「松本サリン事件」警察やメディアの犯人視 苦難乗り越える家族描く
長野県松本市の住宅地で、オウム真理教が起こした松本サリン事件からこの6月で15年。フジテレビは、当時犯人扱いを受けた被害者・河野義行さんの体験を描いていく実録ドラマ「妻よ!松本サリン事件 犯人と呼ばれて…家族を守り抜いた15年」を26日午後9時から放送する。ドラマ撮影が行われていた松本を訪ねた。
同事件を題材とした映像作品としては、映画「日本の黒い夏 冤罪(えんざい)」(熊井啓監督、2000年)があるが、本格的にテレビドラマ化されるのは初めて。河野義行さんを石黒賢、事件で意識不明に陥り、寝たきりになった妻・澄子さん(昨年8月に60歳で死去)を松下由樹が演じ、インタビューや、過去に放送されなかった取材映像、妻への思いをつづった四冊のノートなどドキュメンタリー部分を融合させるスタイルとなる。
「澄子さんが亡くなり、介護し続けた河野さんは『河野家にとって松本サリン事件は終わった』と語った。今だから伝えられることがあると思い企画した」と同局の内ケ崎秀行プロデューサー。ドラマでは事件当日の状況や、河野さんを犯人のように扱った当時の警察、メディアの迷走ぶりを再現すると同時に、「河野さん夫婦と子ども三人の疑惑との壮絶な闘いの日々、苦難を乗り越える家族の物語を描いていく」という。
内ケ崎さんが番組の企画を打診した際、河野さんは「面白いじゃない。作ってみれば」と承諾。マスコミの一つである同局が、河野さんとマスコミとの闘いを描くことに不安な様子はあったというが、河野さん側から制作にあたっての条件は「まったく無かった」と説明する。
現地の住民感情に配慮して、松本市内でのロケは一日のみ。周辺の山々が映る松本市役所屋上(病院屋上との設定)など数カ所に限定し、河野さん宅のシーンは、東京・杉並の住宅で収録した。「現場付近であらためて撮影はしていない。そういうことで、リアリティーを出す必要はない」と内ケ崎さんは話している。
松本ロケの合間に記者会見した主演の石黒は「河野さんは、元オウム信者に庭木の剪定(せんてい)をさせている。『罪を憎んで人を憎まず』の人間性にひかれた」とコメント。松下は「澄子さんは、感じとろうとする力、生命力がきっとあったと思う。想像を絶する役だが、澄子さんの思いを受け止めて演じたい」と語った。
◆『一貫した事実追求 テレビには少ない』 河野さん一家支えた弁護士永田恒治さん苦言
「ドラマは映像中心で影響力が強い。ドタバタでなく、何かを訴えようという気持ちで制作してほしい」
犯人視された河野さんを支え続けた地元の永田恒治弁護士(72)は、事件のドラマ化に当たり、こう話した。
当時、弁護人は永田さん一人だけ。「(河野さんの)見舞客もスーッと消えていく状態で、社会的に孤立無援だった」と振り返り、「事情聴取を拒否して、長野県警と対決するという時、河野さんは本当に必死だった。高校生になったばかりの長男・仁志君ら家族が、結束してよく耐えた」と、ドラマで描かれる河野さん一家の絆(きずな)を今でもたたえる。
一方で、報道被害、冤罪の問題については「地下鉄サリン事件などがあったから、河野さんは無実が証明された。事件が無かったら、永久に迷宮入りというか、灰色だった可能性も」と指摘。「Xデーだとか“極限”の報道だけに興味があって、一貫して事実を追う報道が、特にテレビでは少ない。松本サリンで言葉の反省はあっても、そうした傾向が増幅され、悪化している」と、事件以後の報道に厳しい見方を示す。
先月から導入された裁判員制度にも、松本サリン事件を経験した弁護士として疑問、危惧(きぐ)があるという。
「松本サリンのような事件があったとき、彼が犯人に決まっているとか、犯人でなければならないとかの世論に圧倒され、裁判員が“まひ”した状態で審理が行われるとすれば、大変重大な結果を生じかねない」
<松本サリン事件> 1994年6月27日午後10時40分ごろ、長野県松本市の駐車場で、オウム真理教の元幹部・信者が猛毒のサリンをまき、7人を殺害、100人以上の重軽症者を出した。教団が松本支部開設などをめぐる民事訴訟の判決で敗訴を予想、これを妨害するなどの目的で長野地裁松本支部裁判官官舎を狙って散布したとされる。
長野県警は第一通報者の河野義行さん=当時(44)=宅を被疑者不詳の殺人容疑で家宅捜索し、河野さんを事情聴取。県警は95年6月になって「河野さんは事件と無関係」とする見解を発表した。14年にわたり闘病した河野さんの妻・澄子さんの死去で、犠牲者は8人となった。
2. SME、携帯向け音楽ドラマの人気作を映画館で上映 まず3作品
ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は携帯電話に配信してきた音楽ドラマを、27日から映画館で上映する。昨年12月から今年2月に無料配信したところ、ダウンロード数が合計220万を超すなど人気を集めたため。今後も携帯向けのドラマを積極的に制作して人気作は映画館で上映、ドラマのモチーフでもある楽曲の販売促進に生かす。
映画館の「新宿バルト9」(東京・新宿)で、自社制作の音楽ドラマを上映する。上映するのは加藤ミリヤ「20―CRY―」など、楽曲を主題にした3作品。1作当たりの上映時間は35分程度で、チケット料金は1作当たり1000円。
