二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

続いたネタ23 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2016-02-07 22:39:03 | 習作SS

1945年 東京 東京湾 

伊丹達に案内される形でピニャ、ボーゼスが平成の日本に来ている時。
ピニャの代行として無理やり任命されたハミルトン、そしてお付としてシャンディーが1945年の日本に来ていた。

彼女らが与えられた役目は日本をこの眼で見て、
ひいては講和への仲介役としての役割が皇女であるピニャから期待されており、
日本側も今後の講和と情報収集についてこれを機にコネクションを作ることを期待していた。

「そんなに緊張しなくても良いですよ」

嶋田の言葉を船坂軍曹が通訳するが、
ハミルトン、シャンディーの表情は相変わらず強張ったままである。

(まるで、会社に入りたての新社会人みたいだな)

そんな様子に嶋田は今では遥か昔の記憶となった前世の記憶を思い出し、内心こっそり苦笑を零す。

(とはいえ、無理も無いか。
 何せよくて中世レベルの文明から来た人間が鉄の船。
 それもビック7と誉れ高いこの長門なんて文字通り浮かべる城だからな)

嶋田が言うように異世界の客人との会談場所は東京湾に浮かぶ戦艦「長門」の艦内であった。
要人との会談場所に政府施設やホテルなどを利用せず態々軍艦を利用したのには深い理由がある。

現在銀座の門についてドイツ第三帝国を始めとする列強が血眼となって探り回っており、
そこでもしも門の向こうから要人が来る、という情報が漏れればどうなるか?

【原作】の平成日本政府のように防諜がザルな体制ではないとはいえ、
露見すれば面倒な事になるのは分かりきっているので情報統制が求められていた。

可能なら周囲から隔絶し、秘匿性が高い場所。
そんな場所はどこか…政府機関の施設も可能だがどうしても人目が付く。
だがらこそ、洋上で孤立し、軍艦のため軍機を理由に情報統制が容易な戦艦「長門」が選ばれた。

『ええっと…失礼ながら宰相閣下。
 ダイニホンテイコクにはこのような戦船を何隻も所有しているのですか?』

貴族の娘に過ぎないのに行き成り帝国の外交役を押し付けられ、
さらに敵国の宰相と会談ということで色々イッパイイッパイなハミルトンの変わり、
シャンディーがぎこちなく質問を発し船坂の通訳に嶋田が内心苦笑を零す。

(ついでに異世界からの来賓客に対する砲艦外交も兼ねて長門が選ばれたが…まあ、予想通りの問いだな)

さらには日本の実力を誇示することが目的として分かり易い物。
という理由も兼ねて戦艦「長門」が選ばれたが正に打ってつけであった。

「ええ、そうですよ。
 これと同じ軍艦を我が国は10隻程運用しています。
 それと空母…お宅で言うところの龍騎士を運ぶ専用の軍艦をそれ以上所有しています」

『なっ…こんな鉄で出来た軍艦を10隻も…!?」

『り、陸軍は?陸軍はどれ程!!』

嶋田の説明を聞いて驚愕するシャンディーにさらに問い詰めるハミルトン。

「我が国は25個師団、常備50万の陸軍を保有しています。
 予備兵力を動員すれば最大400万~500万の陸軍を運用することができます」

現実問題として25個師団で50万というのは鯖を読んでいるし、
400、500万もの陸軍の動員は可能と言えば可能だがやれば財政的に大打撃間違いなしで、
嶋田の言葉は極めて誇張を含んだものであったが、これは砲艦外交なのであえで誇張して言った。

『て、帝国の常備兵力は10万だというのに、
 しかもアルヌスの丘やイタリカで戦った軍、それが常備50万!?』

『な、なんという事を、こんなのって……』

自分達の祖国が売った喧嘩の相手について分かったシャンディー、ハミルトンの顔が青くなる。

(脅しすぎたか?いやそんな事はないか。
 今頃欧州一危険な男と腹の探りあいをしている辻ならもっと脅していたかもな。
 それに今後の事を考えると下手な陰謀を考えない程度に脅せるだけ脅すのがいいしな)

嶋田がこう考えたのには、
【原作】におけるゾルザルの暴発、
さらには閉門後のモルト皇帝最後の足掻き、
などなどのイベントが発生する可能性をを少しでも下げる事を考慮していた。

