「羆撃ち」 久保俊治著 小学館文庫
まだ1月も終わっていませんが、今年のMyBest確定を宣言したくなるような本でした。大学卒業後、日本で唯一の羆ハンターとして生きていくことを決意した著者が自らの半生を描いたノンフィクション。
雪山で何日もビバークしながら獲物を追い、仕留め、皮を剥ぎ、解体する様を文字で追っているうちに、動悸が高まり、息が苦しくなってくる。山の中を黙々と進んでいくような、リズム良く、無駄の無い文章にどんどんと引きずり込まれていく。
生きること、死ぬことへの最大限の敬意、パートナーである猟犬・フチとの強い絆に何度も何度も涙が出てくる。
人と繋がるこによって得られるものもあるけれども、でも、本当の強さ、知性、コミュニケーションする力は、孤独に向き合い、孤独から逃げないことから生まれるのだと思わずにはいられない。
そして、読み終わった後に改めて表紙を見ると、その美しさが心に沁みます。
動物を殺すことを職業とした人のプロフェッショナリズムと、生と死への真摯な向き合い方という点では、佐川光晴氏の「牛を屠る」に通じるものがあります。どちらも、フィクションを超えたドラマがあります。