作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 西宮寮の想い出 (1) 】

2006-10-26 11:14:34 | 12 幼き日々のこと


昭和31年(1956)当時は文部省による就職試験
解禁日が10月1日と定められ、各企業ともそれを
厳守していた時代だから、その解禁日に入社試験を
行う企業は一流中の一流と目され、その入試に合格
した学生は優秀者と評価されていた。

幸い希望の商社に合格し、本来の入社は翌年4月1日
なのだが、12月に入ると会社から電報が舞い込み、
「どうせ遊んでるんだろうから、アルバイトとして
出てきたら」。

卒論の仕上げに年内いっぱい掛ったから、年が明けて
1月13日に出社し、人事部に顔を出したら、すでに
配属先が羊毛課と決まっていて、そこに案内された。

いまこれを書いていて気がついたが、その年の1月
13日は「13日の金曜日」だった。

会社の中の何階にどんな部があるかを見て廻って来い
といわれ、社内をウロウロしていたら、やたらに派手
な化粧をし、妙に着飾った女性がどの階にもいる。

この会社には、派手な女性が大勢いると思ったのは
間違いで、彼女達は社員がツケで飲み食いした代金
を集金に来ていた人たちだった。

この日は給料日だったのです。本来の給料日は毎月
15日。その日が日曜日にあたると繰り上げられて
13日の金曜日になるわけ。

人事部が「西宮寮に入れるようにしてある。希望が
あるなら今すぐにも入寮できる」。

これは有難いと、3年間お世話になった下宿を引き
払い、阪急西宮北口駅から徒歩5分の寮に入った。

初日に早くも度胆をぬかれた。大きなお櫃に真っ白な
ご飯がいっぱいに詰まって湯気を上げている。何杯
食べてもいいらしい。お菜も美味しいし、ボクは
心底から「就職」ならぬ「就食」できた有難味を
しみじみと噛みしめた。




                                       パパゲーノ


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