公取委、JASRACに排除措置命令 放送使用契約問題
放送局が番組内で使う楽曲使用料をめぐり、著作権管理団体の日本音楽著作権協会(JASRAC)が現在、放送局との契約で採用する楽曲使用料の徴収方法が、他社の新規参入を制限しているとして、公正取引委員会は27日、JASRACの独占禁止法違反(私的独占)を認め、排除措置命令を出した。JASRACは不服として争う方針。
命令では、JASRACが使用料を徴収する際に、放送局がJASRAC管理曲を使用した割合を反映させることを要請。仮に放送局が他社管理の曲を使用した場合、その割合に応じてJASRACが減額する仕組みなどを改善策の一つに想定している。
公取委によると、JASRACは各放送局と包括利用契約を結び、年間放送事業収入に約1%を乗じた金額を使用料として包括徴収している。だが、この方式ではJASRAC管理曲だけ使った場合でも、競合他社の曲を何割か使った場合でも、JASRACへの支払額は変わらない。
公取委は、放送局にとっては追加出費が必要となるため、他社管理の曲使用を控えることになり、作曲家などの権利者も他社への委託を取りやめることから、参入が困難になっていると判断した。
01年にJASRAC以外の業者による楽曲管理が可能となった後の03年に、公取委は研究報告でこの徴収方法の問題点を指摘。また、05年9月には、競合他社の市場参入を見越した日本民間放送連盟も、JASRACに使用料の減額を提案したが、JASRACは拒否していた。
その後、06年10月に音楽出版社「エイベックスマネジメントサービス」から管理委託されたイーライセンス(東京)が参入を試みたものの、各放送局がエイベックス楽曲の使用を控えたことから、約3カ月間で契約解消に追い込まれた。公取委は、これを競争阻害の事例と認定した。
放送事業者による楽曲使用料の市場規模は年間約200億円。JASRACのシェア(市場占有率)は99%以上。
27日夕に緊急会見を開いたJASRACの加藤衛理事長は「我々は新規参入を妨害していない。排除措置命令の根拠となった事実関係から徹底的に争いたい。審判を請求し、その後の訴訟も視野に入れている」と、公取委と全面的に争う考えを明らかにした。
2. 大作公開相次ぐ“3D映画元年”
最近の映画業界は、登場人物などが立体的に見える「3D映画」の話題で持ち切りだ。試金石とみられていた昨年十月公開のSFアドベンチャー「センター・オブ・ジ・アース」がヒットしたこともあり、大作の公開が続く今年は“3D映画元年”とさえ呼ばれている。
3D映画は、奥行きが感じられたり、物体が飛び出すように見えたり、立体的な映像を楽しめる。右目用と左目用で微妙に異なる映像を専用のメガネを通して立体視するのが基本だ。
公開中のホラー「ブラッディ・バレンタイン3D」では、殺人鬼の持つつるはしがスクリーンから自分に向けて振り下ろされるように見え、かなりの迫力。「センター~」では廃坑をトロッコで走り抜ける迫力の映像が話題を集めた。アドベンチャーやホラー作品など、臨場感が生きる作品だと特に効果がありそうだ。
立体映画研究家の大口孝之さんによると、3D映画の歴史は古く、米国に短編映画が登場したのは一九二〇年代。五〇年代には長編「ブワナの悪魔」が米国でヒット、テレビへの対抗策と期待されブームになった。七〇年代にはポルノやカンフーの3D映画が作られたこともあった。
◇
現在のデジタル3Dブームは二〇〇五年、米国で映画館入場者数が落ち込んだことに危機感を持ったジョージ・ルーカス監督らが起爆剤にと声を上げたのがきっかけ。3D版が通常版の2Dと併せて作られたアニメ「チキン・リトル」を皮切りに、多数の作品が送り出されている。
日本では現在「Tジョイ」「TOHOシネマズ」「ワーナー・マイカル・シネマズ」の計五十三スクリーンが3Dに対応。設備の変更には二千万円ほどかかるのだが、各社とも今後3D上映スクリーンを増やす方針という。
