北海道新聞の<社説>をはっておく。
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函館線山線廃止 後世に禍根残さないか
2030年度末の北海道新幹線札幌延伸に伴い、JR北海道が経営分離する並行在来線の函館線長万部―小樽間、通称・山線(140・2キロ)の廃止が決まった。
道と沿線自治体が合意した。余市―小樽間部分存続を求めた後志管内余市町も費用面で断念した。
並行在来線の廃止は全国2例目で長大区間では初めてだ。明治期以来の幹線を失うことになる。
在来線による国土軸整備を放棄した国は重い責任を感じるべきだ。広域交通網維持を担うはずの道も赤字線廃止の時と同じく自ら将来像を示すことをしなかった。
新幹線駅整備を急ぐ倶知安町からは早くも廃止前倒しの声が出ている。性急すぎる姿勢に沿線住民の納得が得られるのか疑問だ。
決定は後世に禍根を残さないか。各首長も胸に刻んでほしい。
整備新幹線と並行する在来線は利用減が必至で、国はJRが経営から手を引くことを認めている。
だが廃止は長野新幹線に並行する11・2キロだけだ。都市部を通る区間も多く、他は自治体が関わる第三セクターなどで存続する。
北陸や九州長崎ルートではJRが運行存続を支援する例もある。
今回の山線では国、JRとも終始支援に後ろ向きで「地域が議論する問題」と突き放してきた。
札幌延伸では函館―長万部間(147・6キロ)も並行在来線に当たる。貨物共用のため存続方向とみられるが、沿線やJR貨物などの経費負担協議は難航しそうだ。
このため、旅客のみで特急もない山線は「廃線ありき」で日程を急がされたとの指摘が強い。
「全線維持なら初期投資152億円、初年度赤字22億円」との試算を提示した道は、地元が諦めるのをただ待つ姿勢に映った。
余市町の斉藤啓輔町長は代替バスの利便性向上に「最大限努力すると道の確約を得た」と述べた。鈴木直道知事は、約束を誠実に果たすという意思表示をすべきだ。
札幌延伸で新幹線利用が大幅に増える胸算用も楽観視できない。新函館北斗開業でも政府・与党の事前試算では収支改善効果が年45億円程度あるとされた。実際はコロナ流行前から赤字が続く。
新幹線では山線区間の途中駅は倶知安のみになる。住民の足確保だけでなく、農林漁業などの産業振興を図る手だてを地域一体で時間をかけ模索する必要がある。
過疎化に歯止めをかけるのは道の役割だ。今後のバス網構築にも消極的ならば、道に対する全道市町村からの不信は増すだろう。