風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

芸能と差別 ~五社協定~

2017-04-25 14:08:35 | 歴史・民俗





時代は第2次大戦後に飛びます。



日本の映画の黎明期には、俳優の引き抜き合戦が激しかったようです。スター級の俳優をごっそりと持っていかれ、倒産してしまった会社もあったとか。

戦後、日本の映画は、大手五社によって仕切られていくようになります。大映、松竹、東映、東宝、そして労働争議によって東宝から分かれた新東宝。


そこへ、新たな映画会社として日活が参入してきます。俳優が引き抜かれるのではないかと恐れを抱いた五社は、協定を結んで所属俳優が容易に他社へ移籍することを制限し、他者の映画への出演は、所属会社の許可なしに行ってはならないなど、俳優、スタッフを縛り付ける方策に出ます。



対日活対策として始められた協定でしたが、その後これに日活が加わることで「六社協定」となり、さらに新東宝が倒産したことで、また五社にもどるわけです。

協定の内容は時期によっても微妙に異なるようですが、例えば新人俳優などは、一定の帰還、大体3~4年くらいでしょうか、その期間内は他者に移籍することは厳禁とし、契約期間が終わった後も、3~4か月間は元所属会社に再契約の優先権を与えるとしています。

要するに、「他者への移籍なんか絶対させねーぞ、バーロー」と言っているのと同じなわけです。



他者の映画に出演する際には、所属会社の許可を必ずとる。一見まともそうな取り決めですが、スター級の俳優が他社の映画に出演することを許可されることは、ほぼあり得なかったと言っていい。なぜなら、その他社に出演した映画が大当たりしてしまったら、他社を儲けさせることになるし、それによってそのスター俳優が、移籍だ独立だ騒ぎ始めたら厄介なことになる。



俳優の自由意志、自由な活動欲求を徹底的につぶし、会社の儲けだけを考える。

映画会社は所属俳優を一個の所有物、商品としか見做していなかった。人間と思っていなかったといっていい。



女優の山本富士子さんは大映の専属俳優であり、大スターでしたが、フリーランスを宣言し、これが大映社長・永田雅一の逆鱗に触れます。

「あんな恩知らずな奴はおらん!」と、永田社長は山本さんを使わないように他社に回状を回し、山本さんは映画業界で完全に干されてしまう。

映画出られなくなった山本さんは、当時新進気鋭のテレビ業界に活路を見出し、出演したテレビドラマが大ヒット。見事人気女優に返り咲きます。

結局映画界は、自身で自身の首を絞める格好になったわけです。



俳優・津川雅彦さんもまた、五社協定の被害者の一人。日活との契約が切た津川さんは、松竹と契約を結ぶのですが、これが日活の猛抗議を受け、津川さんは事実上干された状態になってしまう。仕事がなくなり困窮した津川さんは、知り合いの監督のつてをたどって、テレビの時代劇に悪役として出演します。

それが初期の「必殺」シリーズでした。

それまでは「二枚目俳優」だった津川さんが、一転して悪役を演じる。相当な覚悟をもって演じたに違いなく、実際その強烈な悪役ぶりは話題を呼び、初期必殺を大いに盛り上げて下さいました。

これによって、その後の「性格俳優」津川雅彦が出来上がったといっていい。



ある女優さんは、映画で一度脱いだことがきっかけとなって、その後の出演作で監督から、色っぽいシーンを強要されるようになり、これを断ると「生意気だ!」と云われ、その後干されてしまった。

この窮状をマスコミに訴えても、「あなたのその態度が、生意気だと言われるんですよ」と、全く取り合ってもらえず、暗にその女優さんの方が悪者にされてしまった。

その女優さんは決して安易に脱いだわけではなく、その女優さんなりに作品への想いがあったからこそのこと。しかし一度脱いでしまえば「あいつはすぐ脱ぐ奴だ」という目で見られ、そういう仕事ばかりがくるようになる。

