私たち弁護士・市民有志は、昨年8月の佐藤正久参議院議員の「駆けつけ警護肯定発言」以来、シビリアンコントロールの重要性と、現実の不徹底を痛感し、監視の目を持つことの必要性を感じました。
しかしながら、その後も社会の中では、この点が十分意識されずに来たことに憂慮し、2008年2月28日に集会を開き、シビリアンコントロールの必要性訴え、与党自民党と公明党に対して下記のような質問状を提出しました。
これについて期限は3月15日でしたが、公明党からは、この期限を守る15日に回答が来ました。しかしながら、自民党からは何らの回答も来なかったことをみなさんにお知らせします。
要望書
私は、下記公開質問について賛同し、自民党総裁及び公明党代表が真摯にかつ速やかに回答するよう要望します。
記
公開質問状
2008年2月28日
自民党総裁 福田康夫 殿
公明党代表 太田昭宏 殿
2008年2月28日緊急集会参加者一同
代表 弁護士 中山武敏
私たちは、平和を希求し、あらゆる戦争を廃絶することを願っている市民の有志です。
報道によると、自民党は自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法を今国会期中にも提案するために「国際平和協力の一般法に関する合同部会」の会合を開催し、公明党も、今月末には与党合同プロジェクトチームを設けて協議に参加すると聞いております。
私たちは、昨年8月、自衛隊のイラク派遣の先遣隊長・第一次復興業務支援隊長を務めた佐藤正久参議院議員が、下記のとおり、JNNの取材に対し、イラクでは、シビリアンコントロールを無視して違憲・違法な行為を行うつもりだった、すなわち、もしオランダ軍が攻撃を受ければ、「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだった旨発言したことについて、佐藤正久議員だけでなく当時の自民党総裁らにその真意を問う質問をしましたが、現在まで回答はされていません。
そもそも、佐藤正久氏を隊長とする部隊がイラクに派遣された際、部隊の編成母体となった北部方面隊派遣部隊の準備訓練では、「武器使用の権限」と題する文書に基づいて、「武器を使用する事についての積極的な意思がなければ、武器を持って救助に駆けつける事はかまわない」という方針に則って訓練が行われたとされています。
すなわち、その方針とは、①武器を持ってまず救助現場へ駆けつける、②それまでは武器を使用しない、③現場へ駆けつけてから(当然)攻撃を受けるから、そのときになって武器を使用する、というものだったとされています。
この方針は、下記の佐藤正久発言と符合するもので、下記佐藤正久発言は佐藤正久氏の個人的な見解などではなく、自衛隊としての方針であったことになります。
そうだとすると、自衛隊は、自ら攻撃されてもいないにもかかわらず、友軍援助を理由に戦闘に参加することを予定していることになりますが、その行為が憲法9条に違反することは、これまでの政府見解から明らかです。
そこで、私たちは、貴殿らに、憲法9条違反を企図する自衛隊を恒久法によって海外に派遣することをいかに考えるのか、1)~4)のとおり質問をさせていただくことを集会で決議しました。集会参加者全員の総意として質問いたしますので、3月15日までに杉浦ひとみ弁護士(東京アドヴォカシー法律事務所)に届くようご回答ください。
1)佐藤正久議員の予定していた「巻き込まれる」行動は、違憲違法なもので、シビリアンコントロールにも反するものだと思われますが、貴殿は違憲違法なもの、シビリアンコントロールに反するものだと考えますか。考えないという場合、その根拠をお示し下さい。
2)佐藤正久議員は、自民党推薦で国会議員となりましたが、貴殿は国会議員が今回のようなシビリアンコントロールを無視する発言をすることについていかなる見解をお持ちですか。
3)貴殿は、自衛隊が海外に派遣された場合、今後も、「巻き込まれる」行動をとることに賛成しますか。理由も併せてご回答ください。
4)イージス艦あたごの事故について、情報提供が真摯になされなかったことが明白となっています。このように情報提供が円滑になされない背景にはシビリアンコントロールを尊重しようという教育が自衛隊内でなされていないことがあるのではないかと思われます。自衛隊でのシビリアンコントロール教育の現状について理解されている限り、お答えください。
以上
公明党からの回答書
平成20年3月14日
弁護士 杉浦ひとみ殿 公明党本部
拝啓、益々ご繁栄の事とお慶び申し上げます。
