トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

村上海賊の娘 その②

2016-08-24 21:40:10 | 読書/小説
その①の続き 第一次木津川口の戦いで村上海賊が、焙烙玉なる兵器を使っていたことをこの小説で初めて知った。現代の手榴弾の先駆け的な兵器で、敵方の船舶に投げ込むと爆発する。着弾して直ちに爆発するのではないが、木造船には絶大な効果があったのは想像に難くない。当然この焙烙玉を投げ込まれ、泉州海賊たちはパニックに陥る。 面白いことに焙烙玉を使用していたのは村上海賊だけで、乱世の先進地であり堺の豪商と接してい . . . 本文を読む
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村上海賊の娘 その①

2016-08-23 21:10:09 | 読書/小説
 2014年本屋大賞を受賞したベストセラー歴史小説『村上海賊の娘』(和田竜著、新潮社)を、少し遅ればせながら先日読んだ。河北新報にもこの小説の広告が大きく載ったし、その中の「何これ、面白いんですが」という文句は決して誇大宣伝ではなかった。上下巻合わせて千頁ちかい長編だが、ネットでは一気に読めたという書評が多かった。  小説を読むまで私は、この主人公は架空の人物だろうと思っていた。だが、村上海賊の長 . . . 本文を読む
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反米偏差値80点の女 その③

2016-08-17 21:40:04 | 世相(日本)
その①、その②の続き イスラム政治思想が専門の池内氏による先のコラムは、安易な欧米擁護論では決してない。「イスラームとの私的な闘争」という他のコラムの副題は「新・西洋中心主義?」となっており、西洋近代の先進性を再確認し、普遍性と優越性を再確認する欧米知識人の動きを紹介している。 但し、池内氏の指摘した日本人の漠然とした「欧米」なる存在への反感、根強い非差別感情は考えさせられる。事件はそれをまざまざ . . . 本文を読む
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反米偏差値80点の女 その②

2016-08-16 21:40:26 | 世相(日本)
その①の続き 続けて池内恵氏は、シャルリー・エブド紙襲撃事件における既存のメディアやネットでの動きをこう分析しており、少し長文だが引用したい。 「それ(反西欧感情)はテレビのような公共のメディアさえもしばしば見られたが、なんら抑制の無いソーシャル・メディアでは極めて放恣に表出された。 テレビ各局の報道記者やコメンテーターは「テロは許せない」とのお題目を一応は唱えながらも、その次の瞬間から、殺害さ . . . 本文を読む
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反米偏差値80点の女 その①

2016-08-15 21:10:20 | 世相(日本)
 終戦記念日ということで今日は、こぞってメディアが戦争関連特集を組むのが恒例行事となって久しい。終戦時の焼野原と化した日本全土を映しただけでも、普段は政治や歴史に全く無関心な若者さえ、否応なしに米国への反発が湧いてきても不思議はない。 私自身、米国を非難する記事を幾つか書いているが、反米度はそれほど強くないと思っていた。しかし、昨年3月6日付で motton さんから頂いたコメントには、こんな一文 . . . 本文を読む
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ある親馬鹿の話

2016-08-13 20:40:15 | 私的関連
 お盆の季節には、故人を思い出したり、偲んだりすることが多いと云われる。5月7日付の記事で、親の財産をほぼ独り占めした母方の伯父と、その弟妹(私には叔父叔母)たちとの対立について触れたことがある。この伯父も既に物故者となっているので、再び伯父のことを書いてみたい。  母方の財産相続で一番もめた原因は、伯父が弟妹に全く相談せず勝手に土地や家を売ってしまったこと。売った後で電話連絡し、着物や家具など . . . 本文を読む
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五体不満足 その四

2016-08-07 21:10:36 | 読書/ノンフィクション
その一、その二、その三の続き 大学卒業後、乙武氏は雑誌『Number』のスポーツライターとして、特集記事を書いていたこともある。サッカーの取材でオーストラリアに行ったのだが、既に現地に来ていた年配記者からこう言われたらしい。「どうせ、ド素人なんでしょ。サッカーのこと、何も分ってない」。 一応、7月から『Number』さんで連載させて頂いている、と反論した彼に、件の記者は辛辣に言い返したという。「そ . . . 本文を読む
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五体不満足 その三