「さて、必要な費用や細かい内容の詰め合わせは、
 後に担当者と共に話し合っていただきたいと考える。
 今回議会と陛下から信任を受けた私が来たのは、今後の顔合わせのためです」

通常交渉の仲介役との会談で態々内閣総理大臣である嶋田が出張った理由はそれにあった。
今後交渉を継続していく中で顔を覚えてもらう、というのは極めて重要なことだ。
さらには相互理解を促進し、こちらから踏み込むことで講和の早期妥結を狙っていた。

…ついでに自分自身の目で【原作】キャラを確認したかった、という個人的な理由が嶋田にあったが秘密である。

『…つまりは殿下には早期にダイニホンテイコクに来て頂きたい、と?』

「ええ、そうです。
 お互い早い段階で終わらせた方が何かと楽でしょう」
 
当初から帝国で言う所の宰相が会談して来た意図を読んだハミルトンの確認に嶋田が頷く。

『楽、ですか?いっそ帝国を滅ぼした方が楽なのでは?
 それとも、滅ぼすことが出来ない事情でもできたのですか?』

『ちょーー!ハミルトンの姉さまーーーっ!!?』

ハミルトンの予想外の皮肉にシャンディーが白目を剥く。

(若いなぁ……)

だが嶋田は彼女の表情や目つきから余裕の無さを読み取り、
そして経験の浅さ見て自分が歳を食ったことをつくづく実感する。
しかし同時に怖気のしない発言に流石殿下の秘書となる人材だと内心高い評価を下す。

「ああ、その通り。
 我々には貴方方を滅ぼす理由が無い、
 何せ滅ぼした所で苦労を強いられる上に金にならないゆえに」

『金にならない…?』

『……?』

嶋田の「儲からないから滅ぼさない」という発言に首を傾げる2人。
彼女達の常識からすれば国を滅ぼせば、その国が有していた富を戦利品として略奪し、
その国の人民を奴隷として使えるため儲からない、という言葉に首を傾げた。

(ああ、これが略奪で富を築く中世的国家と、
 戦争が割に合わなくなりつつある近代国家との世界観の違いだな。
 今時古のイギリスみたいに国営の海賊行為で富を築き上げることなんてできないし)

特地の人間が考える戦争について辻と議論を交わした際に出た経済談話を思い出す嶋田。

「とはいえ、賠償金や領土の割譲については覚悟して頂きたい。
 もしも交渉の最中に不誠実な行いをすれば…我々にも考えがある、と言っておこう」

『うっ……』

嶋田の威圧を込めた言葉に予想されていたし、
覚悟していたとはいえ改めて突きつけられた言葉に萎縮するシャンディー。

『しかし現段階ではダイニホンテイコクを知ろうとしている人間はピニャ殿下のみ。
 殿下が責任を負わざるを得ない真似をすれば貴方方にとっても不利益であると表明します』

しかしハミルトンはこれは嶋田の牽制である事を見抜き、
講和への窓口はピニャ殿下しかおらず、もしもピニャが責任を負わざるを得ない状況を作れば交渉がどうなるか?

そうすれば日本が望む講和の早期妥結は遠のくであろう、と逆に牽制の言葉を投げかけた。

(わざと威圧したが…ふむ、これは一本取られたな
 まだ荒いが俺の独裁者な威圧モードにも屈せず切り返すとは…やはり原作キャラは原作キャラか)

嶋田がそう言葉にせず呟く。
もしもここで萎縮すればさらに畳む込むつもりであったが、
講和が遠のくことを示唆したハミルトンの切り返しに賞賛を送った。

(何にせよ、もう少しだけ会話をしてみるか。
 原作では読みきれなかった事情やらを聞きたいところだし)

辻も頑張っているし、
そう決意すると嶋田はハミルトン、シャンディーとの会話を続けた。















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ヴァルハラの乙女 第22話「ミーナの疑問」

2016-02-06 00:22:23 | ヴァルハラの乙女


エーリカが看破したように、
ミーナは執務室で朝の書類確認中であった。
執務卓に積まれた書類はそれこそ山のごとく積み重なっており、
サインをするだけでも太陽が真上に達するほど時間を必要とするだろう。
ゆえに、朝一に書類の内容を軽く確認するのがミーナの日課であった。

