杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・自民党「コスタリカ方式」全廃の方針 次期衆院選  の報に

2008-06-29 21:08:14 | Weblog
本日の毎日新聞朝刊一面に
「自民党「コスタリカ方式」全廃の方針 次期衆院選 」の文字を見つけました。

コスタリカというと中米、メキシコの南、パナマの北隣に位置する九州と四国を合わせたくらいの小さな国です。
なぜ、「コスタリカ」が目に留まったかというと、私が「コスタリカに学ぶ会」(正式名称:軍隊を捨てた国コスタリカに学び平和をつくる会)という市民のグループに参加しているからです。
コスタリカがなにか、というとコスタリカコーヒーとか広大な雲霧林を有するとかいうことでも有名ではあるのですが、日本と同じころ(1948年)に軍隊を放棄してその後もずっと軍隊を持たずに平和をつくってきている国ということで、最近少し有名になってきているかと思います。

コスタリカが軍隊を放棄したのは、その直前に国内で大統領選の選挙違反がありその不正を糺すために反対勢力が蜂起したことで、国内で自国民同士を殺し合うことになり、そのことの愚から、新政権が軍隊を放棄した。そして、その予算を教育(30%を)と福祉に回して、それがうまくいったことから、ずっと軍隊を持たずに理性的な外交で乗り切ってきているのです。

 今では、国民は「軍隊を持ってないのだからせめられるはずはない」という漠然とした安心感に支えられて、軍隊なしで平和を維持している国です。
これは、せめてこられたら丸腰では困る、と軍隊相当のものをとりあえず持っていたいという日本人の漠然とした不安感と方向こそ違え、よく似ていると思うのですが方向が違えば大違いです。

ところで、この国は司法権もなかなか骨があるのです。
アメリカがイラク出兵を決めたときに日本やイギリスがいの一番にそれを指示しましたが、ときの大統領がことあろうにこのアメリカの支持を表明してしまいました(04年3月)。その時、大学生の青年が大統領の意思表明は憲法違反だと憲法裁判所に訴え、裁判所はこれを「違憲」と判断したのです(すごい司法権です!)
そして、2004ホワイトハウスの、賛同国を削除させたというのです。
下記は、その際の判決書きです。
                 記
『2004年9月8日
コスタリカ共和国最高裁判所・憲法法廷
本日、9月8日水曜日午後の評決により、憲法法廷は3件の違憲の訴えにつき以下のように決定した。訴えは、2003年3月19日にイラク戦争に関して行政府が行った合意に対し、ルイス・ロベルト・サモラ・ボラニョス、弁護士協会、及び護民官の三者によってなされ、憲法と永世・積極的・非武装中立宣言、国連、国際人権規約に違反するとの内容であった。本合意及びそれに付随するいっさいは無効となる。最後に、憲法法廷は行政府に対し、米国政府に対してホワイトハウスのホームページに掲載されている有志連合のリストから我が国の名を削除するための必要手続きをとるべきであることを指示する。

評決はソラーノ・カレーラ判事ら七人の満場一致で行われた。

判決原文は次の通り
『憲法、国連、コスタリカが受け入れた国際人権規約に違反するとの結論をもって、2003年3月19日に、行政府がイラク戦争及びそれに付随するすべての行為について行った合意を無効とする。米ホワイトハウスのウエブ・ページに掲載されている有志連合のリストに我が国の名が掲載されていることに対し、共和国政府は米政府に対して必要な措置をとれ。この判決は司法報告、政府広報紙「ラ・ガセタ」に掲載せよ。以上、通告する。』

(上記は、原告であるロベルト・サモラ氏よりFAXで送られた文を「コスタリカの人々と手をたずさえて平和をめざす会」共同代表・伊藤千尋さんが翻訳されたものです。)