先日、中山武敏弁護士より「2008年2月28日緊急集会」参加者全員の総意として、太田代表宛に「公開質問状」をご送付頂きました。別紙の通り回答をさせて頂きます。
何卒宜しくお願い致します。
敬具
回答
1)佐藤正久議員の予定していた「巻き込まれる」行動は、違憲違法なもので、シビリアンコントロールにも反するものだと思われますが、貴殿は違憲違法なもの、シビリアンコントロールに反するものだと考えますか。考えないという場合、その根拠をお示し下さい。
回答)ご指摘の佐藤議員の発言について、その真意を承知しておりませんが、自衛隊部隊による国際平和協力活動が、憲法及び関係法令を遵守しておこなわれるべきことは当然のことです。自衛隊部隊の活動している場所から遠く離れた場所にまで駆けつけ、攻撃を受けている他国の軍隊等を救援するために武器を使用するといった、いわゆる「駆けつけ警護」を行うことについては、現行法上認められていません。
2)佐藤正久議員は、自民党推薦で国会議員となりましたが、貴殿は国会議員が今回のようなシビリアンコントロールを無視する発言をすることについていかなる見解をお持ちですか。
回答)ご指摘の佐藤議員の発言について、その真意を承知しておりませんので、回答を控えさせていただきたいが、佐藤議員を含む、イラク派遣隊部隊指揮官等は、文民統制の下、法令上の要件を遵守して活動を実施したものと認識しています。
3)貴殿は、自衛隊が海外に派遣された場合、今後も、「巻き込まれる」行動をとることに賛成しますか。理由も併せてご回答ください。
回答)公明党は、今まで「巻き込まれる」行動をとることを賛成したことはありません。いわゆる「駆けつけ警護」を行うことは現行法上認められていません。当然のことながら、自衛隊による国際平和協力活動については、憲法及び関係法令を遵守しておこなわれるべきであると考えています。
4)イージス艦あたごの事故について、情報提供が真摯になされなかったことが明白となっています。このように情報提供が円滑になされない背景にはシビリアンコントロールを尊重しようという教育が自衛隊内でなされていないことがあるのではないかと思われます。自衛隊でのシビリアンコントロール教育の現状について理解されている限り、お答えください。
回答)自衛隊員がシビリアンコントロールに対し、正しい認識と十分な理解を
身につけることは重要であると考えます。防衛省・自衛隊においては、これまでも所要の教育を行ってきたと認識していますが、昨今の相次ぐ不祥事を見れば必ずしも十分であったとはいえず、「防衛省改革会議」や「文民統制の徹底を図るための抜本的対策検討委員会」などにおける議論を踏まえ、自衛隊員への一層の教育を行う必要があると考えます。
以上
しかしながら、その後も社会の中では、この点が十分意識されずに来たことに憂慮し、2008年2月28日に集会を開き、シビリアンコントロールの必要性訴え、与党自民党と公明党に対して下記のような質問状を提出しました。
これについて期限は3月15日でしたが、公明党からは、この期限を守る15日に回答が来ました。しかしながら、自民党からは何らの回答も来なかったことをみなさんにお知らせします。
要望書
私は、下記公開質問について賛同し、自民党総裁及び公明党代表が真摯にかつ速やかに回答するよう要望します。
記
公開質問状
2008年2月28日
自民党総裁 福田康夫 殿
公明党代表 太田昭宏 殿
2008年2月28日緊急集会参加者一同
代表 弁護士 中山武敏
私たちは、平和を希求し、あらゆる戦争を廃絶することを願っている市民の有志です。
報道によると、自民党は自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法を今国会期中にも提案するために「国際平和協力の一般法に関する合同部会」の会合を開催し、公明党も、今月末には与党合同プロジェクトチームを設けて協議に参加すると聞いております。
私たちは、昨年8月、自衛隊のイラク派遣の先遣隊長・第一次復興業務支援隊長を務めた佐藤正久参議院議員が、下記のとおり、JNNの取材に対し、イラクでは、シビリアンコントロールを無視して違憲・違法な行為を行うつもりだった、すなわち、もしオランダ軍が攻撃を受ければ、「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだった旨発言したことについて、佐藤正久議員だけでなく当時の自民党総裁らにその真意を問う質問をしましたが、現在まで回答はされていません。