「はぁ…」

ところが、今朝はとある事が気になり、
書類のチェックが一向に進んでいなかった。
万年筆を手で弄ばせつつ、思考の迷宮に入り込んでいた。

「元から変わった子だけど、ここの所妙なのよね…トゥルーデは」

思いにふけっていた対象はトゥルーデ。
もとい、ゲルトルート・バルクホルンであった。

彼女はミーナにとって原隊は違うが、
カールスラント撤退からエーリカと共にいた戦友にして友人である。
現在もそうだが、今後のそうであり続けることに疑問はない。

だが、その彼女が最近どうしても気になる点が目立ってきた。

「……ん、宮藤さんが来てからかしら?
 妙に用意周到だったり、色々動き回っているようだし」

卓上の珈琲を口にしてからミーナが覚えた違和感を一人口に出す。
元々バルクホルンが持つ横同士の伝手を利用して色々部隊の運営に貢献していたが、
宮藤芳佳が501に赴任してからさらに活発に動き回っていることをミーナは知っていた。
さらに、時折芳佳に対して思い詰めたような眼で見ているのにミーナは引っかかりを覚えていた。

家族を亡くして自暴自棄になっていた時期や、
今でもなおその影を背負っているのを知るミーナは始め、
バルクホルンは芳佳を亡くなった妹を思い出して自責の念に駆られているのでは?

と、考え。
バルクホルンに休暇を進めた。
結果、気分転換になってくれたようでその時はそれで良し。
としたが、それでも芳佳に対して時折向ける視線は普通とは違うものだ。

「どうして、あんな眼で宮藤さんを見るのよ、トゥルーデ……」

当時の光景を思い出すミーナ。
そこに疚しいことうや、怪しいものはない。
バルクホルンの眼は自分の命に代えても守ることを決意した人間のものであった。

何故なのか?
一体何がバルクホルンをそのようにさせるのか。

ミーナは疑問と少々の嫉妬を覚え、
苛立ちの感情を表すように万年筆でメモ用紙に荒く疑問点を記す。

(……それに、考えれば考えるほどトゥルーデには妙な所が多いわね。
 例えば扶桑料理の腕前は美緒が絶賛し宮藤さんが驚くほどに詳しかったし、
 カールスラントだと第二言語はガリア語かオラーシャ語が主流だから扶桑語といえば、
 大学の研究者か、扶桑と関わりのあるビジネスマンぐらいしか知らないのに何故か初めから話せていた。)

カールスラント人の扶桑皇国に対する印象は「地球の裏側にある国」であり、
1699年から扶桑と同盟を結んでいるブリタニアと違い接点が極めて少ない。

ミーナも扶桑人とその文化に接触したのは坂本少佐がきっかけであり、
生の魚を食べる習慣や、難解極まりない扶桑語に驚愕と同時に四苦八苦したものだ。

だが、バルクホルンは違った。
501が結成された当初にお互い慣れない言語、
ブリタニア語という外国語で何とか顔合わせをしていた最中、
バルクホルンが突然扶桑語で当時の坂本少佐と意思疎通を始めた。

お陰で部隊の運営がスムーズに行えたが、
どうして扶桑語が出来るのか本人に聞いた際、
「たまたま覚えやすかった」と言い、その時はそれでミーナは納得した。

さらに扶桑料理が恋しい、
と愚痴を零した坂本少佐にライスと味噌スープ。
それに焼き魚の扶桑の伝統的な料理を見事に作って見せた時は、
少佐のユニットを整備する扶桑の整備部隊の厨房係から聞き込んだ、ということで納得した。

例えそれが料理が完全に出来ない少佐と違い、
料理上手で部隊の食事を担当している芳佳が驚く程の腕前であっても、
単に日々の積み重ねで旨くなった程度にしかこれまでは考えてこなかった。

そして、今は違う。

「妙に扶桑に詳しい…まさか扶桑のスパイ?
 ……馬鹿みたい、あの子に限ってそんな事はないわ」

疑問に覚えた点を書き連ねて完成した仮説にミーナが失笑する。
人類共通の敵としてネウロイがいるが、それでも水面下での戦いは未だ存在している。
噂に聞けばガリア国内での政治的陰謀にウィッチのスパイが数多く暗躍しているとのことだ。

