作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 幼き日々のこと (1) 】

2007-03-23 15:03:50 | 12 幼き日々のこと


ブログとは公開日記のことである、と
教えられ、日記も書かなくなって何十年。
最近流行の自分史を書く気にもなれない
ボクは水を得た魚の如く、よしなしごとの
あれこれを、手当たり次第に書いてきた。

今振りかえって見ると、多少は触れては
いるものの、幼少期の事柄があまり書かれて
いない。

重複の部分もありえると思うが、モノココロ
が付いたころに立ち返って、思い出すままに
記してみようと思い立ったのです。

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最初に出てくる場面がある。日時は不明です。

3才か4才か、それすら判然としないボクが
泣き喚きながら父と祖父の歩みを追っている。

高野山へ登る道である。
祖父と父が言う。「これから3人でお坊さんに
なりに行く」と。

その言葉を聞いてボクは泣く。「嫌だ」と叫ぶ。
お坊さんになると、アタマをくりくりに剃り上げ
られて小僧となり、エライお坊様の言われるままに
修行を積まなければならない。

「そんなの嫌だ」。

「お前は親の言い付けを守らず、イタズラばかり
やる。だからお坊様の弟子にすることにした」

「これからは良い子になります。お坊様は嫌だ」

ボクは泣き続ける。

父と祖父は、道端にしゃがみこむボクを無視して
どんどん歩いていく。

あれに付いて行ったら、間違いなく高野山に着き、
否応なしに小僧にさせられる。

「そんなの絶対に嫌だ」

その時、ボクの頭の中には、柱に縛られた雪舟が
自分の涙で、足指を使ってネズミを書く場面が
よぎっていた。

ボクも叱られて柱に縛られるんだろう。
だけど雪舟と違い、ボクには画才が無いから、
涙をこぼしてもネズミの絵も書けないし、
ムダに涙を流し続けるしかないだろう。

ボクは元来た道を引き返しはじめた。
下り坂だから、足が付いていけないほど、トントン
と弾むように飛ぶ。そう、歩くのじゃなく、
走るでもなく、あれは飛んでいた。

その後どうなったか、記憶がそこで途切れている。

高野山の宿坊のご飯を食べたのか、食べなかったのか。
何も覚えちゃいません。

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