そもそも、佐藤正久氏を隊長とする部隊がイラクに派遣された際、部隊の編成母体となった北部方面隊派遣部隊の準備訓練では、「武器使用の権限」と題する文書に基づいて、「武器を使用する事についての積極的な意思がなければ、武器を持って救助に駆けつける事はかまわない」という方針に則って訓練が行われたとされています。
すなわち、その方針とは、①武器を持ってまず救助現場へ駆けつける、②それまでは武器を使用しない、③現場へ駆けつけてから(当然)攻撃を受けるから、そのときになって武器を使用する、というものだったとされています。
この方針は、下記の佐藤正久発言と符合するもので、下記佐藤正久発言は佐藤正久氏の個人的な見解などではなく、自衛隊としての方針であったことになります。
そうだとすると、自衛隊は、自ら攻撃されてもいないにもかかわらず、友軍援助を理由に戦闘に参加することを予定していることになりますが、その行為が憲法9条に違反することは、これまでの政府見解から明らかです。
そこで、私たちは、貴殿らに、憲法9条違反を企図する自衛隊を恒久法によって海外に派遣することをいかに考えるのか、1)~4)のとおり質問をさせていただくことを集会で決議しました。集会参加者全員の総意として質問いたしますので、3月15日までに杉浦ひとみ弁護士(東京アドヴォカシー法律事務所)に届くようご回答ください。
1)佐藤正久議員の予定していた「巻き込まれる」行動は、違憲違法なもので、シビリアンコントロールにも反するものだと思われますが、貴殿は違憲違法なもの、シビリアンコントロールに反するものだと考えますか。考えないという場合、その根拠をお示し下さい。
2)佐藤正久議員は、自民党推薦で国会議員となりましたが、貴殿は国会議員が今回のようなシビリアンコントロールを無視する発言をすることについていかなる見解をお持ちですか。
3)貴殿は、自衛隊が海外に派遣された場合、今後も、「巻き込まれる」行動をとることに賛成しますか。理由も併せてご回答ください。
4)イージス艦あたごの事故について、情報提供が真摯になされなかったことが明白となっています。このように情報提供が円滑になされない背景にはシビリアンコントロールを尊重しようという教育が自衛隊内でなされていないことがあるのではないかと思われます。自衛隊でのシビリアンコントロール教育の現状について理解されている限り、お答えください。
以上
公明党からの回答書
平成20年3月14日
弁護士 杉浦ひとみ殿 公明党本部
拝啓、益々ご繁栄の事とお慶び申し上げます。
先日、中山武敏弁護士より「2008年2月28日緊急集会」参加者全員の総意として、太田代表宛に「公開質問状」をご送付頂きました。別紙の通り回答をさせて頂きます。
何卒宜しくお願い致します。
敬具
回答
1)佐藤正久議員の予定していた「巻き込まれる」行動は、違憲違法なもので、シビリアンコントロールにも反するものだと思われますが、貴殿は違憲違法なもの、シビリアンコントロールに反するものだと考えますか。考えないという場合、その根拠をお示し下さい。
回答)ご指摘の佐藤議員の発言について、その真意を承知しておりませんが、自衛隊部隊による国際平和協力活動が、憲法及び関係法令を遵守しておこなわれるべきことは当然のことです。自衛隊部隊の活動している場所から遠く離れた場所にまで駆けつけ、攻撃を受けている他国の軍隊等を救援するために武器を使用するといった、いわゆる「駆けつけ警護」を行うことについては、現行法上認められていません。
2)佐藤正久議員は、自民党推薦で国会議員となりましたが、貴殿は国会議員が今回のようなシビリアンコントロールを無視する発言をすることについていかなる見解をお持ちですか。
回答)ご指摘の佐藤議員の発言について、その真意を承知しておりませんので、回答を控えさせていただきたいが、佐藤議員を含む、イラク派遣隊部隊指揮官等は、文民統制の下、法令上の要件を遵守して活動を実施したものと認識しています。
3)貴殿は、自衛隊が海外に派遣された場合、今後も、「巻き込まれる」行動をとることに賛成しますか。理由も併せてご回答ください。
回答)公明党は、今まで「巻き込まれる」行動をとることを賛成したことはありません。いわゆる「駆けつけ警護」を行うことは現行法上認められていません。当然のことながら、自衛隊による国際平和協力活動については、憲法及び関係法令を遵守しておこなわれるべきであると考えています。
4)イージス艦あたごの事故について、情報提供が真摯になされなかったことが明白となっています。このように情報提供が円滑になされない背景にはシビリアンコントロールを尊重しようという教育が自衛隊内でなされていないことがあるのではないかと思われます。自衛隊でのシビリアンコントロール教育の現状について理解されている限り、お答えください。