さて、それで、今日の新聞にあったコスタリカ方式とは、実はコスタリカとは関係のない日本の自民党の選挙候補者に関する取り決めのようです。


本日の毎日新聞の記事は**************************
 自民党は28日、次期衆院選に向け、同じ選挙区の現職2人が小選挙区と比例代表で交互に立候補する「コスタリカ方式」を全廃する方針を固めた。2人の後援会が統一されないため選挙基盤が強化できないことや、比例代表に回った候補が名簿上位で優遇され、同じ比例ブロック内の小選挙区候補の比例復活当選の可能性を低くすることが理由だ。同党選対幹部は「衆院選で勝てる候補を優先し、党のためにならないコスタリカはもう残さない」と明言した。
 同方式は、96年の衆院選で中選挙区から小選挙区制度に切り替わった際、現職同士の調整がつかずに「特例措置」として導入。96年から続いているのは群馬1区だけだが、その後の入復党などで新たに導入した選挙区が増え、現在は8選挙区。
 しかし、比例組を優遇するため、他の小選挙区候補からの批判が強い。自民党は、今年4月の衆院山口2区補選などでの敗北で危機感を募らせており、同方式を全廃して比例復活の可能性を高めることで小選挙区候補に全力を出させ、比例票の底上げも図る考えだ。
 既に党神奈川県連は今月24日、神奈川12区の同方式廃止を決定した。この選挙区では、05年衆院選(郵政選挙)の際、同党の桜井郁三氏が小選挙区に、江崎洋一郎氏が比例代表南関東ブロックに立候補し、次期衆院選では交代するとの協定を結んだ。今回の決定に江崎氏は強く反発している。
 同区以外の7選挙区も、党の世論調査などにより、勝てる可能性の高い候補を小選挙区で公認する方針。公認から漏れた議員の処遇は衆院選直前まで決めないが、党への貢献など「特別の理由」があれば「総裁枠」などで比例名簿への登載を検討し、その場合もコスタリカ方式にしない案などが検討されている。
(08.06.29 毎日新聞から)
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このコスタリカ方式なるネーミングは
 日本コスタリカ友好議連会長の森喜朗元首相が提案したといわれるもので
同じ政党内で同じ選挙区を地盤とする複数の立候補予定者がいる場合に、選挙ごと、あるいは一定期間ごとに選挙区と比例区で立候補を交代し、すみ分けるやり方で、中米コスタリカの憲法が現職議員の連続立候補を禁じていることに由来するということらしいです。
 衆院の選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変更された結果、地方は実質的に定数減となり、主に自民党は同じ小選挙区に複数の現職を抱えることになったために、議員心理として、比例区への転出は、後援会組織を競争相手に奪われ、発言力が小さくなるとの懸念が強く、こうした手法で妥協を図った経緯があったということです。

自民党のお家事情は別にしても、そもそも、小選挙区制が日本の中でうまく民意を反映していけるものであるかについては、本気で検討したほうがよいのではないかと思います。

 ちなみに、コスタリカの国会(一院制)議員選挙に小選挙区はありません。全国7つの大選挙区、選挙区ごとの拘束名簿式比例代表制になっています。しかも候補者の4割以上は、女性でなければならないと決まっています。
 憲法によって、つい昨年まで大統領は終身再選禁止が決まっていましたが、これは撤廃されました。現在のアリアス大統領は2度目の大統領就任です。
 2名の副大統領(次期大統領に出馬禁止)と国会議員はたしかに、連続再選が禁止されてています。
日本も、「コスタリカ方式」の別の部分をもっと取り入れるべきだと思います。

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1 コメント

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ブログ主さんの無知/おとぼけとコスタ・リカ幻想 (TT)
2008-07-31 23:06:52
>そもそも、小選挙区制が日本の中でうまく民意を反映していけるものであるかについては、本気で検討したほうがよいのではないかと思います。

そもそも、小選挙区制を導入したのは、社民党を含む現野党が政権奪取した時期のことなんですけど?

