大前研一のニュースのポイント

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不動産・建設業界は、これからが本当の正念場だ

2008年09月09日 | ニュースの視点
東京都心で、上昇が続いていたオフィスビル賃貸料(募集ベース)に一転して先安観が広がってきた。

三鬼商事がまとめたところによると、指標となる大型ビルの平均募集賃料は3.3平方メートル当たり2万2860円となり、前月比0.03%(8円)下がったという。

下落幅は小さいが、前月まで最長で2年11カ月続いた上昇が途切れた形になった。

米サブプライムの影響もあって、不動産・建設業界は昨年の夏ごろから日本の景気悪化のけん引役になっていた。

そして、今やスルガコーポレーション、ゼファー、アーバンコーポレイションと相次いで新興不動産ディベロッパーが破綻するなど、業界全体が厳しい局面を迎えている。

しかし、今はまだ「限界の一歩手前」という段階だと私は見ている。「本当に」厳しい状況はここから先だ。

都心5区のオフィスビル空室率と平均賃料の推移を見てみると、2005年に約1万7千円だった賃料が徐々に上昇してきた。

そして、現在、1坪当たりの賃料は2万2千円前後になっているのだが、2万円を超える価格はまだ「高い」価格であり、賃料はさらに大きく下落する可能性が高いと私は見ている。

というのは、2007年秋ごろから3%未満だった空室率が4%を超える勢いで急激に上昇しているからだ。

空室率が4%を超えて5%に近づくという水準になると、加速度的に賃料に下がっていく可能性が高い。

5%前後の空室率になってくると、不動産屋が「割引キャンペーン」のような手段を用いて、お互いのテナントを引っ張ろうとする。その結果、賃料がどんどん下がっていくという悪循環に陥るケースが多いのだ。

そして、今後は、ゼネコン・不動産業者・ディベロッパーの全ての業界が一層厳しい状況に立たされることになると思う。

「せっかくビルを建てたのに入居者がいない」「もっと安い値段でなければ入居してくれない」といった事態に陥ることは容易に想像できる。

これはバブル崩壊後の1994年~1995年ごろに東京が経験した事態であり、また現在の世界経済の流れでいえば、すでにロンドン・ロサンゼルス・ヒューストンといった海外の都市で起こっている事態だ。

こうした状況の中でも、三井不動産が「ららぽーと」で実践しているように、自らが商業施設の運営・管理を行い、テナントを引っ張ってくることができるならば、何とか利益を確保することができるだろう。

しかし、大多数のゼネコン・不動産業者・ディベロッパーには、三井不動産のような真似はできない。

これから、工事料金も値下がりを免れない事態になれば、相当厳しい状況になるのは間違いない。

ゼファー、アーバンコーポに続き、東証1部上場企業の創建ホームズが破綻した。不動産・建設業界の不況は、これからが「本当に」厳しい局面になる。

かつてバブル崩壊から回復したという経験を活かし、いち早く立ち直れるように期待したいと思う。

1 コメント

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銀行は? (ks)
2008-09-12 08:13:35
アーバンのように裏社会との繋がりが表に出てしまった末に融資が打ち切られたのは仕方ないが…


銀行が失敗を恐れるあまり異常・過剰反応による貸し渋りや融資打ち切りは、銀行本来の業務を放棄しているのでは?


ダメな会社に市場から退場していただくのはいいが……………
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