郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

宝塚キキ沼に落ちてvol18 Never Say Goodbye

2022年05月21日 | 宝塚

 

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宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。宝塚カフェブレイク★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やっ...

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の続きです。

 宙組とキキさんについては、この1年でいろいろなことがありましたし、ありがたいことに、観劇もできています!
 ブログを書きたいなあ、とは思ったのですが、生で拝見できただけではなく、あまりに幸運なお席で、奇跡のような出会いをしてしまったりすると、かえって書けないものですねえ。
 それもありましたし、人事がはっきりしないと、それだけで胸が痛くなるものなんだと、沼に落ちて初めて知りました。
 今回もまだ、先のことがわからなくはあるのですが、なんかもう!!! 予想もしていなかったほどに、すばらしかったです!!! なにがって、もちろん『NEVER SAY GOODBYE 』。

宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』初日舞台映像(ロング)

宝塚カフェブレイク ★芹香斗亜がまっすぐで熱い男をレモンをかじりながら演じてるよ 20220417

 『NEVER SAY GOODBYE』は、そもそも16年前、宙組2代目トップスター・和央ようかさんと、初代トップ娘役・花總まりさんが、添い遂げ退団なさったときのさよなら公演でした。
 通常、宝塚の退団公演は、劇とショーの2本立てです。しかし、『NEVER SAY GOODBYE』は一本ものの本格的なミュージカルです。
 なぜそうなったかといえば、おそらく、なんですが、和央さんは直前の公演で大怪我をなさっていて、お医者さんには、「まだ舞台は無理」といわれていたというお話ですから、動きの激しいショーは避けて、トップお二人の歌唱力を生かしたオリジナル・ミュージカルで、となったんじゃないんでしょうか。

 作・演出は小池修一郎先生。
 音楽は、アメリカの作曲家・フランク・ワイルドホーン氏でした。
『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』などのブロードウェイ作品を手がけていたワイルドホーン氏と宝塚のご縁がここからはじまり、ワイルドホーン氏は、宝塚以外にも、『MITSUKO〜愛は国境を越えて〜』や『デスノート THE MUSICAL』など、複数の作品を日本で手がけておられるようです。
 ついでに言えば、ワイルドホーン氏と和央ようかさんは、これをご縁に、ご結婚なさっておられます。

 で、音楽がいい、というのはわかっていたのですが、スペイン内戦のお話、と聞くだけでなんだか、うーん。無理かも! と、唸ってしまったんですね。
 その昔、高校生のころ、ヘミングウェイの『誰が為に鐘は鳴る』を読もうとして、何度寝落ちしちまったことか、結局、読み通せませんでした。
 「ジョージ・オーウェルが内戦に参加して、ファシストよりもソビエトの方が嫌いになり、『動物農場』や『1984年』を書いたんだよねえ」と、断片的な知識があったがために、よけい、どうなのっ!?!?! ともなりました。
 
 しかし、再演は決まっていて、キキさんがご出演なさるわけですから致し方もなく、初演の中古DVDを買って、見てみました。
 結果、これは案外いいかもっ! と変わっちゃったんです。

 主人公のジョルジュはポーランド出身のカメラマン。フランスを中心に各国で仕事をしていて、自らデラシネ、根無し草だと自覚しています。
 ヒロインのキャサリンは、アメリカ人の社会派・劇作家。小池先生によれば、リリアン・ヘルマンがモデルだそうです。

 お話のはじまりは、1936年のハリウッド。
 日本でいえば昭和11年。 二・二六事件が起こった年です。
 
 第一次世界大戦ののち、ロシアは史上初のソビエト連邦共産主義独裁国家となり、やがて世界恐慌が起こって、不況が長引く中、ドイツではナチスドイツ、イタリアではムッソリーニのファシスト党が政権をとり、そして、スペインでは左派連合が普通選挙で勝って、ソビエトに続く社会主義のスペイン共和国が成立します。

 このとき、すでにソビエトでは、スターリンの大粛正が始まろうとしていて、地獄のような状況だったのですが、世界的には、ナチスドイツにおける、社会主義者やユダヤ人への弾圧が目立ち、ソビエトの対外宣伝が上手かったことも手伝って、多くの知識人が、左翼共産党に夢を抱いていました。

 キャサリンはあきらかに、左翼に夢を抱いたアメリカ人劇作家として描かれていますが、ジョルジュはかならずしもそうではなく、しかし、ナチスの力が強くなったことによって祖国ポーランドを失い、根無し草となってしまったという心情が、切々と歌われます。

 二人が出会ったのは、『スペインの嵐』というハリウッド映画の製作発表パーティー。
 主演女優・エレン、エレンの愛人でカメラマンのジョルジュ、エレンと共演予定の本物の闘牛士・ヴィンセント・ロメロなど、関係者が集っているパーティーに、作家のキャサリンが抗議に現れます。自分の書いたシナリオとちがい、娯楽一辺倒にされてしまって納得がいかない、というんですね。

 『スペインの嵐』は現地ロケを予定していて、しかし社会主義のスペインは世情が落ち着かないため延期、と言っていたところ、スペイン共和国広報担当のパオロから、「今度、バルセロナで人民オリンピックがあり、開会式には闘牛士たちも登場して華やかなので、ロケに取り入れてはどうか」という提案があります。

 実はこの年、ベルリンオリンピックが開催される予定でしたが、それに対抗して、バルセロナで人民オリンピック(オリンピアーダ・ポピュラール )を計画していた、というのは、史実なんです。
 小池先生は、1992年のバルセロナオリンピック開会式で、そのときから50数年前、幻の人民オリンピックに出場するはずだった老人が紹介されるのを見て、強く関心を抱かれたんだそうです。

 そして史実は、そのままで、とても劇的です。
 幻の開会式の前日、1936年7月18日の夕方のことです。
 開会式関連の催し「民俗芸能の夕べ」のリハーサルの最中、モロッコ、セビリアで反乱が起こり、スペイン全土に広がろうとしているので、オリンピックは中止せざるをえない、との速報が舞い込むんです。

 反乱を起こしたのはスペイン陸軍で、植民地モロッコにいたフランコを中心とする将軍たちが、各地の駐屯所に指令を発しました。
 当初、共和国政府は、これを甘く見ていましたし、実際、海軍と空軍は、ほぼ共和国政府に従いました。
 しかし、保守勢力が強かった南部、セビリアを中心とするアンダルシア地方では、反乱軍が勝利します。

 闘牛が盛んなのは、実は、このアンダルシアなんです。それも、セビリアとロンダ(崖の上の街として知られています)。
 18世紀、現代闘牛の様式確立に大きく寄与したのが、ロンダのロメロ一族でして、3代目のペドロ・ロメロは、ゴヤが肖像画の連作を残し、ヘミングウェイの『日はまた昇る』の登場人物のモデル、ともされています。

 

File:Francisco de Goya - Portrait of the Matador Pedro Romero - Google Art Project.jpg - Wikimedia Commons

 

 ネバセイには、キキさん演じるヴィセント・ロメロを筆頭に、闘牛士が7人出てきますが、ヴィセントをのぞく6人は、アンダルシアが反乱軍の手に落ちたと知ると、その闘牛の故郷へむけての脱出を試みます。
 その一人、真名瀬みらさん演じるファンは、はっきり「俺の生まれはセビリアだ」と歌っていますし、6人の出身地も、アンダルシアなのでしょう。

 そして、史実として、南部を掌握したフランコ反乱軍は、慰問に闘牛を催したという話です。
 一方のバルセロナ。
 ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』には、内戦勃発から時がたち、おそらくは幻のオリンピック期間に開催されるはずだった闘牛のポスターが、古びて、虚しく、貼られたままになっている、という描写があったりします。

 ネバセイにおいて、ヴィセント・ロメロただ一人、バルセロナ出身だったとされていることについては、つい、妄想が働いてしまいます。
 ロンダのロメロ一族の一人が、許されない恋をして駆け落ち。バルセロナ郊外に落ち着いて、ヴィセントが生まれた、とか。恋の相手、ヴィセントの母は、やはり、セビリア・ロマの美しいフラメンコ・ダンサーでしょう。水音志保ちゃんが好演しましたヴィセントの恋人、テレーサのように。

 ネバセイは、幻のオリンピックを、物語の中心にすえています。
 ジョルジュを含むハリウッド一行と、ソビエトの招きを受けたキャサリンは、偶然、バルセロナの開会式リハーサルで出会います。
 そこへ、反乱勃発の知らせ。ジョルジュとキャサリンは、内戦が始まったスペインに、残ることを決意するのです。

 バルセロナは、首都マドリッドに次ぐスペイン第二の都市ですが、実は、独自の言語を持つカタルーニャ(カタロニア)の中心地でもあります。
 バルセロナで左派が強かったのは、工業化が進み、労働人口が多い都市であると同時に、右派は自治を認めず、左派は認めていた、ということもあります。
 したがいまして、カタルーニャ語を駆使する詩人や劇作家をはじめ、文化人や芸術家、知識人の多くも、左派を支持していました。

 これは、ネバセイでは語られていないのですが、スペイン左派の最大勢力はアナキストで、その系統の労働組合運動(アナルコ・サンディカリスム)の拠点が、バルセロナにありました。
 アナキズム(無政府主義)は、ロシア革命の先陣をきった思想ですが、革命の進展とともに弾圧されるようになりました。
 これは、『アナスタシア』において、主人公真風ディミトリーが、「父はアナキストで収容所で死んだ」と言っていますので、宙組ファンにはなじみです。

 スペインでは、1931年に第二共和国が発足して以来、右派と左派の対立は激しく、この年の選挙で、かろうじて左派連立政権が成立したとはいえ、バルセロナのCNT(無政府主義労働者連合)の人々は、多大な危惧を抱いていました。
 これまでの右派との衝突で、将軍たちが政権をとったとすれば、自分たちの多数が殲滅されるだろうと、わかっていたからです。