ほかでは味わえない臨場感が3D映画の売り。ただそのメリットは観客よりむしろ業界の方が大きいかもしれない。
「センター・オブ・ジ・アース」は年をまたいで十七週のロングランヒットとなり、入場者数減に悩む映画館主に、3Dの集客力を実証した。大口さんも「『チキン~』以降、3Dと2D両方で上映した場合に、単価が高いにもかかわらず3D上映の集客力は2Dの三倍」と指摘する。
さらに、興行側にとっては、通常版より高めに設定できる単価も魅力。一般的に映画館の入場料は千八百円だが、前売り券やレディースデーなど割引があり、昨年の平均単価は千二百十四円(日本映画製作者連盟調べ)まで下がる。それが「センター~」の3D版は前売りなしで入場料二千円と強気。それでも客を呼べる。小人割引を考慮しても平均単価は千七百円前後だ。
「撮影費はフィルムの一・三倍、予告編を米国で製作したのでその費用もかかったが、この単価はかなり魅力的」と「センター~」を配給したギャガの松下剛宣伝プロデューサー。「観客に提供する価値はそれ以上」と胸を張る。
「マダガスカル2」(3月予定)や「ボルト」(8月予定)など、アニメ作品を中心に今年は3Dの大作が多数公開を控えている。注目が集まるのが、十二月に公開予定の実写映画「アバター」(ジェームズ・キャメロン監督)だ。キャメロン監督は「タイタニック」以降、大型映像や立体音響が特徴のIMAXシアター用に3D映画を撮り続けており、3Dが成功するか否かは「アバター次第」とさえ言う映画関係者もいる。
3D映画が定着することで「映画界のデジタル化が一気に進めば、製作も流通もコストが下がる」(与田尚志Tジョイ常務取締役)と、波及効果に期待する声も聞かれる。
一過性だった過去と違い、技術的には格段の進化を遂げ、「色の再現性が損なわれる」「目や頭が疲れやすい」などの欠点も改善されているというが、果たして今回のブームはどうか-
放送局が番組内で使う楽曲使用料をめぐり、著作権管理団体の日本音楽著作権協会(JASRAC)が現在、放送局との契約で採用する楽曲使用料の徴収方法が、他社の新規参入を制限しているとして、公正取引委員会は27日、JASRACの独占禁止法違反(私的独占)を認め、排除措置命令を出した。JASRACは不服として争う方針。
命令では、JASRACが使用料を徴収する際に、放送局がJASRAC管理曲を使用した割合を反映させることを要請。仮に放送局が他社管理の曲を使用した場合、その割合に応じてJASRACが減額する仕組みなどを改善策の一つに想定している。
公取委によると、JASRACは各放送局と包括利用契約を結び、年間放送事業収入に約1%を乗じた金額を使用料として包括徴収している。だが、この方式ではJASRAC管理曲だけ使った場合でも、競合他社の曲を何割か使った場合でも、JASRACへの支払額は変わらない。
公取委は、放送局にとっては追加出費が必要となるため、他社管理の曲使用を控えることになり、作曲家などの権利者も他社への委託を取りやめることから、参入が困難になっていると判断した。
01年にJASRAC以外の業者による楽曲管理が可能となった後の03年に、公取委は研究報告でこの徴収方法の問題点を指摘。また、05年9月には、競合他社の市場参入を見越した日本民間放送連盟も、JASRACに使用料の減額を提案したが、JASRACは拒否していた。
その後、06年10月に音楽出版社「エイベックスマネジメントサービス」から管理委託されたイーライセンス(東京)が参入を試みたものの、各放送局がエイベックス楽曲の使用を控えたことから、約3カ月間で契約解消に追い込まれた。公取委は、これを競争阻害の事例と認定した。
放送事業者による楽曲使用料の市場規模は年間約200億円。JASRACのシェア(市場占有率)は99%以上。
