロナでレッスンが2カ月休講になったので実際はもう少し短かったと思います)
教本を使い5年経ちましたが、平均して上巻は8カ月かかります。
このくらいでしたら心配するほどのことはありません。
今回問題にしたいのは、上巻だけで1年以上かかる場合です。
1年以上かかるのは練習不足と親御さんのご協力が得らないことは明白です。
上巻は何をする本かというと、音の読み方やリズムを覚えることは他の本と同じですが、おそらく全く異なることは、良い音でピアノの音を鳴らす基盤をここで身に付けることです。
手の中心にある3の指からノンレガートで習い始めることで、腕と手首を使いピアノ本来の音が鳴らせるようにすること。
一般的な本ではここを後回しにせざるを得なく、後回しにした結果、響きのないガサガサした音で永遠に弾いていくことになります。もちろん全ての生徒さんがそうなるのではありません。しかし、そうではない生徒さんは限られてきます。
さて、楽器を演奏するということは音が美しくなければ話になりません。
ここを大事に思っているので、「不思議な音の国」を使っているのですが、この本の上巻に1年以上かかるとどういうことになるか。
腕と手首が下がりすぎ、ダランとした汚い音になります。
習い始めは腕の重さがピアノにうまく載せられないので、深く弾くように注意しています。ピアノは触っただけでも音が出る楽器なので、それで弾くのではないことを耳から覚えてもらいたいと思っています。
しかし、ただ重さを載せれば良いのではなく、腕は自分で支えて弾く必要があります。指の関節も支える場所があります。
上巻でやることは序章に過ぎず、ピアノを始めて1年間も重さ重さになると逆に弊害が生じます。
楽器を演奏することを多くの方に楽しいと思ってもらえたら嬉しいことではありますが、音の美しさに関心がないご家庭はありますので、全ての人に平等にとはいかないものだな、と思います。