大前研一のニュースのポイント

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維新の会の賞味期限は必然、民主党の空中分解

2013年05月17日 | ニュースの視点

日本維新の会の石原共同代表は、7日「党の旬が過ぎ、賞味期限が近づきつつある」として共同代表を務める大阪橋下市長の参院選への出馬論を唱えた。橋下氏は(国会議員と自治体首長を)兼職できるなら挑戦もあり得るが、市長を辞職することはできない」と出馬に慎重な姿勢を示している。

私は石原氏の発言は非常に無責任だと思う。橋下氏は出馬するべきではない。もし参院選に出馬すれば、せっかく進めている大阪都構想が無駄になってしまう。日本維新の会は、いずれにせよ賞味期限を迎えているので、橋下氏の出馬の問題は関係ないだろう。橋下氏はまだ若いから、急ぐ必要はなく、今は大阪都の実績を積むことが大切だと思う。

民主党は7日、憲法改正の発議要件を定める96条を他の条文より先行して改正することに反対する方針で一致した。海江田代表や桜井政調会長は96条の改正自体に反対する姿勢を示していたが、党内の改憲積極論に配慮し、改正の是非に踏み込むのを避けた形だ。

みんなの党、維新の会、自民党、最後には公明党も憲法改正には同調するだろうから、完全に民主党が空中分解する図が出来上がってしまった。今回の96条問題の是非は民主党が終演を迎える「踏み絵」みたいなものかも知れない。

憲法96条の改正はもとより、そもそも憲法とはどうあるべきか?どのようにゼロベースで考えるべきか?という点については、拙著「平成維新」(1989年)を読んで頂きたいと思う。他国の参考になる憲法から、ゼロベースで私が憲法を考えるならどうするか?という点まで全て書いてある。

社会保障・税の共通番号(マイナンバー)法案が9日、与党や民主党などの賛成多数で可決された。同日中に参院に送付され、今国会中に成立する見通しだ。2016年1月から年金などの社会保障給付と納税を1つの個人番号で一元管理する共通番号制度が始まる予定とのことだ。

このようなものをそのままニュースとして報道するとは、今の新聞記者の勉強不足さが表れていると私は思う。本来、政府がどのようなサービスを提供すべきかを議論した上でマイナンバーを活用するとどのようなコストが削減され、どのようなサービスが向上するのかを考えるべきだ。現状のサービスの限界は何なのか?さらにこういうサービスを追加してみてはどうだろうか?そのような議論は全く行われていないだろう。

政治家も各種業界から接待せれるがまま、「マイナンバー」と言われているだけで、全く上記のような発想を持っていないと思う。全く機能しなかった住基ネットの延長線にあるマイナンバーなど、お話にならん。私はこの点について、デンマークや韓国など他国の事例と比較して何が問題なのかということを数年前からずっと指摘している。

パスポートの電子申請の失敗などと全く同じ結末を迎える気がしている。ICカードそのものに付加機能を持たせるなどしていれば、まだ将来的な対応が出来たかも知れないが、そのような設計にもなっていないようなので、かなり厳しい状況だと思う。

同じように全く制度としての根本が議論されていないのが、高校の授業料実質無償化という制度だ。文部科学省は、民主党政権が導入した高校の授業料の実質無償化について、新たな給付型奨学金の創設などに財源を活用したいとして、世帯の年収で900万円を軸に所得制限を設ける方向で調整に入ったとのことだ。

そもそも高校を無償化する理由・大義名分が全くないから、その点から考え直すべきだろう。もし考えなおすなら、高校を義務教育にするかどうかだ。義務教育とするなら理解出来る。その場合には、同時に成人年齢を18歳とすることも定めるべきだろう。

世帯年収の900万円というのも安直過ぎる。おそらく生活保護の時と同様、偽装離婚などの問題が出てくるだろう。もし年収によって差別化するなら、900万円で一線を引いてしまうのではなく、500万円で半額負担、1000万円以上なら無保証など、せめて段階別にするべきだ。

今回の世帯年収900万円というのは少しズレるかも知れませんが、基本的に日本の政治家の頭の中には「選挙」しかありませんから、困ったときには「金持ち」にしわ寄せがいきます。金持ちの割合は少ないから、選挙での影響が少ないのだ。そのような乱暴な発想を続けている限り、日本にまともな制度が生まれてくることはないと私は思う。


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