後に小沢とともに自民党を飛び出すことになる小沢の傀儡海部内閣で、自民党が小選挙区制を導入を打ち出したときには、当時党内非主流だった小泉さんをはじめ党内で大反対に遭い、社会党を含む野党も大反対して一端つぶれた。

それが、自民党を飛び出した小沢一派と野党が野合して政権を取るやいなや、政治改革の目玉として小選挙区比例代表制を喧伝し、小選挙区比例代表制さえ導入すればすべての問題が解決するような論調を作り出して導入したんです。
もちろん、社民党(当時の社会党)は賛成した上でのことです。

ブログ主さんの言ってることって、自分たちで作ったルールで、自分たちが勝てないのはルールのせいなんだから、ルールを見直せ、ということであり、これほど身勝手な話はないですね。

知らないで言ってるんならあまりに無知すぎるし、知ってて言ってるんなら、あなた方が無思慮に賛成可決した結果で自業自得なのに、何を他人事のようにいてるんだ、としか思えないですね。

>日本も、「コスタリカ方式」の別の部分をもっと取り入れるべきだと思います。

お得意のコスタ・リカ幻想論ですね。

隣国の軍隊の軍事費を軽く数倍凌駕する予算を持ち、「軍隊の無い平和な国」なのに、他国の軍隊が裸足で逃げ出すような重武装を装備し、米軍と演習するような、自称警察は、「軍隊の無い平和な国」で一体何を取り締まっているんでしょうね?
憲法で禁じてるんだから軍隊ではない、なんて理屈が通るなら、自衛隊だって軍隊じゃないですね。

しかも、そんな重武装警察が何をやっているかと言えば・・・。

つい先日まで、日本でも単館公開されていた映画「シャーク・ウォーター 神秘なる海の世界」という作品がありました。

この映画は、本来、鮫の生態をとらえるドキュメンタリー作品だったんですが、コスタ・リカのおかげで、コスタ・リカにおける鮫の密漁を告発する作品になってしまってます。

というのも、撮影スタッフはコスタ・リカ大統領に(観光PRのために?)招聘されてコスタ・リカに向かうのですが、その取材の過程で知ったのは、法律でフカヒレ漁を禁止している筈のコスタ・リカで、フカヒレ漁の密漁が堂々と行われている実態。

法律でフカヒレ漁を禁止している筈のコスタ・リカでは、フカヒレ漁は莫大な富を生み出す一大産業となっていたのです。

自分たちは鮫を食べない密猟者は、フカヒレヒレを切り取るだけのために鮫を刈り尽くし、生きたまま無惨にヒレだけ切り取って、海中に放り出して、失血と酸欠でさんざん苦しませて殺すのがコスタ・リカ流。

しかも、あろうことか違法行為を取り締まらなければいけないはずの、一国の軍隊を凌駕するほどの武力を持つコスタ・リカ警察は、密猟者を取り締まるどころか、密猟者と一緒になって撮影スタッフに攻撃を仕掛け、あげく殺人未遂の冤罪までかける始末。

なんと、フカヒレが生み出す莫大な富に目をつけたマフィアなどが、コスタ・リカの警察を贈賄によってコントロールし密猟を繰り返している一方、実際に密猟をしているサメ漁業の漁師たちは、マフィアに怯えながらお金のためにサメを捕まえていのです。

大統領自らが招聘した撮影スタッフですら、このような羽目に陥らせるコスタ・リカの警察とは大統領の統制下にないのか、あるいは・・・。

振り返ってみれば、現コスタ・リカ大統領は、今から一年ほど前、およそ半世紀にわたる友好関係を持ち、コスタ・リカのインフラ整備事業において、他国を遙かに下回る低予算で協力するなどしてくれた台湾を、中国の方がもっとお金を出してくれるからという理由で、あっさり断交してしまった経歴を持つお金に厳しいヒトでもありました。

コスタ・リカの闇の深さを如実に表したドキュメンタリー作品です。
唯一の救いは、命からがらコスタ・リカから脱出したスタッフが再び現地を訪れたとき、良心あるコスタ・リカの一部市民による不法密漁への反対運藤を目にすることができたことでしょうか。

ブログ主さんも一度は見ておいた方がいいですよ?
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