 7月18日の夕刻、CNTは、カタルーニャ州自治政府首相に、武器の供与を拒まれ、翌朝にいたるまで、武器の確保に奔走します。一部陸軍下士官の協力も得て、軍の武器庫を襲い、港に停泊中の船舶、銃砲店などから、ありとあらゆる武器をかき集めて、反乱軍の進軍に備えました。
 CNTの素早い反応に、治安警備隊、突撃警備といった警察組織も、バルセロナでは、共和国政府側につきます。
 当然と言えば、当然のことでした。左派共和国政府は、選挙で選ばれた正当な政府だったのですから。

 CNTは、素早く民兵隊を組織し、翌日、人民オリンピックに出場するはずだった外国人選手たちも、その多くがにわか兵士となり、戦いました。
 『カタロニア賛歌』に、オーウェルが書いているのですが、バルセロナの民兵隊は途中まで、「上下関係のない、自由な軍隊」だったのだそうです。これは、CNTが中心になって組織したからこそ、でした。彼らは、なによりも自由を重んじていたのです。

 小池先生は、このバルセロナのオリンピック選手民兵隊を切り取り、そこへ、ただ一人のバルセロナ出身闘牛士、ヴィセント・ロメロを加えているのですが、スペイン内戦を生きた若者の群像を、リアルに描くに当たって、すばらしい照明の当て方だったと思います。

 ジョルジュはヴィセントを通じて彼らと知り合い、そしてそこに、自らの故郷を見出します。

 長くなりましたので、続きます。
 5月27日、円盤の発売を心待ちにしている、今日この頃です。

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ロミオとジュリエットの悲劇 VOL1

2022年02月20日 | 宝塚

 

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宝塚の前田正名 VOL2 - 郎女迷々日録 幕末東西

OGPイメージ宝塚の前田正名VOL1-郎女迷々日録幕末東西ご無沙汰しました。OGPイメージ宝塚キキ沼に落ちてvol17-郎女迷々日録幕末東西...

宝塚の前田正名 VOL2 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の続きです。

 去年の後半、私は宝塚スカイステージに加入しました。

https://www.tca-pictures.net/skystage/

 要するに、一日中、宝塚の番組を放送しているチャンネルでして、なぜ入ったかと言えば、もちろん、キキ沼に落ちたからです。
 全部見る時間はありませんし、どうしようかなあ、と思ったのですが、見たいものはとりあえず録画すればいい、と自分を納得させました。

   そして、去年のスカイステージでは、『ロミオとジュリエット』の過去の舞台映像が放送されていまして、その中には、これまでDVDにもなっていなかったものが、ありました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

「桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録後編下」の続きであり、「幕末維新はエリザベートの時代vol1」の続きでもあります。といいますか私、「宝...

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 私は、上のリンクに、以下のように書きました。

 次いで「ロミオとジュリエット」ですが、これはフレンチ・ミュージカルです。演出はまたしても小池修一郎氏。
 初演は2010年星組、2011年雪組、2012年月組、2013年星組再演でした。そしてこれまた、外部でも上演しています。
 キキちゃん(芹香斗亜さん)は星組で初演を経験。明日海さんは月組で、役代わり主演を務めていました。
 明日海さんのロミオは、すばらしく美しかったそうです。

 阪急系のホテルでは、どこでもスカイステージを無料で見ることができます。  
 去年、中村様と観劇のために泊まっていたホテルで、偶然、2012年星組初演のものを見ました!
 キキちゃんは、モンタギュー家の若者の一人で、いわゆるモブだったんですが、私、目を皿のようにして見て、結局、中古DVDを買いました。

 私がスカイステージに加入したときには、ロミジュリ放送は終わりに近づいていたのですが、月組、雪組も、なんとか録画することが、できました。

 私、『ロミオとジュリエット』の音楽は、大好きだったんですが、ただ、これまでどれも、今ひとつな気がしていたのは、肝心の主演、ロミオとジュリエットが、どうも、あまりピンとこなかったからです。

Romeo et Juliette 15. Aimer (English Subtitles)

 上は本家フランスのロミオとジュリエットですが、もちろん、ジュリエットは高音がきれいに出ていますし、二人の歌のハーモニーに聞き惚れます。

 宝塚のこれまでのロミジュリで、もっとも足らなかったのは、ジュリエットの歌唱力でした。
 ロミオはそこそこ歌える方が演じているのですが、ジュリエットはなぜか、みなさん高音が出ていなくて、難しい曲なのかしら? と首をかしげていたんです。

 ところが、録画しました2011年雪組、ジュリエット役代わりで、唯一DVDにもなっていなかった夢華あみさんのバージョンを見たとき、そのすばらしさに驚きました。
 下手だからDVDになっていなかったのかと思っていたのですが………、ちがっていたんです。

 そして、主演の音月桂さんは、言葉を失って見入ってしまうほどに、ロミオそのもの、でした。

 この舞台は、まずヴェローナの広場で、モンタギュー、キャピュレット、敵対する両家の若者たちが争っているところから始まります。
 しかし、その中に、ロミオはいません。

 続く場面で、モンタギュー夫人とキャピュレット夫人が、両家の男たちの不和を嘆き、そして、ようやく、ロミオが登場します。なんと、綿毛のタンポポを手に持って、です。
 ロミオはモンタギュー家の跡取りですが、争いごとは好まないタイプで、その美貌ゆえに女たちに追いかけられている様子です。しかし、彼が夢見るのは真実の恋。運命の相手をさがしています。
 同じ舞台上、階をちがえて、ジュリエットの居室。
 16歳のなにも知らない乙女は、しかし、運命の恋を予感しています。例え死んでも、けっして離れることのない絆で結ばれた相手が、現れるのだと。

Romeo et Juliette 3. Un Jour (English Subtitles)

 まだ出会っていない二人は、「いつか」という歌のデュエットによって、その真情を吐露するんです。
 これがけっこうな大ナンバーなのですが、音月さんと夢華さんの歌は、フランスの舞台にも負けないほどに、心地よくも、美しいものでした。

 次いでキャピュレット家には、一人娘のジュリエットへの求婚者・パリス伯爵が現れ、身分もよく金持ちの求婚者に、両親はすっかり乗り気ですが、ジュリエットは、「愛のない結婚はいやだ」と反発します。
 一方、モンタギュー家の若者たちは、ロミオもまじえて、「世界の王」を歌い踊ります。

Romeo et Juliette 6. Les Rois Du Monde (English Subtitles)

 日本語の歌詞は、ほぼ、次のような内容です。 
年寄りが寝ている間に、生きている今を感じ、愛しあいたい。俺たち若者は、権力者に手を貸したりしない。新しいルールは俺たちがつくる

 街頭デモだとか、集団での暴走だとか、大人たちに反発し、無茶ぶりを楽しむぞ!、という、時代を超えて、若者たちに通じる歌です。

 歌が終わり、マキューシオの誘いで、その夜、ベンヴォーリオとロミオは、敵対するキャピュレット家の仮面舞踏会に、乗り込むことになります。

 そして、一人になったロミオが歌います。

Romeo et Juliette 7. J'ai Peur (English Subtitles)

 日本語では「僕は怖い」という題名の歌です。

 いまぼくは、兄弟より親しい友とともに笑い、遊び、青春を駆けぬけている。
 しかし、いつか来る死の影が、ぼくらの背後にしのびよる。
 僕は怖い。死ぬのが怖い。
 放蕩と無頼に明け暮れた先に待っているのは、明るい夜明けじゃない。
 いつか来る終わりが、ぼくには見えるんだ。

 おおよそ上のように歌われる、とてもきれいな歌なのですが、実のところこの歌は、事件が起こった後に再び、絶望の中でも歌われます。 
 正直、音月桂さんのロミオを見るまで、なぜロミオは、ジュリエットと出会う前にこの歌をうたうのか、いまひとつ、必然性を感じていませんでした。
 どなたのロミオも、分別くさい感じに見えて、友を憂える予言なのかな、と聞き流し、ストレートに胸に響かなかったんです。

 それが………。
 音月さんの歌を聞いて初めて、ああ、ロミオは青春の光と影をリアルに見る人なんだ!と、納得がいったんです。

 青春のただ中にいるからこそ、死をリアルに感じることって、ありますよね。
 年をとるということは、ある意味、鈍感になることですから、死の深淵がぽっかり口をあけていても、あまり真剣に受け取らなかったりします。
 一途に恋に死ぬロミオという若者は、感受性が鋭く、影を知っている人であってこそ、リアリティをかもしだせるんだ、と、音月さんのロミオに、心が震えました。

 そして………。
 わからないのは、なぜ、こんなにもすばらしい、音月さんと夢華さんの『ロミオとジュリエット』が埋もれてしまったのか、ということでして、次回は、そのことを取り上げてみたいと思います。
  

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宝塚の前田正名 VOL2

2022年02月19日 | 宝塚

 

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宝塚の前田正名 VOL1 - 郎女迷々日録 幕末東西

ご無沙汰しました。OGPイメージ宝塚キキ沼に落ちてvol17-郎女迷々日録幕末東西宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続き...