2016-08-06 20:40:22 | 読書/ノンフィクション
その一、その二の続き 第3部「心のバリアフリー」には、大学時代の秋の夜、なかなか寝付けなかった乙武氏が考えたことが書いてある。今にして見ると、実に意味深だと思った箇所を引用したい。 ―それまでボクが最も重要視していたのは、今から考えてみると、お金や地位・名誉といったものだったと思う。中学・高校を通して憧れていた弁護士も、「弱い立場の人を救いたい」という思いからではなく、そのカッコよさ、収入の多さ . . . 本文を読む
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五体不満足 その二

2016-08-03 21:10:04 | 読書/ノンフィクション
その一の続き 幼稚園最終学年では学芸会が転機で、それまでのワガママさが影を潜めたという乙武氏。最も仲の良かった男児が、学芸会で誰もやりたがらなかった役を引き受け、友に負けじとその役の次に敬遠されていたナレーターを担当したそうだ。幼稚園児ながら、男としての株を上げようと必死だったのだろう、見栄っ張りのところは、どうやらこの頃から変わっていないらしい、と自身を語っている。 元来が目立ちたがり屋で、常に . . . 本文を読む
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五体不満足 その一

2016-08-02 21:10:17 | 読書/ノンフィクション
 3月に5人もの女性との不倫が発覚、すっかり落ちた偶像となった乙武洋匡氏。それまで私は、彼が一躍世に知られることになったベストセラー『五体不満足』を見たことがなかった。 しかし、スキャンダルで逆に興味が湧き、初めてこの自伝を読んでみた。私が見たのは2001年春に出版された完全版の講談社文庫で、図書館にあったのを借りてきた。ベストセラーだけあって読み易かったし、多くの読者が感動したというのも納得いく . . . 本文を読む
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優秀な学生

2016-07-29 21:10:26 | 世相(日本)
 前回はトルコクーデター未遂事件について書いたが、この関連で2013年9月にトルコで刺殺された女子大生・栗原舞さんのことを思い出した。トルコ女子大学生死傷事件からもう3年も過ぎていたのだ。栗原さんは宮城県・名取市出身で、22歳の若さで他界したのは痛ましい限り。 地元紙・河北新報は彼女のことを、国際的なサークル活動にも参加している優秀な学生、と報じていた。私の友人の息子が中学生の時、クラスメートだっ . . . 本文を読む
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トルコのクーデター未遂事件に思うこと その二

2016-07-24 21:40:06 | 世相(外国)
その一の続き 1960年の春、「自由を我らに!」の叫び声がイスタンブルやアンカラの大学生から始まり、知識人層や都市生活者がこれに加わり、次第に「打倒メンデレス!」の叫び声に変った。ちなみに60年代半ばのトルコの大学生の数は5万人未満に過ぎず(※総人口は約3千万人)、文字通りのエリート。それでも義務教育の普及により、中近東では文盲率50%を割る唯一の国がトルコだった。 激化するデモに対し、メンデレス . . . 本文を読む
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トルコのクーデター未遂事件に思うこと その一

2016-07-23 21:10:26 | 世相(外国)
 親日国のイメージだけが独り歩きしているトルコだが、7月16日に終結したクーデター未遂事件には心底驚いた日本人も多かっただろう。軍によるクーデターが度々起きる国としてタイは有名だが、実はトルコでも1960年、71年、80年と過去3回、クーデターで軍が権力を奪取している。周辺アラブ諸国よりは民主的でも、強権的な指導者や軍部の介入という点ではトルコも同じなのだ。  71年は「3月12日書簡によるクー . . . 本文を読む
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役に立つ愚か者 その二

2016-07-17 21:40:15 | 世相(日本)
その一の続き レーニンの「役に立つ愚か者」は、内容よりも発言自体を日本の知識人が知っていたかどうか、私には気になった。知らなかったならば無知なインテリで済むが、そうでなかったとすれば、必ずしも愚か者とは限らない。案外ロシア革命史やソ連専門家は知っていても、あえて無視したのではないか…と私は想像している。 というのも、昨年10月に「スポンジ頭」さんから頂いたコメントで、邦訳されたテーヌの「近代フラン . . . 本文を読む
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役に立つ愚か者 その一

2016-07-16 21:10:06 | 歴史諸随想
 現代は違うかもしれないが、80年代までの日本の知識人の間には革命へ強い憧憬を持つ者が多かった。殊に戦後日本の言論界を支配していた進歩的文化人にはその類が大半だったのだ。初版が1981年9月の『イスラムからの発想』(大島直政著、講談社現代新書629)には、彼らに対する手厳しい批判があり、以下の文章だけで言論界の主だった文化人がいかに進歩的に程遠かったのかが知れよう。 ―この種の人々は、すぐ「革命 . . . 本文を読む
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