海南島「従軍慰安婦」裁判控訴審の現状
一昨年(平成18年)8月に一審の判決で、戦中の被害の事実は認定しながらも、敗訴となった本件は、現在、東京高等裁判所第21民事部に係属しています。8人いた原告は既に2人他界しその相続人が訴訟承継、つまり裁判を受け継いで行っています。いわゆる慰安婦裁判ではこの海南島訴訟は最後の裁判となっており、その重要性を感じています。
ところで、一審で認定された事実の中には、被害女性らがPTSDにあたる障害に罹患している事実は認定されたものの、医師からの診断書が出ていないことから、PTSDという判断はできないとされたことから、弁護団は控訴直後から、精神科医による被害女性の診断を大きな目標としました。そして、昨年3月と6月の2回にわたり精神科医野田正彰氏に直接被害女性らを診断してもらうことができました。弁護団が理解していた以上の深い精神的被害をおっていることが明らかになりました。国際的な疾病基準であるICD-10によるところの「破局的体験後の持続的人格変化」という診断が6人中5人に対してなされました。これは、ナチスドイツ下での被害であるホロコーストからの生還者に見られるような、きわめて深刻な精神症状を呈するもので、症例が多いものではありません。同医師の診断によれば、被害女性らの精神被害は今もなお「燃えさかっている」状態にあり、悪夢を見たり、深夜目が覚めて眠ることができずに家族にも気づかれないようにベッドで朝を待つような生活がなお続いているというのです。
一方、法廷では、高裁裁判官らにも被害女性の実情を認識してもらいたく、証人申請をし、今年1月に被害女性ひとりの本人尋問を行うことができました。質問内容は、当時の被害事実に加えてその後の生活状況それに伴う精神的被害の実情でした。裁判官も現実に被害者の声を聞き、その救済に必要性を感じてもらえたのだと思います。裁判所からは、平成18年4月27日に出されたの別の慰安婦裁判の最高裁判決での「被害に伴う賠償は既に1972年に中国政府が放棄している」という結論を覆すことは難しいから、その「破局的体験後の持続的人格変化」という疾病がこの請求権放棄後に発生したという医学的な証明をしてほしいという課題を提示してきました。
高等裁判所もこのことを困難な課題だと理解しているようです。それでも控訴人側にそのことをあからさまに求めてくるところに、この事件の正義の所在が透けて見えます。
弁護団としては、この希有な症例である「破局的体験後の持続的人格変化」について、現在多数の国内の精神科医のほか、PTSDのバイブルともいわれる書物を執筆しているジュディス・ハーマン氏にも相談をし、裁判所に示唆的なアドバイスをいただいているのですが、やはり、当の被害者らの生活史を丁寧に調べなければ判断できないとの意見をいただいてます。
今後、裁判所に対しては被害女性らの再度の聞き取りと共に、彼女らの過去の精神状態を知るための周囲の方たちの聞き取りも不可欠になることを伝えていき、この事件のもたらした被害の実相を明らかにしたいと考えています。
高裁の裁判長がこの春に替わりました。この交代によって裁判が良い方向に向かっていくように、祈りつつ、働きかけていくことになります。みなさんの応援をぜひよろしくお願いします。
一昨年(平成18年)8月に一審の判決で、戦中の被害の事実は認定しながらも、敗訴となった本件は、現在、東京高等裁判所第21民事部に係属しています。8人いた原告は既に2人他界しその相続人が訴訟承継、つまり裁判を受け継いで行っています。いわゆる慰安婦裁判ではこの海南島訴訟は最後の裁判となっており、その重要性を感じています。
ところで、一審で認定された事実の中には、被害女性らがPTSDにあたる障害に罹患している事実は認定されたものの、医師からの診断書が出ていないことから、PTSDという判断はできないとされたことから、弁護団は控訴直後から、精神科医による被害女性の診断を大きな目標としました。そして、昨年3月と6月の2回にわたり精神科医野田正彰氏に直接被害女性らを診断してもらうことができました。弁護団が理解していた以上の深い精神的被害をおっていることが明らかになりました。国際的な疾病基準であるICD-10によるところの「破局的体験後の持続的人格変化」という診断が6人中5人に対してなされました。これは、ナチスドイツ下での被害であるホロコーストからの生還者に見られるような、きわめて深刻な精神症状を呈するもので、症例が多いものではありません。同医師の診断によれば、被害女性らの精神被害は今もなお「燃えさかっている」状態にあり、悪夢を見たり、深夜目が覚めて眠ることができずに家族にも気づかれないようにベッドで朝を待つような生活がなお続いているというのです。
一方、法廷では、高裁裁判官らにも被害女性の実情を認識してもらいたく、証人申請をし、今年1月に被害女性ひとりの本人尋問を行うことができました。質問内容は、当時の被害事実に加えてその後の生活状況それに伴う精神的被害の実情でした。裁判官も現実に被害者の声を聞き、その救済に必要性を感じてもらえたのだと思います。裁判所からは、平成18年4月27日に出されたの別の慰安婦裁判の最高裁判決での「被害に伴う賠償は既に1972年に中国政府が放棄している」という結論を覆すことは難しいから、その「破局的体験後の持続的人格変化」という疾病がこの請求権放棄後に発生したという医学的な証明をしてほしいという課題を提示してきました。
高等裁判所もこのことを困難な課題だと理解しているようです。それでも控訴人側にそのことをあからさまに求めてくるところに、この事件の正義の所在が透けて見えます。
弁護団としては、この希有な症例である「破局的体験後の持続的人格変化」について、現在多数の国内の精神科医のほか、PTSDのバイブルともいわれる書物を執筆しているジュディス・ハーマン氏にも相談をし、裁判所に示唆的なアドバイスをいただいているのですが、やはり、当の被害者らの生活史を丁寧に調べなければ判断できないとの意見をいただいてます。
今後、裁判所に対しては被害女性らの再度の聞き取りと共に、彼女らの過去の精神状態を知るための周囲の方たちの聞き取りも不可欠になることを伝えていき、この事件のもたらした被害の実相を明らかにしたいと考えています。
高裁の裁判長がこの春に替わりました。この交代によって裁判が良い方向に向かっていくように、祈りつつ、働きかけていくことになります。みなさんの応援をぜひよろしくお願いします。
鳥居正宏でございます。
少し古い資料になりますが、国際連合経済社会理事会諮問機関で、世界最大の人権擁護NGOである、アムネスティ・インターナショナル(国際事務局=本部:ロンドン)も、旧日本軍による従軍慰安婦被害者のかたたちに対して、国際的な連帯を表明する声明を発表しています。
2003年8月7日のアムネスティ・インターナショナル事務総長、アイリン・カーン氏の声明(アムネスティ文書番号:欠番)
すでにアムネスティ・ロンドンや日本支部のサイトからはこの声明は消滅しているかもしれませんが、私個人のホームページ『アムネス亭』では、今でも掲載しています。
『アムネス亭』内のこの声明ページ:
http://www32.ocn.ne.jp/~amnesty/35.html
『アムネス亭』トップページ:
http://www32.ocn.ne.jp/~amnesty/
もし、少しでもこの声明が裁判のお役にたてれば、アムネスティ会員として嬉しく思います。
そして、また、この声明が、被害を受けられたかたたちの励みになればと思い、コメントをさせていただきました。
鳥居正宏 拝