27日夕に緊急会見を開いたJASRACの加藤衛理事長は「我々は新規参入を妨害していない。排除措置命令の根拠となった事実関係から徹底的に争いたい。審判を請求し、その後の訴訟も視野に入れている」と、公取委と全面的に争う考えを明らかにした。
2. 大作公開相次ぐ“3D映画元年”
最近の映画業界は、登場人物などが立体的に見える「3D映画」の話題で持ち切りだ。試金石とみられていた昨年十月公開のSFアドベンチャー「センター・オブ・ジ・アース」がヒットしたこともあり、大作の公開が続く今年は“3D映画元年”とさえ呼ばれている。
3D映画は、奥行きが感じられたり、物体が飛び出すように見えたり、立体的な映像を楽しめる。右目用と左目用で微妙に異なる映像を専用のメガネを通して立体視するのが基本だ。
公開中のホラー「ブラッディ・バレンタイン3D」では、殺人鬼の持つつるはしがスクリーンから自分に向けて振り下ろされるように見え、かなりの迫力。「センター~」では廃坑をトロッコで走り抜ける迫力の映像が話題を集めた。アドベンチャーやホラー作品など、臨場感が生きる作品だと特に効果がありそうだ。
立体映画研究家の大口孝之さんによると、3D映画の歴史は古く、米国に短編映画が登場したのは一九二〇年代。五〇年代には長編「ブワナの悪魔」が米国でヒット、テレビへの対抗策と期待されブームになった。七〇年代にはポルノやカンフーの3D映画が作られたこともあった。
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現在のデジタル3Dブームは二〇〇五年、米国で映画館入場者数が落ち込んだことに危機感を持ったジョージ・ルーカス監督らが起爆剤にと声を上げたのがきっかけ。3D版が通常版の2Dと併せて作られたアニメ「チキン・リトル」を皮切りに、多数の作品が送り出されている。
日本では現在「Tジョイ」「TOHOシネマズ」「ワーナー・マイカル・シネマズ」の計五十三スクリーンが3Dに対応。設備の変更には二千万円ほどかかるのだが、各社とも今後3D上映スクリーンを増やす方針という。
ほかでは味わえない臨場感が3D映画の売り。ただそのメリットは観客よりむしろ業界の方が大きいかもしれない。
「センター・オブ・ジ・アース」は年をまたいで十七週のロングランヒットとなり、入場者数減に悩む映画館主に、3Dの集客力を実証した。大口さんも「『チキン~』以降、3Dと2D両方で上映した場合に、単価が高いにもかかわらず3D上映の集客力は2Dの三倍」と指摘する。
さらに、興行側にとっては、通常版より高めに設定できる単価も魅力。一般的に映画館の入場料は千八百円だが、前売り券やレディースデーなど割引があり、昨年の平均単価は千二百十四円(日本映画製作者連盟調べ)まで下がる。それが「センター~」の3D版は前売りなしで入場料二千円と強気。それでも客を呼べる。小人割引を考慮しても平均単価は千七百円前後だ。
「撮影費はフィルムの一・三倍、予告編を米国で製作したのでその費用もかかったが、この単価はかなり魅力的」と「センター~」を配給したギャガの松下剛宣伝プロデューサー。「観客に提供する価値はそれ以上」と胸を張る。
「マダガスカル2」(3月予定)や「ボルト」(8月予定)など、アニメ作品を中心に今年は3Dの大作が多数公開を控えている。注目が集まるのが、十二月に公開予定の実写映画「アバター」(ジェームズ・キャメロン監督)だ。キャメロン監督は「タイタニック」以降、大型映像や立体音響が特徴のIMAXシアター用に3D映画を撮り続けており、3Dが成功するか否かは「アバター次第」とさえ言う映画関係者もいる。
3D映画が定着することで「映画界のデジタル化が一気に進めば、製作も流通もコストが下がる」(与田尚志Tジョイ常務取締役)と、波及効果に期待する声も聞かれる。
一過性だった過去と違い、技術的には格段の進化を遂げ、「色の再現性が損なわれる」「目や頭が疲れやすい」などの欠点も改善されているというが、果たして今回のブームはどうか-