が、バルクホルンにそうしたスパイになる要素が見られないのはミーナがよく知っている。
それは友人として戦友として信頼していることもあるが、そのような証拠や行動をこれまで見たことがないからだ。

とはいえ、バルクホルンに対する疑惑。
あるいは疑問についての答えは出ていない。

「ふぅ…」

と、ここまで考えた所でミーナは再度珈琲を口にする。
代用品ではなく偶然手に入れた天然物の珈琲の香りをしばし堪能する。
そして背もたれに背中を預け、窓の外に青々と広がる青空を仰ぎ見る。

(そう、あの子の行動は正しい。
 不審な点があっても何時だって501のために動いていた。
 けど、そう『主人公』というのはどんな意味で言ったのかしら?)

ミーナがバルクホルンに感じた疑問。
あるいは違和感を感じさせた言葉を思い出す。

前回のネウロイの迎撃で暴走するペリーヌに巻き込まれる形で、
2人揃って危うく名誉の二階級特進を果たす所であったが、芳佳の活躍でそれは免れた。

501の面々は芳佳の再度の活躍に大いに盛り上がり、
士気が向上すると同時に芳佳に負けじと訓練や日々の業務に好影響を与えた。
そんな中、ミーナはバルクホルンが生命の危機に直面し、零した言葉の意味をずっと考えてきた。

何故ならそこに理由は不明だが、
芳佳を何かと気にかけるバルクホルンの意図があるのではないか?
そうミーナは考えて、時間があれば1人で思考の海に漕ぎ出ていた。

「これまでも色々考えてみたけど…分からないわね。
 コードネーム、暗号、あるいは単にトゥルーデだけが宮藤さんに付けた愛称?
 後は…実はこの世界は物語の世界で宮藤さんはその主人公…ないわね、サイエンスフィクションのネタにもならないわ」 

これまで考えた事を記したメモを捲りながら呟くミーナ。
色々書き込んでいるがどれも正解と言えるような回答は得られていない。
そして実の所サイエンスフィクション、と断言したものこそが正解であることを知らなかった。

魔法がある世界であるとはいえ、物語として観測したことがある人間。
という存在はフィクションの物であり、現実的ではないからである。

(はぁ、まさか本人に直接聞くわけにも行かないし…。
 この件はしばらく様子見、ということにしておきましょう。
 それよりも最近のネウロイの動きが予想できないのが頭が痛いわね)

思考を切り替えネウロイについて考える。
これもまたミーナが朝からため息と共に悩ませる原因である。

ネウロイへの迎撃戦は戦いの中で蓄積してきたネウロイのデータを参考に、
予想される出現時期を算出し、その時期に合わせて準備を整えていた。

だが、徐々にネウロイの動きが変化しており、
501は何時敵が来るか分からず緊張を強いられつつあった。

(そろそろ、部隊で何らかのレクレーションをすべきかもね)

今はまだ歴戦のウィッチが揃っている501ゆえに、
士気は旺盛で多少の緊張には慣れたものであるが、それでもいつかは限界が来る。
ゆえに、部隊長としてミーナは気晴らしの場を設けることを考えていた。

(そうね…まず美緒に何かアイディアがないか聞いてみようしょう。
 美緒のアイディアが駄目だったら…みんなから意見を聞けば良いわね)

決まりね、そうミーナが独り言を口にする。
そして何気なく卓時計を眼にすればすでに朝食5分前になっていた。

「あら、もうこんな時間?
 予想より色々考え込んでいたみたいね、我ながら」

部隊の団結を図るため朝食は可能な限り一緒に取る、
という事を目標としているミーナが急いで席から立ち上がり部屋を後にすべく扉に向かって歩き出した。













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ガールズ&ドリフターズ!!(ドリフターズ×ガールズ&パンツァー「ゆきゆきて戦車道」より)上『修正』