回答)自衛隊員がシビリアンコントロールに対し、正しい認識と十分な理解を
身につけることは重要であると考えます。防衛省・自衛隊においては、これまでも所要の教育を行ってきたと認識していますが、昨今の相次ぐ不祥事を見れば必ずしも十分であったとはいえず、「防衛省改革会議」や「文民統制の徹底を図るための抜本的対策検討委員会」などにおける議論を踏まえ、自衛隊員への一層の教育を行う必要があると考えます。
以上
朝日新聞では、日本の「シビリアンコントロール」とは「文官統制」であると記事にしています。
http://www.asahi.com/special/080219/TKY200803090198.html
普通「シビリアンコントロール」とは、国民が選挙などによって統制できる政治家が軍事を統制することです。しかし日本では実情「文官統制」であり、何処に対しても責任を負わない官僚が自衛隊を統制していたわけで。
こうして見ると今回の情報管理のグダグダぶりは、最近各省で頻出している官僚の無責任ぶりが浸透していたから。まさしく日本式「シビリアンコントロール教育」が尊重・徹底されていたからとも言えますね。
冗談はともかく、情報収集・管理・伝達に不備があり、さまざまな情報が錯綜するというのは、危機管理官庁として致命的です。石破大臣には是非とも大胆な改革をお願いしたいものです。
>「武器使用の権限」と題する文書
2月23日付「案内 ~28日 「文民統制違反」抗議集会」における、「押しかけ参戦」の根拠がこれですか。「武器を使用する事についての積極的な意思がなければ」と書いてあるのに、始めから戦闘に参加するつもりなんだと決めつけるのは単なるアジテーションですね。
危機管理の根本は「最悪の事態の備えよ」です。自衛隊に関して、もう少し正しい理解に基づいた、現実的な議論をお願いしたいものです。
それにしても、そろそろ当選した佐藤議員に対するやっかみは、そろそろお辞めになったらいかがですか?傍から見ていても、みっともない。
文民統制の手段は、文民たる政治家の行使する人事権と、司法による処断です。佐藤議員は、大臣の人事権に服さないとも、裁判を無視するとも言っていないのです。
シビリアンコントロールとの関係では以下のように考えます。
シビリアンコントロールとは、
「軍隊に対する政治統制」とか「文民(官)による軍事の支配・統制」あるいは防衛白書によれば「軍事力に対する民主主義的な政治統制」を意味するとされており、私たちも概ねこのように理解しています。
この趣旨は、近代市民憲法においては、常備軍は民主政治にとって危険な存在であるという認識に基づいて、軍が政治に介入するのを防止するために設けられたものとされています。
そのために、今日では、具体的な制度としては、行政府の長が文民によって構成され、行政権の支配・統制に軍の首脳が服すること、軍事政策の基本、軍事予算などは議会が決定すること、などがあげられています。
このような前提からするならば、現場での情報が正確に報告されることは、当然これらの制度が予定していることで、今回のあたごの問題はこの制度の機能不全をもたらすと理解しています。
ただ、細かいことですが、「常備軍は民主政治にとって危険な存在」は、少し違う。基本的に軍というものは対外への暴力装置であり、どんな組織にとっても危険な存在になり得るものです。「民主」という括りは必要ないでしょう。現に中国でも、政府は躍起になって軍部への支配権を強めようとしているわけですし。
しかし、そこまで理解されていて「シビリアンコントロールを尊重しようという教育が自衛隊内でなされていないことがあるのではないか」と質問されるとは、これも失礼な言い方になりますが、少し間の抜けた質問か、それとも単に嫌みを言いたいだけの質問かと思います。
今回の事件・騒動の原因はというと、あたご艦内に限っては「気のゆるみ」。事故後の上層部の対応については、パニくって当然あるはずの対応マニュアルに沿っての行動がきちんと取れなかったこと。これも一種の「気のゆるみ」。
しかし、その「気のゆるみ」が起こる背景を無視して綱紀粛正・教育の徹底を叫ぶだけでは、精神論に陥った旧日本軍と同じ轍を踏むだけです。
私が4)の質問をするのなら「情報提供が円滑になされない背景には、日本におけるシビリアンコントロール=文官統制の欠陥があるのではないか」となるでしょう。
いる者です。先生はどのようにお感じになりますか。