宝塚の前田正名 VOL1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の続きです。

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『Samourai』 - 宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

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宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

 

 原作の題名は『巴里の侍』ですが、宝塚の舞台は『Samourai(サムライ)』という題名です。

 幕開きは、歌舞伎の連獅子のような舞踏。トップの音月さんを中心に、2番手、3番手の男役さんが舞います。
 本筋に関係のない舞踏ですが、サムライらしさをあらわそうとしているのでしょうか。悪くはない感じです。

 次いで、前田光子とアイヌの民族衣装を着た娘さんが出て来て、ともに『モン・パリ』を歌い出したのには、驚きました。

モン巴里 ~宝塚少女歌劇団花組~

 『モン・パリ』は昭和2年(1927)、宝塚花組で演じられた、日本初のレビューなんです。
 この翌年、月組、雪組で再演されますが、雪組の舞台には、若き日の前田光子、文屋秀子が立っていたんです。

https://www.akanainu.jp/culture/maeda_mitsuko/

https://www.ippoen.or.jp/about/m_mitsuko.html

 文屋秀子さんが、正名の次男と結婚して前田光子となりましたとき、すでに正名くんはこの世の人ではなかったわけですから、直接明治初年のパリの話を聞いたはずもないんですが、「めずらしき外国(とつくに)の うるわしき思い出や」という歌詞が胸にしみ、平成の雪組の舞台に光子さんが登場していたことに、私は感激しました。
 光子さんにお子さんはなかったそうですが、夫の父・正名から受け継いだ、北海道の前田一歩園を守り、自然保護に尽くし、アイヌ文化を守ることに尽力を惜しまなかったタカラジェンヌが、舞台に登場したわけですから、これはもう、とてつもなくつまらない原作を離れて、いい話になっているかもしれない、と見入ったのですが。

 音月桂さんは、とても素敵でした。
 ものすごくキラキラした、和装の似合うお顔立ちですし、お歌もお芝居も、すばらしいんです。
 ただ、お話がやはり、まったくもって、おもしろくありません。

 まあ、ですね。普仏戦争の時のパリのモンブラン邸を、わずかな史料をもとに、あれこれ想像し続けていた私が見るから、よけいにおもしろくなくは、あるのでしょうけれども。

 史実を離れるのは仕方がないとしましても、なにより、ちがうだろう、と感じましたのは、宝塚としては肝心のはずの恋の描き方が、無茶苦茶、どーでもいい感じになっていることです。

 正名くんのお相手は、モンブランが拾ってきて育てているということになっています架空のフランス娘、なのですが、恋愛しているのかどうかさえ、はっきりとはわかりません。
 どうせ史実は無視しているんですから、もう少し劇的に、恋の相手は、元会津藩か元旗本かの娘で、薩長を恨んでいて、日本を飛びだしパリに来ていた、とか。

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普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol5の続きです。巴里の侍(ダ・ヴィンチブックス)月島総記メディアファクトリーまたちょっと「巴里の侍」に話を返します。こ...

普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上のリンクに書いておりますが、実のところ、函館戦争には、数名のフランス人が、 旧幕府側の助っ人として参戦していまして、局外中立違反の外交問題になりかねませんでしたので、フランス公使は、自国の軍艦を函館に送り、五稜郭降伏寸前に脱出させます。
 彼らのうち、本国まで送還されましたのは、陸軍のジュール・ブリュネ大尉、海軍見習い士官だったアンリ・ポール・イポリット・ド・ニコールと、フェリックス・ウージェーヌ・コラッシュの3人なのですが、当然のことながら、この3人は普仏戦争に参加し、ニコールは戦死しました。

 五稜郭には女がいた、という伝説もあるくらいですから、元幕臣の娘が箱館戦争に参加していて、兄か誰かが、フランス軍艦に託して、パリに送り出し、その娘はパリで正名くんに出会って愛しあった、というのは、どうでしょうか。
 しかし、なにかの事情で結婚はできないで、それぞれに子孫を残し、娘さんの孫が、お祖母さんが大切にしていた日記を読んで、阿寒湖のほとりに前田光子さんを訪ねてくる、とか。
  ともかく、どうにでも、劇的にする方法は、あったと思うんですね。

 それと、原作や劇中で語られますサムライ精神を、尚武の個人的勇気と解釈しますと、実のところ、箱館戦争に参加しましたフランス人たちは、義侠心と勇気において、当時の大方の日本人よりも勝っていました。

 あと、どうにも、パリ・コミューンを礼賛しすぎなんですね。
 ブリュネ大尉は反対陣営ですし、コラッシュにも、参加した気配はありません。

 まあ、ですね。
 モンブラン伯爵は、どうもフリーメイソンだったみたいですので、反コミューンではなかったでしょうし、モンブランと親交があって、やはり幕末からの日本通だったレオン・ド・ロニーは、父親の代からの共和主義者であったようなんですね。
 しかし、コミューンには粗暴な側面があり、カトリックの聖職者を殺したりもしていますので、愛国、よりは、国民の分列を促進するものでした。結局、モンブランはもちろん、ローニーもコミューンに参加はしていませんし、国を愛しているからコミューン! みたいなこの原作と劇のいいかげんなのりには、私は到底、ついていけません。

 だいたい、モンブラン伯爵は、フランス貴族であると同時に、インゲルムンステルを根城とするベルギー貴族でもあります。
 インゲルムンステル男爵領は、フランス王朝のドイツ人部隊を率いていましたドイツ人のプロート家が開拓したもので、跡取りがいなくなり、フランス革命の後、モンブランの叔母がプロート家に嫁いでいたがため、父親が受け継いだわけなんです。
 したがいましてモンブランは、プロシャ商人も出入りさせていたようでして、フランス人意識がなかったとは言いませんが、どういった形のフランス人意識であったのか、ちょっと複雑です。

 やはり、上のリンクに書いているのですが、登場人物の度会晴玄は、あきらかに渡六之介(正元)がモデルです。
 宝塚では、早霧せいなさんが演じておられて、とてもいい演技を見せてくださいますが、パリ・コミューンに参加したあげくに、戦死しちゃうんです!!! そんなバカなっ! としか言いようがありません。
 いや、私、渡六之介氏のご子孫からご連絡をいただき、ご本までいただいていたので、もしおもしろければ、DVDをプレゼントしようかなあ、と思いついていたのですが、これじゃあ、ねえ。
 なんでも、作・演出の谷正純先生は、皆殺しの谷、と呼ばれておられるんだそうですが。

 現雪組トップの彩風咲奈さんは、相当にお若い頃ですが、ジャーナリストで、けっこう目立つ役をもらっておられます。
 しかし、もう2期お若い、現月組トップの月城かなとさんは、どこにおられるのやら、画面で見つけることは困難でした。

 ともかく、です。次回は、正名くんを演じられました音月桂さんについて、ちょっとお話してみたいと思います。

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宝塚の前田正名 VOL1

2022年02月18日 | 宝塚

ご無沙汰しました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。宝塚カフェブレイク★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やっ...

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

の続きであり、下の続きでもあります。

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普仏戦争と前田正名 Vol10 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol9の続きです。なんといえばいいのでしょうか。前田正名が主人公だというので「巴里の侍」(ダ・ヴィンチブックス)を読み、...

普仏戦争と前田正名 Vol10 - 郎女迷々日録 幕末東西

 


 なんというんでしょうか。そもそも、十数年前にこのブログを書き始めましたのは、モンブラン伯爵についての情報が欲しかったためですが、現在、かなりの情報は得ていまして、このブログにまとめると同時に、ウィキペディアにも書いております。

シャルル・ド・モンブラン - Wikipedia

 で、下のリンクに書いておりますように、モンブラン伯爵は、駐仏日本公使代理(領事ですかね?)に就任して、離日するとき、前田正名を伴っていますので、私は早い段階で、明治初期の薩摩藩フランス留学生である正名くんを知り、司馬遼太郎氏がエッセイで、普仏戦争と正名くんについて書いていることも知りました。

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龍馬の弟子がフランス市民戦士となった??? - 郎女迷々日録 幕末東西

一昨日、『剣豪商人』の載っていた本を探してまして、司馬遼太郎氏の歴史エッセイ本の目次を、次々にめくって見ていたんです。そうしましたら、『余話...

龍馬の弟子がフランス市民戦士となった??? - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の記事を書きまして、ほぼ5年後、2011年の1月、コメント欄にお客様が見えられて、前田正名を主人公としましたライトノベル『巴里の侍』(月島総記氏著)が発刊されたことを教えてくださいました。
 そして、その1年後に書きましたのが、下の記事です。

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普仏戦争と前田正名 Vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

一応、モンブラン伯の長崎憲法講義の続きでしょうか。これ以降、前田正名のことをまとめて書いたことは、なかったと思いますので。あけましておめでと...

普仏戦争と前田正名 Vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 幕末友だち(現在は宝塚友だちでもあります)の中村様は、私より先に『巴里の侍』を読まれていまして、「つまらない」とのお話でしたので、結局、私は読まなかったんです。
 それが、なぜ読んだかと言いますと、上に書いています通りに、宝塚でやることになった!と、聞いたためです。 

 当時、私は、一度も宝塚を観劇したことはなかったのですが、正名くんは実にいい男でして、もしも小説を読んで少しでも見所があると思いましたら、見に行っていたかもしれません。
 正名くんの写真の中で、もっとも若くていい男!に見えますのは、集合写真ですが、明治6年(1873年)3月のパリ、帰国する大久保利通を見送るため集まった、在パリ薩摩人の中で笑っているものでして、当時23歳。ネット上で可能ならばリンクを張ろうと思ったのですが、無理でした。
 結局その後、私は中村様とともに、桐野利秋が主人公になった!というので、宝塚を初観劇しました。

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桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編 - 郎女迷々日録 幕末東西

桐野利秋、宝塚登場!星組公演『桜華に舞え』の続きです。といいますか、行ってまいりました。宝塚へ。突然仕事が入ったり、その他もろもろで、ブログ...

桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 それで、ですね。なんでいま突然、前田正名? 
 ということなんですけれど、下、正名くんが主人公の宝塚公演DVDを、買って見たんです。

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『Samourai』 - 宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

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宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

 

 いまさら、10年も前の公演のDVDをなぜ? ということなんですが、答えの一つは………。
 主演の音月桂さんが、すばらしいトップさんだったと、いまさらながらに知ったから、です。

 そしてもう一つは、先月、東京までミュージカル観劇に出かけたんですが、空き時間、中村様にお誘いいただき、前田正名のお墓に詣でたからです。

 東京タワー近くにある増上寺の別院・妙定院ですが、徳川家に縁の深いこのお寺に、なぜ正名君のお墓があるのかは、わかりませんでした。

 次回、さっそく、音月桂さん主演、『SAMOURAI(サムライ)』の感想を。

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宝塚キキ沼に落ちて vol17

2021年01月27日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol16 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

宝塚カフェブレイク ★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やったりも 20210124

 久しぶりのキキちゃん、カフェブレイク登場です。
 「月組と読めるのですが、間違ったのですよね?」というコメントがあるんですが、ほんと0:44ころの字幕が月組になっています。間違いですかね?

 実在の人物で演じてみたいのは、織田信長。その理由が、昔、ゲーム「戦国BASARA」で、織田信長のキャラを使って、はまっていたから、なのだそうです。
 宝塚でやった「戦国BASARA」って、蘭寿とむさんが真田幸村で主演、明日海さんが二番手で上杉謙信、なんですよね。
 あれ、キキちゃん、そのころ花組にいたはずなのに? と思って調べてみましたら、同時期に『フォーエバー・ガーシュイン-五線譜に描く夢-』で、バウ初主演してたんですね。

 この『フォーエバー・ガーシュイン』、相手役がゆきちゃん(仙名彩世)ですし、一度見てみたいのですが、ネット上でさがした作品の評判は、最悪です。キキちゃんが悪いわけではなく、作品そのものの出来が悪かったようなのですが、同じくらいの時期に、月組のバウ公演はウエクミ先生が「月雲の皇子」で大評判をとっていて、キキちゃんにとっては、ついてない成り行きだったように感じます。
 花組本体の「戦国BASARA」も、あんまり評判がいいわけではない、ようなのですけれども。

 織田信長、キキちゃんに似合うと思いますが、「戦国BASARA」は離れた方がいいような気もします。
 ショーでは立ち回りをやったこともある、とキキちゃんが言っているのは、「白鷺の城」ですよね。

宙組公演『白鷺(しらさぎ)の城(しろ)』『異人たちのルネサンス』初日舞台映像(ロング)

 初日映像にもちょこっとだけ映っているのですが、キキちゃんの武将、素敵でした。

宝塚『カフェブレイク 芹香斗亜』

 こちらの方が、たくさん映っていますね。
 このショーの武将・岡見宗治と、「異人たちのルネサンス」フィナーレ男役群舞のキキちゃんがすばらしかったので、円盤を買いました。
 これを見て、「キキちゃん、トート似合うよね」と思ったり。

 作品そのもののの出来は、といいますと、どちらもちょっと首をかしげてしまうのですが、特に「異人たちのルネサンス」。

 キキちゃんのロレンツォ・デ・メディチは素敵でした。キキちゃんご自身が語っておられますように、史実のロレンツォとはちがいます。これは、この作品の主人公、レオナルド・ダ・ヴィンチの目に写ったロレンツォですから、それはいいんです。

 しかし、一番なにが変って、かんじんのそのレオナルド・ダ・ヴィンチです。
 ダ・ヴィンチは、この後、チェーザレ・ボルジアの軍事技術顧問ともなった技術者でもあります。
 この作品は、ルネサンスの画家を、19世紀の近代画家と同じように描いていませんか? ということなんですが、これでは、万能の天才、というよりは、苦悩する心優しい画家、であって、まるでダ・ヴィンチではないですし、真風さんに似合いません。

 もっとも、私が最初に驚いたのは、ずんちゃん(桜木みなと)演じる、ロレンツォの弟、ジュリアーノ・デ・メディチです。

 塩野七生さんの「わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡」で読んだのだったと思うのですが、若くして、パッツィの陰謀で殺されたジュリアーノ・デ・メディチは、美青年だったといわれ、サンドロ・ボッティチェッリの手になる肖像画が残されています。

 

 

 

 

 そして、ジュリアーノの恋人(人妻ですが)のシモネッタ・ヴェスプッチは、絶世の美女と謳われ、ジュリアーノより一足先に病で世を去りましたが、フィレンツェ中の人々が、その死を惜しんだといわれます。
 有名なボッティチェッリの「ビーナスの誕生」のモデルであり、多くの肖像画を残しました。

 

 

 

 

 ロレンツォとジュリアーノの仲はよく、ロレンツォは、青春の盛りの弟の死を嘆き悲しみ、ボッティチェッリに依頼し、「プリマヴェーラ(春)」の中に、二人の姿を描き残させた、という伝説もあります。

 

 

 

 

 左端のマーキュリーがジュリアーノで、プリマヴェーラ(春の女神)がシモネッタ、という話なんですね。

 また、ロレンツォは文人でもあって、詩を残しています。

 Quante bella giovinezza, che si fugge tuttavia!
 Chi vul esser lieto,sia: di doman non ce certezza.

 青春は麗し されど疾く去り行く
 楽しむ者は楽しめ 明日の日は定めなければ

 Trionfo di Bacco e Arianna(バッカスの勝利)と題されたこの詩は、もともと謝肉祭の歌として書かれたのだそうです。
 フィレンツェだけではなく、広くイタリアで愛唱され、謝肉祭が観光名物ともなったヴェネツィアでは、ずいぶん後世までも歌い継がれていたといわれます。
 ジュリアーノとシモネッタ。私には、ロレンツォが、フィレンツェの全盛期に若くして散った美しい恋人たちをしのんで、作詩したように感じられます。

 ロレンツォの死後、フランス軍の侵攻があり、メディチ家はフィレンツェを追われます。その後、フィレンツェを支配したのは、禁欲的な宗教改革僧・サヴォナローラで、フィレンツェは、ロレンツォ時代のルネサンスの輝きを失います。

 時を経て、メディチ家はフィレンツェに返り咲き、フランス王妃(カトリーヌ・ド・メディシス、マリー・ド・メディシス)を出したりと、政治的には安定するのですが、ロレンツォ豪華王と呼ばれるくらいで、芸術・学芸のパトロンとして、先端の美を生み出していたロレンツォの時代に、私は若い頃から、ボッティチェッリの名画そのもののような、きらびやかな青春の印象を持っていました。

 ところが、ですね。ずんちゃん演じる「異人たちのルネサンス」のジュリアーノは、こじらせた弟、という設定なんですね。
 ずんちゃんが悪いわけではなく、そういった設定なのですが、兄ロレンツォに敵意を抱き、すねてばかり。
 イメージが狂いすぎでした。

 ロレンツォとジュリアーノのお話は、ちゃんと舞台で見てみたいのですが、もしまともにすれば、ヒロインはシモネッタ・ヴェスプッチで、主人公はジュリアーノ、だと思います。
 できれば、キキちゃんにやってもらいたいものです。

 ふう。宝塚のスターシステムって、けっこう面倒くさいですねえ。劇作の難しさも、なんとなく想像できはするのですけれども、やはり、ご贔屓さんの出る作品は、いいものであってもらいたいなあ、と思います。

 織田信長で、なにかいい原作はないものでしょうか。

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宝塚キキ沼に落ちて vol16

2021年01月13日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol15 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 いつの間にか、確定申告の時期となりました。
 去年の今頃は、骨折していた腕の針金を抜く手術を受けていました。母も落ち着きましたし、退院したらあれもしたい、これもしたいと、宝塚観劇の計画を立てたりしておりました。
 それが結局、コロナ禍が一年も続き、現在、世界中が悪い夢を見ているような状況です。

雪組公演『f f f -フォルティッシッシモ-』『シルクロード~盗賊と宝石~』初日舞台映像(ロング)

 望海さん真彩さんの退団公演、初日舞台映像が出ました。
 結局、一度も生で見ること無く、お二人は退団されてしまいますが、ウエクミ先生の『f f f -フォルティッシッシモ-』、実に見応えがありそうです。
 望海さんがベートーヴェンで、真彩さんはどうも、音楽の精霊のような感じがして、普通に恋人ではなさそうですね。

 朝夏まなとさんの退団公演「神々の土地」がそうだったのですが、ウエクミ先生って、退団公演の場合、どうも、歴史上に現実にあった動乱の時代の人間群像を描きたがっておられるようで、「神々の土地」も、いろいろ設定は変えてあっても、ロシア革命時に実在した人物を出しています。
 そして『f f f -フォルティッシッシモ-』も、フランス革命、ナポレオン戦争に続きます、ドイツ国民創世の中で生まれたベートーヴェンという天才の苦悩を描いているのではないかなあ、と思えて、ライブ配信が楽しみです。

 私、シーボルトの娘、おイネさんの伝記を書こう(今度こそちゃんと書き上げよう)としていまして、このシーボルトが、ベートーヴェンの息子くらいの世代で、おまけに、ドイツ西部の大司教領で生まれた、という共通点があります。いま、あれこれとベートーヴェンの伝記を読み直していまして、歴史観には、また多少の文句は出てこようかと思いますが、それがまた楽しみでもあったりします(笑)

 

 1月11日、wowowで、「誠の群像」を見ました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

「桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録後編下」の続きであり、「幕末維新はエリザベートの時代vol1」の続きでもあります。といいますか私、「宝...

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に、「実は一昨年の春、『誠の群像』の宝塚公演が高松に来ると知り、切符を買ってたんです。ところがその直前、歴史探訪旅行に参加しまして、宇和島城の天守閣で転げ、足を折ってしまいました」と書いておりますが、あれは2018年、平成30年のことでした。

 『誠の群像』の主人公・土方歳三には、私、昔けっこうはまっておりまして、このブログにも、下のように「土方歳三」というカテゴリーがあったりします。

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「土方歳三」のブログ記事一覧-郎女迷々日録 幕末東西

「土方歳三」のブログ記事一覧です。薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感...