2016-02-02 21:07:18 | 習作SS


「家に帰ったら作りかけだったタイガーⅠ、黒森峰・西住みほ使用を完成させなきゃ…」

――――秋山優花里


「それより…行き先を行ってくれ。
 早く…命が保っている内に、そのために戻って来たんだ…」

――――冷泉麻子



※  ※  ※



「…………う?」

西住みほが目を覚ました場所は、
白い壁と天井で出来た廊下が地平線の先まで延々と続く場所。
両側の壁にはあらゆる時代、国の扉が延々と並んでいる。

「ここは――――いったい?」

異様な光景だった。
人が住むにしては奇妙な構造である。
そして、何よりもこの場所の異様さを演出する存在が目の前にいた。

「…………」

男がいた。
四角眼鏡を掛けた白人の男性がデスクに座り新聞を読んでいた。
この廊下のような場所のど真ん中にデスクを構えていることも可笑しいが、
男は優雅に珈琲を片手に新聞を読んでおり、脇には待合カードの発券機とまるで役所の窓口だ、とみほは思った。

「…………」
「っ…!」

男がみほを一瞥する。
突然自分を見たことにドキリとするが、
男は市役所の職員のように愛想のない態度で口を開いた。

「次」
「えっ?」

男が机の上にある書類を手に取ると、
面接官のようにみほを書類とみほを見比べる。

「あ、あの。 
 ここはどこですか?
 まあどうせ地獄の裁判所でしょう、分かってますよ。
 ええ、どうせ自分は天国なんかに行けるはずがないですから」

「…………」

そう自虐するみほ。
今では憎悪の対象である硬式戦車道。
その最後の戦いであるかつての母校である黒森峰との戦い。

ここで大洗のチームはみほを除き全滅。
普通の女の子だったが黒森峰のSSにも劣らぬ彼女らの最後を見届けた後、
その死を無駄にせさないため、ただ1人で大洗が黒森峰に勝利した事実を作るべく黒森峰女学園に向かい、
その頂上に大洗の旗を打ち立てたことで、今まで犠牲を意味のあるものにした。

その後の長い人生はあの時ほど波乱に満ちたものではなく、
平穏であったが、安全な戦車道の普及に人生を奉げ半世紀以上生き延びた。
否、10代そこらで仲間を殺しておいて自分だけが生き残ってしまった。

老いに負け、体が徐々に動かなくなり、みほは意識を失い死を確信した。
しかし、こうして生きている事実にみほは混乱していた。

「………」

だが男は、紫はそんなみほの様子を無視するかのように書類に万年筆を走らせる。

「――なに、これ?」

気づいた時。
みほは廊下に並んだ扉の1つに片手を吸い込まれていた。
開いた扉の先には何も見えない暗闇で、徐々に飲み込まれてゆく。

「な、何を――!?」

みほは扉の角に手を掴み、
足に力を入れて抵抗するが無意味であった。
ずるずると扉の中に引きづられ、やがてみほは消えうせた。

「…………」

残ったのは男のみ。
そして男は次の来訪者を待つ。

「次」



※  ※  ※



「よし、大丈夫だ」

草むらの中から1人のエルフの青年が飛び出した。
懐には釣った魚を抱えており、森に近い草原を疾走する。
周囲を警戒し、怯えるように、辺りに視線を動かして村へ帰るべく走る。

(くそ、戦争に負けていなかれば、こんな風にこそこそとする必要がないのに!)

本来ならば誇り高い森の民であるエルフ。
だが今から40年ほど前の戦争でエルフは最下層の農奴階級へ落とされた。

以来、エルフが森に入ること、さらには弓を作ることが禁じられ、
昔ならば森の木の実、野鳥、川の魚を取ることもできたがその全てが出来ない。
慣れない農作業で収穫した作物も税として取られ、生きるにギリギリの日々である。
だからこそ、生きるためにこうして隠れるように森の産物をエルフの青年シャラは取っていた。

「ん?」

草原で人が倒れているのを発見する。
それだけならば、それで済んだのだが、
問題は倒れている少女はこの周囲では見慣れぬ姿であったことだ。

「耳なし、いや……まさか、漂流者!」

みほに気づいたシャラが恐る恐る近寄り――――。

「止マレ」
「っ!!」

突然横から、筒にような物を構えた黒髪の少女がシャラに制止を呼びかけた。
見た目は小柄の10代の半ばをようやく過ぎた少女であるが驚愕の声を漏らした。

「ドリフターズ…っ!!」

漂流者、ドリフターズ。
それはこの世界に流れついた異邦人の総称。

通常、そうした漂流者たちの管理は「十月機関」の魔術師が行い、
オルテ帝国の最下層人種であるエルフに関わることは許されていない。
そして、目の前の少女は約半年前から独眼の男と共にやって来た漂流者であるのをシャラは知っていた。

