招きねこの手も借りたい

主婦のち仕事、ところによって母、時々芝居。

第二の劇団時代 (波瀾万丈編) その⑲

2006年10月13日 | 芝居
時間がなかった。

かかしさんは、とにかく台詞のテンポを早くすることを私たちに命じた。
間をとるな。
思い入れをいれるな。

動きもがらりとかわった。
出入りの場所も、やりとりをする位置も。
メモをとる間も惜しんで、集中して言われたことを覚えた。
疑問をさしはさんでいるヒマなどなかった。
かかしさんが新たに加えた台詞や動きを覚え、
Sさんがつけた演出を忘れることに専念した。
そうする他なかった。

スタッフもみんな一緒に付き合ってくれている。
新たについたギャグの場面では、盛り上げようと大きく反応をしてくれている。
かかしさんのテンションも高かった。
私たちも頭の中を無にして、集中した。
できないところや、うまくいかないところは、
繰り返し繰り返しやった。
間に合わないのではないかというマイナスな考えは、
その場にいる誰も考えないようにしていた。

稽古が終わったのは翌朝の3時すぎだった。
本当はもっとかかるのではないかと思っていたがなんとか終えた。
そのまま劇団に泊まる劇団員もいたが、
私はいちど家に帰って気持ちの切り替えがどうしてもしたかった。
こんなに遅い時間(ある意味早い時間に)帰宅するのは初めてだった。
音を立てないように勝手口の鍵をあけ、部屋に入る。
とにかく寝よう。
朝起きたら、気持ちを一新して舞台に立とう。
へとへとの心と身体で布団に入り、天井を見つめた。
そのままストンと眠りについた。

翌朝、母からの
「いったいあなたは、劇団で何をやっているのか。」
「若い娘が帰ってくる時間というのがあるのではないか」
「こんなだらしない子に育てた覚えはない」
「そんな非常識な劇団は辞めてしまいなさい」
「前いた劇団に頭を下げて戻ったほうがいい」
と、予想どおりの説教を背中で聞き流し
公演の用意をして私はでかけた。

さぁ、一晩でがらりと変えた芝居はとても同じ台本とは思えないものになっている。
これがお客さんにどこまで受け入れられるのだろうか?
私たちの演技はどんなふうに見えているのだろうか?
不安も大きかったが、一晩での演出変更になんとか4人で対応したのだという自信もあった。

Sさん。
ごめんなさい。
心のすみでそうつぶやいて、私たちは舞台に立った。

つづく。





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4 コメント

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Unknown (ジェニ)
2006-10-13 20:21:25
そりゃあ、お母様心配にもなるよねぇ。大事な娘がそんな時間に帰宅やなんて。男の子でもそんな時間に帰ってきたら心配になるわ。

がらりと変えた演出、吉と出るのか・・・不安になっても当然やよね。
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Unknown (naata)
2006-10-13 21:11:10
理由はどうあれ、遅くに帰宅すると親は心配するよね。ましてや女の子だし・・・



<Sさんごめんなさい・・・

ううっわかるっ。

いったいどんな舞台になったんだろう!!あ~~~怖いよ~~~。
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Unknown (びー)
2006-10-13 22:08:57
親元を離れて働いていたところが残業が多くて

親が電話をかけてきてもいつも留守(携帯も無い時代)

「絶対遊び歩いている」と思われていたわ~。

大人になっても帰りが遅いと親は心配しますよね。

2日目の舞台…気になります~。

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Unknown (peco)
2006-10-14 07:25:52
ジェニさん

今自分が年頃の娘を持ってみて初めて、

当時の母の気持ちが分かるようになりました。

そりゃ心配もするわな~。

当時は、母の心配が鬱陶しくてしかたありませんでした。



naataさん

一応、遅くなるからって23時頃に電話はしたんだけど、

その後一切連絡しなかったし、

当時は携帯電話もなかったし。

親不孝者でしたね。



びーさん

親は子を思って心配するんだけど、

子はそれは「私を信用できないのっ!」というふうに受け止めてしまうんだよね。

で、因果はめぐり自分の子を心配し、

うざったがられている現在です(笑)

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