まあ、これなどは協定云々というより、女性芸能人に対する、芸能界内部、マスコミ、そして世間一般を通じての「蔑視」というものが感じられます。




この五社協定については、独占禁止法違反及び、労働基準法違反ではないかということで、国会でも問題となり、公取委が一応調査に乗り出すのですが、その動きはなんとも鈍いものがありました。結果公取委からの是正勧告を受けることになるのですが、その後も実情はほとんど変わることがなかったようです。時代が進むとともに、映画は娯楽の王様としての地位から陥落し、この五社協定の御蔭で各社の企画は著しく停滞し、斜陽に益々拍車をかけていきます。

それとともに俳優を縛る力そのものが後退していき、俳優たちはこぞって独立プロダクションを立ち上げていく。

石原裕次郎による「石原プロモーション」、三船敏郎による「三船プロ」、中村錦之助(後の萬屋錦之介)による「中村プロ」、勝新太郎による「勝プロ」等々、続々と立ち上げられていきました。



1971年、大映の倒産により、五社協定は自然消滅したようです。俳優たちは個人事務所を立ち上げたり、大手芸能事務所に所属して、活動を続けていくことになるのです。



さて、五社協定の消滅によって、俳優や芸能人たちは、果たして「自由」な活動ができるようになったのか?



そうは問屋が卸さないのが、芸能界の怖いところです。




ま~だまだ、続きます。






山本富士子





津川雅彦

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5 コメント

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Unknown (チャメゴン)
2017-04-25 22:20:07
芸能(映画)の裏事情ってえげつないですね〜〜。
山本富士子さん、とてもお綺麗ですね〜!!!
津川雅彦さんも、とんでもなくイケメンで!!!
芸能界に憧れていましたが、やっぱり入らなくて良かったなぁ〜…。笑
まだまだ続きがあるのですね! たのしみにしています!
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Unknown (薫風亭奥大道)
2017-04-26 04:39:16
チャメさん、芸能界は大変なところです。この世界で頑張っている人たちは凄いです。
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Unknown (玲玲)
2017-04-26 06:17:21
津川さんが格好良すぎる、でも今の方が好きな顔です。
芸能の差別、スタアでありながら、その実は縛られてばかり。
加賀まりこさんとかでも、だからフランス行ったりしちゃったんですね。
この記事から、のんちゃんや、アイドルに対しても繋がりますね。
ピンクレディとかも、スタアじゃなくて使い切られたようなことも。
あっ。清塚信也のガチンコ3B junior 見てないですか?彼女達はまだデビューはしていないですが、ピアノ一本で課題曲を挑戦しているんです。
芸能には、お金にならなきゃいけない、視聴率の数字を取らなきゃいけないって思うんですが、そうじゃないものが、ここにあって、まぁ、それでもきくちPとか周りは芸能としてお金にして彼女達が歌い続けることも考えてる、そして彼女達は自分達が恵まれている、とも思っている、とも思う関係に見えて、良かったら見て下さい。
たまに、見ながら号泣します。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2017-04-26 06:38:29
玲さん、ガチンコ3Bjuniorは、知ってるけど見たことはないなあ。3Bの子たちを見ていると、なんかハラハラしちゃうんだよね。一生懸命なのが分かるだけに、なんか色々心配になっちゃう。見ていられないところがあってね。
ももクロくらいにまでなれば、全然大丈夫なんだけど(笑)
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またまた私的な広報ですが。良かったら。 (玲玲)
2017-04-26 07:27:19
急成長してます、彼女達。4/1の映像です。良かったら観て下さい。

https://m.youtube.com/watch?v=zfOl-8mq3Ow

奥澤村。愛来、13歳と思えないライブアクトです。
https://m.youtube.com/watch?v=XLgDco5RzdI

ライブを観たら分かります by あーりん。

って、本当に本当にいつも、圧のあるコメント失礼します。
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