「土方歳三」のブログ記事一覧-郎女迷々日録 幕末東西

 

 私が土方さんにはまりこみましたのは、あきらかに、司馬遼太郎氏の「燃えよ剣」と「新選組血風録」を読んだから、です。
 で、この「誠の群像」、もともとは1997年(平成9年)に、「燃えよ剣」と「新選組血風録」を原案とし、 石田昌也氏作・演出で、星組トップ・麻路さきさん主演で演じられたもののようです。

 麻路さきさんを、私は知らないのですが、望海さん、似合ってました!
 といいますか、私が知っています宝塚のトップさんの中で、望海さん以上に、土方に似合う方って、いません。いくら私がキキ沼にはまっていても、キキちゃんに京都時代の土方が似合うとは、思えません。
 望海さんは、非常に端正なお顔立ちなんですが、アクがあって、黒い役もこなされますし、スパッと決断力に満ちた感じ、苛烈な雰囲気を、見事に出されるんです。

 望海さんは素敵でした。スタイリッシュで苛烈な、土方歳三そのものでした。
 が、しかし。
 にもかかわらず私、「20年前の作品かあ。なんか古いイメージだよねえ」と、思ってしまったんです。

 一つには、京都時代が長すぎました。
 どなたに聞いたんだったか、「北海道へ行ってからの土方」が中心、というイメージをもっていまして、かつて放送されましたNHKの正月時代劇「土方歳三 最期の一日」に近いものを、想像してしまっていたんです。

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土方歳三 最期の一日 - 郎女迷々日録 幕末東西

見ました!NHKの正月時代劇。いえ、なかなかよかったです。実は、大河の新撰組は、最初の何回か見て、見るのをやめてしまったんです。初回が池田屋...

土方歳三 最期の一日 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 私は、フィクションの材料としまして、京都時代の新撰組よりも、北海道へ行ってからの土方さんの方が、好きです。
 京都時代は、どうしても内部抗争が中心ですから、話が陰惨になります。
 もっとも、上のコメント欄で述べていますが、会津本藩だって、長州だって、長州奇兵隊だって、当時は日本国中、内部抗争だらけです。

 なんというんでしょうか、意図的に世界から孤立して作り出しました太平の世が長すぎて、当時の日本には、ろくに軍隊がなかったんですね。武士とは、日本全国ほとんどの地域で、軟弱なお役人でしかありませんでした。
 欧米諸国に対抗して軍隊を作り、国防を整えるためには、武士だけでは到底数が足りませんで、世の中の構造を、根本から変えていかなくてはなりません。幕末とは、既得権益と急進改革派がぶつかりあい、血を見ないではおさまらない日々だった、といえます。

 えーと。ともかくです。
 「誠の群像」は、けっこう長く芹沢鴨を出して、内部抗争を描いているんですね。必要だったのかなあ、という気がしました。
 彩風咲奈さんの山南敬助は、よかったです。恋人の明里を演じたひらめちゃん(朝月希和)も、ぴったりお似合いでした。ひらめちゃんって、雪組でいい演技してたんですねえ。
 彩風さんは二役で、榎本武揚もやってたんですが、これもなかなかで、私は、今まで見た「壬生義士伝」「ファントム」のときよりも、今回の彩風さんの方が好みでした。

 一番残念だったのは、真彩さんの出番が少なく、望海さんとのデュエットがほとんどなかったことです。
 恋物語が中心ではないですから、仕方がないといえばないんですけど、なんとかしようがあったはず、と思ったりします。

 彩凪翔さんの勝海舟は、ねえ。彩凪さんがどーのといいますより、勝海舟の描き方が、私のイメージから大きくかけ離れていました。
 重要人物として描くなら、勝ではなく、松本良順でしょ、と思ったんですが、石田昌也先生、「壬生義士伝」で出してこられてましたね。凪七瑠海さんが演じておられました。

 私、今まで知らないでいて驚いたのですが、2019年に望海さんが主演なさった「壬生義士伝」は、同じ石田昌也氏の作・演出だったんですね。
 うーん。石田昌也先生ご自身が、「誠の群像」よりも現代的で望海さんに似合う新撰組を、と、「壬生義士伝」を作られたんでしょうか。

 えーと。「壬生義士伝」、原作小説を読んでいませんし、映画もテレビも見ていません。
 宝塚のみ見た感想ですが、望海さんも真彩さんも、すばらしい歌唱、見事な演技、でした。
 ですけれども。現実離れのしすぎ、と感じるのは、私だけなんでしょうか?

 いや、なにがって、武士の妻が3人目の子を身ごもって、このままでは一家で食べるものがなくなるからと、口減らしに入水自殺をはかるなんて、ありえない!!! と私は感じます。まあ、これは、私が南国に生まれ育ったから、なのかもしれませんが、いくら南部藩でも、ちょっと、首をかしげてしまいます。
 で、望海さん演じる主人公が、妻子を飢え死にさせないために、脱藩して京へ出て新撰組に入るって、いったいなんなんでしょう???
 理解に苦しみます。

 南部藩で飢えるというならば、です。ゆかりのあります蝦夷地へ出て、当時、箱館奉行所は下っ端役人を募集していたようですから、広瀬常さんのお父さんのように、北方の守りにつく、という方がはるかに現実的です。

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広瀬常と森有礼 美女ありき14 - 郎女迷々日録 幕末東西

広瀬常と森有礼美女ありき13の続きです。内容の上からは、広瀬常と森有礼美女ありき10と広瀬常と森有礼美女ありき11の続報です。まず、北海道文...

広瀬常と森有礼 美女ありき14 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 私はもう、「これ、なんの冗談?」と、ストーリーになじめませんでしたので、望海さん真彩さんの熱演にも、「すばらしいんだけど、でもねえ」と、感動できませんでした。

 とは言いますものの、次のような記事が、日野市観光協会のサイトにありましたので、石田昌也先生が、「今だったら壬生義士伝」と思われたのも、無理はないかもしれないんですけれども。

http://makoto.shinsenhino.com/archives/fes/100430193833.php

要するに、「司馬新選組に酔い、浅田新選組に涙する」というほど、「壬生義士伝」は持ち上げられているようなんですが、私にはさっぱり、そのよさがわかりませんでしたです、はい。

 やっぱり、私の好みからしますと、五稜郭の土方さんを、やって欲しいです。
 望海さんはご卒業されてしまいますので、キキちゃんトップで。
 洋装の土方さんならば、キキちゃん、似合います。

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普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol5の続きです。巴里の侍(ダ・ヴィンチブックス)月島総記メディアファクトリーまたちょっと「巴里の侍」に話を返します。こ...

普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書いておりますが、箱館戦争においては、複数のフランス人も、土方さんの戦友でした。
 といいますか、そもそも、この「普仏戦争と前田正名」シリーズは、前田正名が宝塚の主人公になった! と聞き、びっくりして調べてみましたら、ものすごーいデタラメ物語だったものですから、つい、深追いして楽しんで書いてしまいました。
 いや、なんと、いま調べてみましたら、音月桂さん主演の雪組公演ですね。彩風さん、月城さんも、出ていらしたみたいです。

映画『燃えよ剣』予告映像(90秒)近日公開!

 検索をかけていましたら、『燃えよ剣』の映画の新作に行き当たりました。
 実際、かならずしも「燃えよ剣」が古く、「壬生義士伝」が新しい、ということは、ないと思うんですのよ。
 しかし、うわーっ! 岡田准一が土方さんって、あんまりです! 年行き過ぎだし、まったくもって似合わない!

 もう、ぜひとも、キキちゃん主演で、五稜郭の土方さんを、お願いします!!! 

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宝塚キキ沼に落ちて vol15

2020年12月31日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol14 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 先日たまたま、e+のアプリを見ていましたら、2月16日「アナスタシア」東京貸し切り公演の申し込みがあったものですから、「当たって行けなかったときは、中村さまにもらっていただくとか、なんとかなるはず」と張り切って申し込みましたが、見事にはずれました。
 結局、行けない可能性の方が高いので、友の会も、一般の申し込みもやめました。
 「アナスタシア」、見たくてたまらないのですが、世の中、どうしようもないこともありますよねえ。

 今にして思えば、母が元気なうちに、玉三郎の歌舞伎とGACKTの眠狂四郎、母の望み通りに連れて行ってあげてよかった、とつくづく。生きているうちに、見たいものを見ておきたいものです。
 「エリザベート」も、死ぬまでに、どうしても一度見たいのですが、トートのイメージと歌唱力が、あんまりな舞台を見たいとは思いません。望海さんのトートは、夢で終わりました。あと見たいのは、キキちゃんのトートです。

 浅田真央(mao asada) ミュージカル 「エリザベート」 Elisabeth ~ I belong to Me 【MAD】

 「エリザベート」は英語では上演されてないと聞いたように思うのですが、「私だけに」は「I  belong to Me」という題で、英訳されていたみたいでして、今年の全日本フィギュアスケート選手権、使っている女子選手が複数いました。「オペラ座の怪人」からは、これまで、ずいぶん曲が使われてきましたので、エリザベートももっと使われると、一般の認知度が上がりそうな気がします。
 ただし、上の真央ちゃんの動画は、あるいは、もしかして、音楽を上からかぶせたもののように思います。

 「アナスタシア」は、エフゲニア・メドベージェワの「Once Upon A December 」があったんですが、これも後に音楽だけかぶせたものでしょうか。この青い衣装の当時、この曲ですべっていた覚えがないんです。雰囲気、ぴったりですけど。

Evgenia Medvedeva / Евгения Медведева - Once Upon A December

 どこで出た話か知りませんけれど、花組の「はいからさんが通る」を「ベルばら」に代わる宝塚の定番にできたら、というような話があるようなのですが、私はちょっと首をかしげてしまいます。
 そりゃあ、海外ミュージカルは版権だか上映権だかにお金がかかりますし、劇団としては、「ベルばら」に代わるものが欲しい気持ちはわかるのですが、「はいからさんが通る」ねえ。

