郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

英仏世紀末芸術と日本人

2007年03月02日 | 幕末東西
HOKKAI

新潮社

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えーと、その。この本、小説だと知らないで買ってしまいまして。
著者の高樹のぶ子氏については、たしか拉致問題で、見識を疑うようなことを毎日新聞だったかのコラムに書いておられたのしか存じませんで、「そんなに日本国内の北朝鮮批判が信じられないなら、せめてピエール・リグロの『北朝鮮の真実 フランスからみたその誕生と行方』くらい読んでから書けよ」とうんざりした印象が強烈でしたので、いや、どんなもんだろ、と迷ったのですが、なにしろ高島北海についてのノンフィクションだと思いこんでしまいまして、つい。
で、それがどうにも、読む気になりません。

最近、あんまり小説を読む気になれないのもあるのですが、ちょっとこれは、どんなもんなんでしょう。
いえ、鹿鳴館のハーレークインロマンスでご紹介しました森本貞子氏の『秋霖譜 森有礼とその妻』なんかは、小説仕立てですが、一気に読ませる迫力とおもしろさがあります。
この本の場合、現代に生きる「私」を前面に出してきて、それも、「私」の私生活がごちゃごちゃからんでいるらしいのが、なんとも、うっとうしいんです。あげく、高島北海という人物とその生きた時代に対する著者の情熱が、まったく伝わってこないんです。

で、読まないで書くことになりました。すみません。高島北海です。
ちょっと検索をかけていただいたらわかるのですが、高島北海は嘉永3年(1850)、長州の生まれ。明治、官員となって山林学を学ぶため、フランスに留学します。もともと絵を学んでいまして、趣味で描いていたのですが、留学先のナンシーで、エミール・ガレなどに大きな影響を与え、フランスのアールヌーボーに貢献した人です。
ガレの工芸ガラス、初期のもの、というんでしょうか、普及品ではなく、芸術品として力を込めた作品には、日本画の面影がより強かったりします。高価にすぎまして、とても買えませんけれども。
そこまでは、昔から知っていたのですが、最近、なにかで、北海は生野銀山のフランス人学校で学んだ、というような話が目にとまりまして、生野銀山時代の北海について、詳しい本はないかな、と思ったんです。
えーと、モンブラン伯の明治維新で書きましたが、生野銀山のフランス人、コワニーは、モンブラン伯爵が連れて来たんです。
日本学に魅せられたモンブランが、薩摩にフランス人を連れてきて、そのフランス人が、維新で生野銀山に行って、そこで学んだ長州人がフランスへ渡り、ガレのガラス工芸が生まれる………。
なんか、めぐりめぐって、すごくないですか?


もう一つ、最近、昔読んだ本を読み返していて、おもしろい記事があったことに気づきました。
『密航留学生たちの明治維新 井上馨と幕末藩士』なんですが、読み飛ばして、昔読んだときには気づかなかったみたいなんですね。
いえ、これは、けっこういい本なんですけど、あんまりにも多くの留学生が出てきまして、多少、記述が散漫、っていうんでしょうか、井上馨が題名にあがっているわりに、その描き方があまりに一面的だな、という印象で、なかなか、再び手に取る気になれなかったものです。

それで、おもしろかった、といいますのは、江戸は極楽であるに出てきます吉田清也と、同じく薩摩密航イギリス留学生の畠山義成が、ジャポニズムに魅力を感じたらしいラファエル前派のお茶会に呼ばれて、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなんかとお茶したらしいのですね。
二人とも、いったんはハリス教団に入った堅物、といいますか、勉強家でして、維新以降、吉田清也は政治畑、畠山義成は教育畑、なんですけど、私のイメージでは、どうも二人とも、あんまり趣味豊かな感じではありませんで、この取り合わせって、どうなんでしょう。なにか、ラファエル前派のインスピレーションに、寄与するものがあったんでしょうか。


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