長野県松本市の住宅地で、オウム真理教が起こした松本サリン事件からこの6月で15年。フジテレビは、当時犯人扱いを受けた被害者・河野義行さんの体験を描いていく実録ドラマ「妻よ!松本サリン事件 犯人と呼ばれて…家族を守り抜いた15年」を26日午後9時から放送する。ドラマ撮影が行われていた松本を訪ねた。
同事件を題材とした映像作品としては、映画「日本の黒い夏 冤罪(えんざい)」(熊井啓監督、2000年)があるが、本格的にテレビドラマ化されるのは初めて。河野義行さんを石黒賢、事件で意識不明に陥り、寝たきりになった妻・澄子さん(昨年8月に60歳で死去)を松下由樹が演じ、インタビューや、過去に放送されなかった取材映像、妻への思いをつづった四冊のノートなどドキュメンタリー部分を融合させるスタイルとなる。
「澄子さんが亡くなり、介護し続けた河野さんは『河野家にとって松本サリン事件は終わった』と語った。今だから伝えられることがあると思い企画した」と同局の内ケ崎秀行プロデューサー。ドラマでは事件当日の状況や、河野さんを犯人のように扱った当時の警察、メディアの迷走ぶりを再現すると同時に、「河野さん夫婦と子ども三人の疑惑との壮絶な闘いの日々、苦難を乗り越える家族の物語を描いていく」という。
内ケ崎さんが番組の企画を打診した際、河野さんは「面白いじゃない。作ってみれば」と承諾。マスコミの一つである同局が、河野さんとマスコミとの闘いを描くことに不安な様子はあったというが、河野さん側から制作にあたっての条件は「まったく無かった」と説明する。
現地の住民感情に配慮して、松本市内でのロケは一日のみ。周辺の山々が映る松本市役所屋上(病院屋上との設定)など数カ所に限定し、河野さん宅のシーンは、東京・杉並の住宅で収録した。「現場付近であらためて撮影はしていない。そういうことで、リアリティーを出す必要はない」と内ケ崎さんは話している。
松本ロケの合間に記者会見した主演の石黒は「河野さんは、元オウム信者に庭木の剪定(せんてい)をさせている。『罪を憎んで人を憎まず』の人間性にひかれた」とコメント。松下は「澄子さんは、感じとろうとする力、生命力がきっとあったと思う。想像を絶する役だが、澄子さんの思いを受け止めて演じたい」と語った。
◆『一貫した事実追求 テレビには少ない』 河野さん一家支えた弁護士永田恒治さん苦言
「ドラマは映像中心で影響力が強い。ドタバタでなく、何かを訴えようという気持ちで制作してほしい」
犯人視された河野さんを支え続けた地元の永田恒治弁護士(72)は、事件のドラマ化に当たり、こう話した。
当時、弁護人は永田さん一人だけ。「(河野さんの)見舞客もスーッと消えていく状態で、社会的に孤立無援だった」と振り返り、「事情聴取を拒否して、長野県警と対決するという時、河野さんは本当に必死だった。高校生になったばかりの長男・仁志君ら家族が、結束してよく耐えた」と、ドラマで描かれる河野さん一家の絆(きずな)を今でもたたえる。
一方で、報道被害、冤罪の問題については「地下鉄サリン事件などがあったから、河野さんは無実が証明された。事件が無かったら、永久に迷宮入りというか、灰色だった可能性も」と指摘。「Xデーだとか“極限”の報道だけに興味があって、一貫して事実を追う報道が、特にテレビでは少ない。松本サリンで言葉の反省はあっても、そうした傾向が増幅され、悪化している」と、事件以後の報道に厳しい見方を示す。
先月から導入された裁判員制度にも、松本サリン事件を経験した弁護士として疑問、危惧(きぐ)があるという。
「松本サリンのような事件があったとき、彼が犯人に決まっているとか、犯人でなければならないとかの世論に圧倒され、裁判員が“まひ”した状態で審理が行われるとすれば、大変重大な結果を生じかねない」
<松本サリン事件> 1994年6月27日午後10時40分ごろ、長野県松本市の駐車場で、オウム真理教の元幹部・信者が猛毒のサリンをまき、7人を殺害、100人以上の重軽症者を出した。教団が松本支部開設などをめぐる民事訴訟の判決で敗訴を予想、これを妨害するなどの目的で長野地裁松本支部裁判官官舎を狙って散布したとされる。
長野県警は第一通報者の河野義行さん=当時(44)=宅を被疑者不詳の殺人容疑で家宅捜索し、河野さんを事情聴取。県警は95年6月になって「河野さんは事件と無関係」とする見解を発表した。14年にわたり闘病した河野さんの妻・澄子さんの死去で、犠牲者は8人となった。
2. SME、携帯向け音楽ドラマの人気作を映画館で上映 まず3作品
ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は携帯電話に配信してきた音楽ドラマを、27日から映画館で上映する。昨年12月から今年2月に無料配信したところ、ダウンロード数が合計220万を超すなど人気を集めたため。今後も携帯向けのドラマを積極的に制作して人気作は映画館で上映、ドラマのモチーフでもある楽曲の販売促進に生かす。
映画館の「新宿バルト9」(東京・新宿)で、自社制作の音楽ドラマを上映する。上映するのは加藤ミリヤ「20―CRY―」など、楽曲を主題にした3作品。1作当たりの上映時間は35分程度で、チケット料金は1作当たり1000円。