 「はいからさん」は、原作が「ベルばら」とあまりちがわない時代のものですし、個人的には、あんまり見る気がしません。シベリア出兵を調べたときに、古いドラマやらアニメやらも見てみまして、さっぱり感心しませんでしたし。
 せめて「ベルばら」のように、「愛あればこそ」とか「青きドナウの岸辺」とか、歌い継がれる名曲があればまだしも、ですが、いい楽曲ができた、という話も聞きません。

 ただ、ですね。「日本が舞台のもの」というのは、あっている気がするんですよね。
 宝塚作品の人気で、現在ベストスリーに入るものが、ウエクミ先生の大劇場デビュー作、雪組の「星逢一夜」です。

雪組公演制作発表会『星逢一夜(ほしあいひとよ)』パフォーマンス

 いえ、宙組の天彩峰里ちゃんがカフェブレイクで、宝塚で好きな作品は?と聞かれ、「星逢一夜」です、と答えていたのが、とても印象的でした。
 私は、見てません。望海さんが二番手で出ておられるのですが、百姓一揆の話みたいで、個人的には、円盤買ってまで見たいかといいますと、ちょっと、という感じなんです。

  しかし、今年のトレンドが「鬼滅の刃」ですし、いまやはり、日本の少し昔、明治・大正あたりの話がいいのでは、とは思うんです。
 バックが動乱、というなら、やはり幕末維新でしょうか。
 鹿鳴館に維新をからめるとか、でしたら、来年の大河は渋沢栄一みたいですから、登場人物の知名度もあがりますでしょうか。

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広瀬常と森有礼 美女ありき2 - 郎女迷々日録 幕末東西

広瀬常と森有礼美女ありき1の続きです。森有礼は、奇矯な人です。えー、私が勝手に言ってるんじゃありません。徳富蘇峰が言っているんです。「若き森...

広瀬常と森有礼 美女ありき2 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 森有禮を、基本的にはモデルにして、お相手はやはり幕臣の広瀬常がモデル、二番手さんは女に手が早いイギリス紳士・アルジャーノン・バートラム・ミッドフォートをもってくるか、あるいは鮫島尚信。

 「はいからさん」ではないですけども、満州を舞台に、白系ロシア人の少女と日本の軍人の話もおもしろいかなあ、と思うんですけれども、とても筋立てがむつかしそうです。

 なにはともあれ、楽曲がよくなくては、だめです。
 「ベルばら」が定番化したのは、さまざまな工夫があったから、でしょうけれども、やはり楽曲がよかったのが一番ではないか、と思います。

 当分、生観劇は無理ですし、暗いことは考えないで、あれこれ、キキちゃんに演じてもらいたくなるような筋立てでも夢想して、新年を迎えようかと思います。夜のひとときは、紅白でBABYMETALですけれど。

 みなさま、どうぞ、良いお年をお迎えくださいませ。 

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宝塚キキ沼に落ちて vol14

2020年12月16日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol13 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 12月14日、「アナスタシア」大劇場千秋楽のライブ配信を見てから、頭の中で「Once upon a december」と「The Neva Flows」が鳴り響いて、なにも手につきません。
 なんとしてでも東宝公演に行きたい! と思うのですけれども。

360 Video: On-Stage at Broadway’s “Anastasia”

 ほんとに、楽曲がいいんです。映画になったら見に行きます! たとえ、キキちゃんがでていなくても(笑) いや、映画のグレブは、ぜひ、ラミン・カリムルーでお願いしたいです。

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宝塚キキ沼に落ちて vol9 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol8-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。【宝塚歌劇】宙組「アナスタシア」歌唱フル動画【三井住友カード公式】キキちゃんは...

宝塚キキ沼に落ちて vol9 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上において、「アナスタシア」は、2017年、ブロードウェイでアニメをもとにミュージカル化されたこと、そのアニメは、1956年の映画「追想」に着想を得ていたことは、書きました。
 アニメと映画は見ていたのですが、ミュージカルは未見でしたから、いったいどの程度、史実離れしたファンタジーなのかは、知りませんでした。

 今回、宝塚版を見て、さすがに、アニメよりはかなり、史実に近づけていたことがわかりました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol8 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol7-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。いったいいつ、どうして、私はキキ沼に落ちたのか、実のところ、はっきり覚えてはな...

宝塚キキ沼に落ちて vol8 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書きましたが、ニコライ2世とその一家が惨殺されましたのは、ウラル地方のエカテリンブルグ、イパチェフ館の地下室です。
 星風アーニャは、ウラル地方の病院で気づいたときには、記憶を失っていて、徒歩でペテルスブルク(レニングラード)へたどり着いたと言い、途中の地名で、ペルミを挙げていました。ペルミはエカテリンブルグからペテルスブルクへ向かう途上にあります。
 しかもアーニャは、出国許可証を得るために、「下着に縫い付けられていたダイアモンド」を取り出します。
 実は、公女たちが即死しないで苦しんだのは、下着に多量のダイアモンドが縫い込まれていたため、といわれているんです。

 そして、末娘のアナスタシア生存説が流れた原因の一つには、一家を殺害した警護兵の中に、一家に同情的で、殺害に加わらなかったものがいく名かいて、逃亡に手を貸したのではないか、と推測されたことがあります。

【宝塚歌劇】宙組「アナスタシア」歌唱フル動画【三井住友カード公式】

 チェーカー(秘密警察)の将校らしいキキちゃんグレブの「The Neva Flows」は、以下のようなことを歌います。
 グレブの父親が皇帝一家の銃殺隊に加わっていたこと、少年だったグレブは、イパチェフ館にいた「誇らしげな少女」(アナスタシア)を見たこと、父親が夜中にピストルを持って出ていき、一家が殺された銃声と叫び声を聞いたこと、しかしグレブの記憶に深く刻まれたのは、その後の静寂であったこと。

 この歌より後に、上官の言葉で、グレブの父親が、どうやらアナスタシアを殺せず、逃がしたらしいことがわかるのですが、とすれば、「母は父が恥じて死んだと言った」とは、グレブの父は、アナスタシアに同情して逃がし、それを恥じたまま殺されたか自殺したか、だったと推測できます。

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尼港事件とwikiと『ニコラエフスクの破壊』vol.6 - 郎女迷々日録 幕末東西

尼港事件とwikiと『ニコラエフスクの破壊』vol.5の続きです。日本におきまして、ロシア革命の本はけっこう多いのですけれども、ロシア内戦の...

尼港事件とwikiと『ニコラエフスクの破壊』vol.6 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書いておりますが、ロシア革命は、第1次世界大戦の最中に起こっています。
 交戦相手のドイツは、ロシアの混乱を見て、スイスにいたレーニン(ボルシェヴィキの指導者)のロシア帰国を認め、資金援助をしたと噂されます。

 すでにニコライ二世は退位に追い込まれていましたが、革命勢力は多種多様で、大方は、連合国側に立ったままで、ドイツ・オーストリアとの交戦を続けるしかない、としていまして、最初に権力を握ったケレンスキーは、劣勢の対ドイツ、オーストリア戦線で攻勢をかけます。しかし、厭戦気分が蔓延しての革命なのですから、攻勢がうまくいこうはずもないんです。

 そんな中、唯一、奮戦しましたのが、チェコスロバキア狙撃旅団でした。
 チェコスロバキアは、そのころ、オーストリア・ハプスブルグ帝国の一部でしたけれども、独立気分が高まっていまして、オーストリアの一員として戦うことに、乗り気ではない者が多数いました。
 徴兵で駆り出され、ロシア側の捕虜になった者のうち、ロシアの義勇軍募集に応じた人々も多かったのですが、敵国側で戦った場合、自国側に捕まれば、ただちに銃殺なんです。死に物狂いになりもします。

 ところが、レーニン・ボルシェビキが政権を掌握しますと、ドイツ・オーストリアとの単独講和に踏み切るんですね。
 しかしこの講和が、ロシアにとっては譲歩の上にも譲歩を重ね、現在のバルト三国、ベラルーシ、ウクライナにまたがります広大な領土をドイツに割譲するものだったので、ボルシェビキ政権は急速に求心力を失います。

 で、連合国側は、チェコ軍団の無事出国をロシアに求め、ドイツ・オーストリアを通過させることはできませんから、結局、シベリア鉄道で極東ウラジオストクへ出て、太平洋を渡ってアメリカを経由し、大西洋を越えフランスへ行き、西部戦線に参加する、という、遠大な計画が立てられます。

 ところが一方、ロシアは、ドイツ・オーストリアの捕虜を、早急に本国に帰さなければいけません。この多量の捕虜たちが、シベリア鉄道を東から西へ移送されていて、チェコ軍団とぶつかり、小競り合いを起こしたりしたんですね。
 ただでさえ、シベリア鉄道は麻痺状態でして、足止めされたチェコ軍団はいらいら状態、だったんですが、軍事人民委員で最高軍事会議議長のレフ・トロツキーは、チェコ軍団輸送にかかわります鉄道沿線のすべてのソヴィエト(ボルシェヴィキが掌握)に、なにを血迷ったのか、「チェコ軍団を武装解除し、逆らえばその場で銃殺しろ」というとんでもない命令を発したんです。
 しかし、このときのソヴィエト政権にそんな力はなく、反対に各地のソヴィエト政権が、チェコ軍団に倒されました。
 ここで、反ボルシェヴィキだった人々が勢いづきます。反ボルシェヴィキといっても、様々な勢力の混合体で、結束力は弱かったのですが、一応彼らは、白軍と呼ばれました。