「何ヲシヨウトシテイタ?」
「お、俺は何もしていない!」

小柄な少女から出される殺意に慌てる。
だが、少女は同じ弓使いのドリフターズと同じく一切の隙はでない。

何もしていないのにこの仕打ち。
この理不尽、だからシャラはありのまま心境をヤケクソ気味に叫んだ。

「あ、あんた等の仲間だろ!
 放っておいたら領主の怒りを買うし、
 関わったら関わったで領主に怒りを買うから早く引き取ってくれ!」

「…………」

シャラの言葉に少女は沈黙している。
だが、腰から下げたもの、捕獲した野鳥をシャラに投げ渡す。

「受ケ取レ、礼ダ」
「っ!」

森に入ることが許されず、
取れなくなった貴重な食料である野鳥。
鶏も飼ってはいるが同じく税として取られるため碌に口にしてない。

思わず唾を飲み込むが、同時に人間から施しを受けた。
その事実に心が一瞬揺れるが、空腹がエルフのプライドよりも優位に立った。

「感謝はしない!だが受け取ってやる!」

だがそこで感謝の言葉を言わないのがエルフの矜持の高さであり、
シャラは野鳥を抱えて少女から直ぐに去って行った。

「……みほ、やっぱり来たんだなこっちに」

残された少女は銃を降ろし、
気を失っている少女を改めてみてそう呟いた。



※  ※  ※



「あ―――れ、ここは?」

古びた石の部屋の中でみほは目を覚ました。
固い石の床で寝ていたせいで背中が痛く、体の彼方此方が固い。
数秒ほど、ボンヤリと天井をみほは眺めていたが、横からみほの様子を見に来た。

「ん、起きたか。優花里、みほが起きたぞ」
「え、嘘。麻子さん!どうして、貴女は、あの時、」

冷泉麻子だ。
あの時と変わらぬぶっきらぼうな口調であった。
だが、みほは有り得ない光景に声を震わせる。

何故なら彼女は黒森峰との最終決戦で負傷。
みほを中心街に送り届けた所で、その命を燃やし尽くしたはずだから。

「それに今、優花理って。ゆかりもいるのですか!?」
「はい、自分はここに居ます西住殿」
「っ!!」

声が聞こえた方向に顔を向ける。
廃墟の中、彼女、秋山優花理がそこにいた。
榴弾で引き裂かれた腹はなく、五体満足で彼女は立っていた。

「お待ちしていました。
 そして、お疲れ様です西住殿」

「ゆかり……」

みほに敬礼を送る優花理。
これにみほは彼女の名を呟く程度の反応しかできなかった。

「おう、お前らの大将が目覚めたのか?」

感傷に浸っていた中。
野太い男性の声と共に第三者が現れた。

「え、あ、あの誰ですか?」

年は50ほど。
髪や髭は伸び放題で清潔感がまったく見られない。
だが、肌蹴た服の上から見える肉体には一切の贅肉は見られず鍛えられているのが分かる。

そして、何よりも片方しかない眼に宿す光りは鋭い。
そう、硬式戦車道で命のやり取りをした者だけがあの鋭い瞳だ。

「結構、結構。それは何よりです」

さらに20代の青年が独眼の男の背後から現れる。
中性的な顔立ちで、長い黒髪と相俟って女性のように見えるが、肩の形状から男性であることが分かる。

「ゆかり、この人たちは誰?」
「あーそのー、多分話しても信じられませんが……」

みほが優花理に疑問を投げつける。
何せ独眼の男に、美青年のコンビなど今まで接点などなかったはずだ。
おまけに2人が着込んでいる服装はまるで京都の映画村に出てきそうな姿をしている。
これで、疑問を覚えるなと言うほうが可笑しいだろう。

「まずはご飯をたべましょう、西住殿」

優花理はみほを食事に誘った。





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