大前研一のニュースのポイント

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サブプライムローン問題の基本的な構造と、その解決策とは?

2008年02月12日 | ニュースの視点
今週は、先週の続きとして、サブプライムローン問題の基本構造から見直し、その本質的問題を浮き彫りにした上で、問題解決への糸口をどう見つけていくべきかということを中心に述べていきたい。

まず、サブプライムローンの基本的な構造を整理してみる。

そもそもサブプライムローンとは、住宅ローン会社が信用力の低い人に融資をするローンのこと。

この住宅ローンが投資銀行に持ち込まれて小口債券化して、MBS(モーゲージ証券)という金融商品になる。

MBSの段階であれば、住宅ローンを担保とした証券というシンプルな構造なのだが、ここから更に他の証券と組み合わせて再証券化が行われ、CDO(債務担保証券)という複雑な構造を持つ担保証券になる。

ここからCDOは、CDOファンドマネージャー間でも売買され、再証券化が繰り返し行われ、最終的に、投資家、ヘッジファンド、機関投資家が購入する段階では、元のサブプライムローン部分がどこに含まれているのか分からないほどに複雑な構造を持つ金融商品になってしまっている。

こうして、どの商品にサブプライムという地雷が埋まっているかも知れず、純粋な商品というものが判断できなくなってしまったというのが、今回のサブプライムローン問題の基本的な構造だ。

サブプライムという地雷は、サブプライムローンの総額と言われている300兆円もの巨額の金融商品の中に紛れてしまい、大きな危険性を孕んでいる。

この問題を解決するためには、地雷の雷管となっているサブプライム部分だけを抜き出すしかない。

では、具体的にはどのような方法が考えられるだろうか?唯一可能性がある方法が、スウェーデン方式だと私は思う。

スウェーデン方式とは、90年代商業用ビルが破綻して金融危機に陥ったスウェーデンで採用された方法で、国家の信用を抵当に銀行をエマージェンシー・ルームに収容して救済するという方法だ。

具体的には、自ら問題があると思う金融機関は政府に駆け込み救済を求める。

政府預かりにすることで流動性危機に陥らないような仕掛けを作っておいて、その上で政府監督の下、金融機関の債権、債務の関係を全て解体して整理するのだ。

今回のサブプライムローン問題について、この方法を実現しようとすれば、世界の各国がエマージェンシー・ルームを作り、一旦300兆円という巨額の債務を全て複数の政府共同で預かる仕掛けにし、サブプライム部分を抜き出して寄せていき、切り離すことだ。

1つ1つ安全性の高いものとそうでないものをきちんと分けて、小口債権化の源流を辿る作業を積み重ねるしかない。

ここまで作業した上で、サブプライム部分として浮き彫りになった30兆円については、世界で協力して泣いて捨てる。

30兆円であれば、今の世界経済で何とか押さえ込める規模だ。しかし、万一300兆円が爆発してしまったら、それこそ取り返しのつかない大問題になってしまうだろう。

このようなサブプライムローン問題の本質を見てくると、先月、米ブッシュ大統領が発表した減税による景気対策などは極めて効果が薄いと私は思う。

なぜなら、問題なのは、金融機関を含めた仕組みそのものであって、一般消費者は関係がないからだ。

問題の本質を見抜けずに現象ばかりに目を奪われていると、表面的な対策ばかりになってしまうということがよく分かるだろう。

今は米国当局も、あまりの問題の恐ろしさにスウェーデン方式を失念しているのかも知れない。

一刻も早く、問題の本質を掴み、問題解決へ向けて動き出してもらいたい。

2 コメント

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??? (高3)
2008-02-12 11:03:54
…多少分からない所がありますが,サブプライム,そうやって解決したらいいんですね?

ブッシュ大統領がやってる事笑っちゃいますね(笑)
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Unknown (ひろ)
2008-02-15 23:09:56
サブプライム問題が日本の金融機関に今後与える影響は?

3月末まで若干の円安が続きそうですか?

小麦高などインフレが続き内需型企業の売上が一時的に上昇すると思われますが株価の上昇に影響はありますか?
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