 ニコライ二世一家が、監禁されておりましたエカテリンブルクにおいて、1918年7月16日、ボルシェビキのチェーカー(秘密警察)指揮で惨殺されましたことも、チェコ軍団の蜂起と関係があります。
 なにしろ、ごく近くのチェリャビンスクで、チェコ軍団によってソビエトが倒され、白軍が勢いを得ていましたので、元皇帝一家が白軍に奪われ、反ボルシェビキ運動にさらなる拍車がかかることを、ボルシェビキは、怖れずにいられなかったわけなのです。

 そして実際、エカテリンブルクはまもなく、白軍の支配下に入るんですね。
 ボルシェビキは、「ニコライ二世は処刑したが、家族は他の場所へ移した」と公表してまして、当然のことながら、イパチェフ館には白軍の調査が入り、聞き取りも行われました。しかし結局、確かなことはなにもわからずじまいで、アナスタシア生存説が、長らくささやかれることとなります。

  で、再び「The Neva Flows」。
 「父の誇りを信じている」という言葉なんですが、英語では「But I believe he did a proud and vital task」なんですね。「父は誇りにかけて使命を果たした」ということでしょうけれども、ボルシェビキの将官になっているらしいグレブにとって、それはやはり、「父はアナスタシアに同情して逃がしたりはしていない」ということなのでしょうか。
 しかし、ひと目見て忘れられなかった「誇り高い少女」、「噂話」と「夢」には気をつけなければならない、というわけですから、どこかに、虐殺に加担しなかった父を肯定したい思いも、抱いている感じがあります。

 ♪流れるネヴァ川 春は近い 王族は潰えた
    革命に感情はいらない(A revolution is a simple thing)

 ネヴァ川は流れ、春が巡り来て 王族は消えた。
 革命とは、そういった単純なもので、よけいな感傷はいらない

 と、あるいはグレブは、自分に言い聞かせているのでしょうか。

 そしてつまり、ですね。
 グレブはペテルスブルクで掃除婦をしていたアーニャに一目惚れしたようなのですが、これね、ひと目見て「あの誇り高かったアナスタシアに似ている!」と、心引かれた、ってことなんじゃないでしょうか。

 真風ディミトリは、子供のころパレードでアナスタシアを見て憧れていましたが、父親がアナーキストで収容所で殺され、孤児になって、激動のロシアで詐欺師になって生きぬき、アーニャに出会います。

  なにしろ、宝塚版はまだ円盤が出ていませんで、仕方なく、ブロードウェイ版をYouTubeでひろい見しているのですが、ほんとうに、くりかえしてメロディが使われる「Once upon a december」は名曲です!

 Anastasia Broadway Musical Mean to be Quartet at the Ballet

 アーニャとディミトリ、皇太后、グレブがそれぞれに「白鳥の湖」の舞台を見ている上の場面がまた、見事です。
 オデットの踊りにアーニャの歌声、王子ジークフリートにディミトリ、三羽の白鳥に皇太后、ロットバルトにグレブの声がかぶさり、ディミトリとグレブの2重唱から、アーニャ、皇太后を交えた四重唱へ。圧巻です。

 オデットは潤花ちゃん、ジークフリートは亜音有星、ロットバルトが優希しおん。踊り手は若手ですが、評判通り、ロットバルトが素敵でした。

 海外ミュージカルらしく、独唱の人数が少ないのは残念で、天彩峰里ちゃん、独りの歌が聴けなかったのはさみしいかぎりでした。
 リリー役の和希そらくんは、フィナーレまで娘役で、キキちゃんとのデュエダンは最高でした。なんなら、キキちゃんトップのときのトップ娘役は、そらくんで(笑)
 ずんちゃん(桜木みなと)は珍しく老け役でしたが、肩の力が抜けて、楽しそうでした。

 そしてアーニャは、まどかちゃんにぴったりの役でした。
 アニメ声もあまり気にならず、真風ディミトリとの並びも、とてもよくって、これが最後かと思うと、やはり残念な気がします。
 真風さんは明るくはじけ、キキちゃんは重厚で、しかしキキちゃん、フィナーレでは打って変わって美しい笑顔を見せてくれましたので、もう最高!

The Neva Flows reprise (RUS SUB)

 泣ける場面です。
 最後にグレブは、「アナスタシアは伝説になった」みたいなことを言っていたように思うのですが、ソビエト連邦が潰えて、ロマノフの美しい伝説を、ロシアは取り戻したんですよね。
 最後のキキちゃんグレブは、ロシアの心を歌っているように思えました。

 どうしたらいいんでしょう! 
 どうしても東京へ行って「アナスタシア」を見たい! という思いがつのってやみません。
 見たい!!!

コメント (7)
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宝塚キキ沼に落ちて vol13

2020年12月14日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol12 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 去年(2019年)のタカラヅカスペシャルが、専門チャンネルで放送されたみたいです。
 私は、今年のはじめにキキちゃんにはまってから、検索をかけていましたら、「キキちゃん スカーレット」といいますワードが、けっこう上に出てくるのに気づきました。
 さっそく見てみましたら、タカスペの宙組コーナーで、えー、簡単に言ってしまえば、キキちゃんがスカーレット・オハラの扮装で「ソーラン宙組」を歌って踊って、全部もっていった!!! ということでして、どーしても、どーしても、どーしても見たくなり、私は円盤を買いました。

 いや、もう、すばらしくデコルテがきれいだし、真風バトラーと芝居をしている間は、見事に女声で、スカーレット・オハラなキキちゃん。
 「風と共に去りぬ」のいわゆる階段落ちの場面です。スカーレットはバトラー船長と言い争って階段から落ち、暗転。バトラー船長が一人で「愛のフェニックス」を熱唱し終わったところで、階段の上に元気なキキちゃんスカーレットが姿を現し、ドスのきいた男の声で「あー、どっこいしょ、どっこいしょ」。ソーラン節の前奏に乗って、クリノリンの輪っかドレスにはっぴを羽織って、肩をいからせ、勇ましい表情で下りてきます。
 真風バトラーの「スカー、レッ、ト???」というつぶやきの中、センターでソーラン節を歌い出すスカーレットを、やがてはっぴを着終えた真風バトラーが押しのけ、はじき出されたキキ・スカーレットは、2番手の位置にいる小公子・和希そらを押しのけ、輪っかドレスで踊りぬくんです。

 実際、ほかのすべての場面がかすんでしまうほど面白く、私は円盤を買った当初、何十回も、この場面だけ見返していました。
 しかし、少し落ち着いてみますと、望海さんと真彩ちゃんのお歌はすばらしいの一言で、星組さんは「桜華に舞え」の主題歌を歌ってくれてますし、見所は他にもたくさん、ありました。

 それはそうと、ですね。今回この話を出してきましたのは、この宙組コーナー、演出がウエクミ先生、だったんですが、他の組コーナーとは、雰囲気もちがえば、組み合わせもちがいました。
 雪組は、男役二番手さん以下多数、次いでトップ同士・望海さんと真彩さんがからんで、最後は全員。
 花組さんは、最初に二番手の瀬戸さん以下男役3人、次いでトップ同士・柚香さんと華ちゃん、柚香さんとマイティ、そして全員。
 星組はちょっと変則的で、まず二番手愛ちゃんとトップ娘役の瞳ちゃんがデュエット、男役娘役数人が歌って、トップの礼真琴さん独唱、しめは全員、です。

 で、宙組なんですが、まずは「ベルばら」の小公子・小公女を男役娘役3人ずつ、次いで3番手のずんちゃん(桜木みなと)とトップ娘役のまどかちゃんが「王家に捧ぐ歌」より「月の満ちるころ」。そして、キキ&真風の「風と共に去りぬ」です。

 えーと、なにが言いたいかと言いますと、ですね、トップ娘役がトップとも二番手とも組まないで三番手と組み、トップと二番手、男役同士が組んだのは、宙組だけだったんです。
 キキちゃんと真風さんは、もちろんお似合いでした。もしかすると、ほんとに風共ができるかもしれないくらいに、です。
 それは意外でもなんでもなかったんですが、私が驚いたのは、ずんちゃんとまどかちゃんが、びっくりするするほどお似合いだったことです。
 「王家に捧ぐ歌」の新人公演主演コンビだったそうですし、驚くようなことではないのかもしれないのですが、声の質もよく合って、すばらしいデュエットでしたし、「まどかちゃん、真風さんと組むより似合ってない?」と、つい思ってしまったんですね。

 前回お話ししました「神々の土地」は、朝夏まなとさんの退団公演でしたし、真風さんとまどかちゃんは次期トップコンビと決まっていたのですが、役柄としては、まったく交わりようもない役でした。
 真風さんは、ニヒルで、大人で、しかしけっして醒めきってしまっているわけではなく、熱いものをうちに抱いている感じが、素敵でした。
 まどかちゃんは、前回も書きましたが、一見無邪気で、しかし無意識のうちに激しく嫉妬心を燃やし、無鉄砲に突っ走って愛する男を窮地に陥れるという、子供ゆえの怖さを持った少女を、的確に演じていました。

 その「神々の土地」があった上での、「フライングサパ」です。

 "FLYING SAPA" at Umeda Arts Theater – Main Hall in JAPAN <For J-LODlive>

 宝塚では珍しいSFだというので、楽しみにしていたのですが、チケットは手に入らないないだろうし、とあきらめていました。
 ところが、舞台よりも現実の方がSFじみてきまして、思いもかけないコロナ蔓延。コンサートも観劇もスポーツ観戦も、すべてが中止にいたるという悪夢が続き、ようやく8月になって、梅田芸術劇場で上演となりました。
 花組さんも星組さんも、感染が出てなかなか再開できませんでした中、小公演だったことなどもあったんでしょうか、「フライングサパ」は無事開幕。初日、流れてきたツイッターで、キキちゃんと真風さんが、ぼろぼろ泣いていた情景が忘れられません。

 で、地方在住者にとって、これはむしろありがたことなのですが、楽天テレビでの千秋楽ライブ配信があって、見ることができました!
 なにしろコロナ禍の異常な状況でしたので、最初は、華やかなフィナーレやパレードがなく、歌もほとんどないことが、さみしいような気がしました。
 歌は、松風輝さんが歌う子守歌と、キキちゃんが口ずさむ歌と、どちらもつぶやくような歌が流れるだけですし、踊りもまた、アンニュイな雰囲気のもので、宝塚らしく、パッと思いを発散できる感じからは遠かったんです。
 しかし慣れてくれば、スタイリッシュな雰囲気を楽しむのもいいか、とも思い直したんですが、おそらく、生で見ていればもっと、雰囲気にひたりやすかったかと思います。

 SFとしてどうか、と言えば、そうですねえ。現実の方がシュールです。
 独裁的な管理社会って、ソ連が長らくそうでしたし、中国はいま、それが極端にIT化され、ネットで監視の目が張り巡らされ、電子マネーが普及していますから、反体制分子は下手をすると買い物もできなくなってきた、ともいわれます。しかしもちろん、一方で物々交換の世界も残っていたりします。物語のように、アウトサイダーだって生存はできるわけです。
 そんな恐ろしい監視社会で、当初、コロナ感染を隠蔽しようとして、結局は、世界中に散らばってしまっちゃったあげくに、人間のコミニュケーションが普通にできず、楽しみはすべて御法度、というような、異常な社会が出現したわけですよねえ。なんてシュールなんでしょ!!!

 だから、まあ、別に、なんの違和感もなく、「フライングサパ」の世界には、すっと入っていけました。
 宝塚の定番ならば過去のファンタジーなのが、未来を想定したファンタジーになっただけでして、人間関係はいつものウエクミ節。しっかり描けてます。
 ニヒルで大人な真風さんは素敵でしたし、まどかちゃんは体当たりの演技。私は、この作品ではじめて、二人はお似合いだな、と感じました。
 キキちゃんは、精神安定剤のようなお役で、素敵は素敵なんですが、うん、ウエクミ先生、キキちゃん主役だと、どんな感じに描いてくれるんだろうなあ、と、つい、考えてしまいました。

 この「フライングサパ」は、未来の水星を舞台にしていますけれども、萩尾望都のSF作品で、火星を舞台にしたものがあります。
 
 

 この「スター・レッド」、「ポーの一族」と同じくらい好きでした。
 火星を愛してやまない火星生まれの少女、レッド星(セイ)。
 数千年の孤独を生きた異星人・エルグは、レッド星に出会い、最後の最後に、「狂うことにする」と、自分の精神を封じ込めていたいましめをときます。
「存在していれば、なにかが見つかるかもしれないと思った。そしてきみに出会った。一つの星、一つの運命に、恋している少女。きみを独りじめし、数千年の孤独をすべてうめたかった。……星、心からきみを大切に思う」

 惑星の盛衰がからむ遠大な物語で、エルグと星のはるか時空を越えた愛は、忘れがたく胸にしみます。
 私の夢は、このエルグをキキちゃんに演じてもらえたらなあ、ということです。
 しかし、レッド星をやれるようなトップ娘役さんなんて、いますかね? うーん。ぴったりなのはSU-METALですけれども(笑)

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宝塚キキ沼に落ちて vol12

2020年12月11日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol11 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 人事発表があってから、フライングサパの感想を書こうと思っていたのですが、発表がありません。
 いま、大劇場のアナスタシアで、空席が目立っているそうなのですが、これ、大方はコロナのせいでしょうけれども、一部に、宙組ファンがモヤモヤを抱えてテンションがあがらないから、ともささやかれているそうです。

 中途半端に、まどかちゃんの専科移動と、次期宙組トップ娘役に潤花ちゃん、という発表のみがありました。そして、次期大劇場公演でご卒業か、と噂されていました真風さんが、どうも長期になるらしく、では2番手の長いキキちゃんは? と、わけがわからないままでは、モヤモヤするな、という方に無理があります。
 いったい、なんの必要があって、こんな変則的な人事発表のみを、劇団はしたのでしょうか。

 そして、噂ですけれども、まどかちゃんの専科移動は、次期花組娘トップとなって柚香さんの歌介護をするためとか、キキちゃんは2番手のまま退団とか、モヤモヤを通り越してムカムカするような話が、流れ放題です

 私はこれまで、真風さんとまどかちゃんがお似合いだとは、まったく思っていませんでした。

TAKARAZUKA CAFE BREAK ★オーシャンズ11で大暴れ!芹香斗亜 20190628

OGPイメージ

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

「桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録後編下」の続きであり、「幕末維新はエリザベートの時代vol1」の続きでもあります。といいますか私、「宝...

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書いておりますが、「オーシャンズ11」は、同名のアメリカ映画を宝塚独自にミュージカル化したものでして、小池修一郎氏の脚本・演出で、2011年星組で初めて上演され、2013年花組で再演されました。
 初演の新人公演で真風さんが主人公のダニィ、キキちゃんが相棒のラスティ。花組再演の新人公演では、キキちゃんがダニィ、マイティ(水美舞斗)がラスティ。初演の星組本公演で、真風さんがライナス。花組再演本公演ではキキちゃんがライナス。

 で、真風さんとキキちゃんは宙組でトップと2番手となり、昔星組の新人公演でやったダニィとラスティを、本公演で演じたわけなのですが、キキちゃんの宙組作品の中で、ラスティは屈指のはまり役です。同時に、ダニィとラスティのバディ感は、歴代でもピカイチだったのではないでしょうか。

 私、花組の「オーシャンズ11」は、キキちゃんがライナスをしていることもあって、円盤を買って見てみたのですが、それでつくづく感じたのは、ダニィとその妻のテス、敵役のベネディクトとの三角関係が、花組のものの方が、くっきりとあざやかだった、ということです。
 なにしろ花組のベネディクトは望海風斗さんでしたので、これには宙組のずんちゃん(桜木みなと)は、迫力と感情表現で、どうしても負けていました。
 そして花組でテスを演じていた蘭乃はなさんは、色香ただよう大人の女として、夫のダニィとホテル王ベネディクトの間を揺れ動く気持ちを見事に表現していましたが、まどかちゃんのテスは、いかにも子供っぽく、ダニィが夢中で愛していることが、ちょっと絵的に信じられませんでした。テスのもっと若いころを、夢白あやちゃんが演じていましたが、正直、そちらの方が大人っぽくて、ダニィとお似合いでした。

 「神々の土地」と「フライングサパ」を見るまで、私はどうも、真風さんとまどかちゃんと、それぞれの本当の魅力に気づいていなかったような気がします。
 あるいは、もしかして、二人が別れて、お互いに別の魅力でこれから輝けるのかもしれないのですが、しかし、今回の人事発表は、噂が噂を呼んでいる感じですし、いままでのところ、なんだか、とてもいやな感じしか受けません。

 一部に流れているように、キキちゃんが2番手で退団だというのでしたら、私は二度と宝塚は見ません。

 しかし、これも一部に流れているように、真風さんが長期になったからキキちゃんが宙でトップになれない、というのは、だいぶんちがうのではないか、と思うんです。

 あるいは、妄想と言われるかも知れないのですが、コロナ禍の最中に、潤花ちゃんが宙へ来る、と発表されたときから、私は「これはキキちゃん、宙を出ることになるのでは?」と思ったんです。
 引き金は、月組トップ珠城さんの退団発表だったと思います。それが早すぎたのか遅すぎたのか、コロナがどう関係したのかわかりませんけれども、当初は、100周年を迎えた最中の退団では、なかったのではないでしょうか。

 キキちゃんは、阪急を背負っています。親会社がスポンサーだと、劇団側では、けっこう融通をきかせてもらえるのではないんでしょうか。いくらコロナ不況でも、です。あくまで、私の妄想かもしれないのですけれども。
 ともかくキキちゃんは、阪急を背負っているがゆえに、月移動になるのではないか、と、私はとっさにおもいついちゃったんですね。

 後は玉突きではないんでしょうか。
 月の次期トップ予定の月城かなとさんは、雪組の出身です。
 雪組では望海風斗さんの退団後、彩風咲奈さんがトップになりますが、彩凪翔さんも退団で、二番手候補が朝美絢さんしかいません。朝美さんは、まだ三番手羽も背負っていなかったかと思いますし、月城さんが帰るのが、一番、雪組のためではないのでしょうか。
 また彩風さんにはまだスポンサーがついていなかったので、次期トップ娘役にするつもりだった潤花ちゃんにスポンサー(ヒガシマル醤油)がついたわけですが、月城さんはカミノモトを背負っているので、月城さんが雪に帰れば、潤花ちゃんを出せるわけです。
 私は、スポンサーつきの潤花ちゃんが宙に来たからこそ、キキちゃんが出ることになったのだと、思いました。

 しかし、ですね。雪の新体制に間に合うように月城さんが雪に帰るとなれば、珠城さんの退団公演まで月にはいられず、おそらくキキちゃんは、珠城さんの退団公演から月へ行くのではないか、つまり落下傘ではないのではないか、とまで、妄想しました。
 だとすれば、12月のはじめには、発表があるはずなんです。大劇場アナスタシアの千秋楽でお別れ、ということになりますから。
 で、キキちゃんが月に行くのだとすれば、真風さんの長期は、キキちゃんが抜けた後の宙組の人気維持の必要から、ということになると思うんですね。

 でも、ですね。もしもそういうことなら、そりゃあ、できればキキちゃん、宙でトップの方が落ち着きはしますが、もしも月でトップなのならば、それはそれで、発表した方がいやな噂は打ち消せるのではないか、と思うのですが、発表がありません
 ほんとうに、モヤモヤを通り越してムカムカ、という結果になりそうな気がしまして、つい、いらぬことを書いてしまいました。

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