大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

日本企業は苦労三昧/ソニーの課題はハード部門/NECは途上国の草刈り場

2012年02月14日 | ニュースの視点
上場企業の業績が減速している。円高やタイの洪水、欧州危機が輸出産業の利益を圧迫し、2012年3月期の連結経常利益は前期比21%減となる見通しだ。一方、通信や消費関連など内需型企業の業績は底堅く、資源高を追い風に商社は最高益が相次いでいる。

最近のビジネス書では、日本企業が抱える「6重苦」と称して現在の状況を説明していることがある。円高、法人税、電気料金+供給、環境問題、貿易自由化の遅れ、労働規制という6重苦が紹介されているが、最近の日本企業はいじめられてばかりだ。私に言わせれば、6重苦どころか、「∞(無限大)苦」であって、他にもいくつでも「苦」を挙げることができる。

空洞化による影響も大きいだろうし、自然災害については未だ予断を許さない。7年で7人もの首相が変わっているという政治不安もあるし、少子高齢化、予算不足など、各業界の事情も含めて考えれば、いくらでも列挙することができる。

このような厳しい状況だからこそ、かつて日本国内で産業を創り上げた時のように、世界の中で元気な場所において、日本の経営者は同じようなことを再現するべきだと私は強く思っている。

ソニーは2日、2012年3月期の連結業績で、純損益が2200億円の赤字に拡大するとの見通しを発表した。また、パナソニックは3日、2012年3月期の連結純損益の赤字が過去最大の7800億円になるとの見通しを発表している。

ストリンガー氏の後任としてソフト部門出身の平井氏をCEOに迎えたソニーだが、テレビ部門を筆頭に経営課題・問題は、ハード部門にあるので、前途多難かも知れない。ソニーの没落は、複合会社が陥る典型的なパターンだ。成績の良い部門の人間がトップに立ち、それ以外の部署をないがしろにする。結果、会社全体としては良い方向へ向かわず、そのうちに業績の良かった部門が傾き始め、会社全体が崩れてしまうという流れだ。

今のソニーを回復させるためには、保守本流を歩いてきたような人材を引き立てて行くしかないと思う。そのためには相当に若い世代から抜擢する必要もあるのではないかと私は見ている。

NECは26日、国内外の計1万人を削減する合理化計画を発表した。また、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先月30日、NECの長期格付けを現在の「BBB」から「BBB-」に1段階引き下げた。

国内で5000人、海外で5000人の人員削減という、あまりにも大規模な削減プランに、世界でも「NECショック」として報道されている。格付けも「BBB-」に下がってしまったが、さらにもう1段階下がってしまうとジャンク扱いだ。

業績推移を見ても、この数年はずっと赤字が続いている。それでも売上高が3兆円あるのに時価総額がたった4000億円というのも何とも情けない話だ。率直に言って、今後NECが自力再建をすることは難しいと思う。

しかし、途上国の企業から見ると、絶好の「M&A対象」になる。インド、中国、ロシアなどの企業がNECを買収すれば、業績を劇的に回復させることは可能だろう。今後、NECは途上国の時価総額が大きい企業の草刈り場と化していく可能性が高いと私は感じている。

2 コメント

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泥臭さがあれば (かぶとうし塾)
2012-03-07 12:06:02
NECのホームページ(http://www.nec.co.jp/)を覗いてみましたが、できることはそれなりに出来ていると思います。

富士通のような泥臭さがあれば、それなりに復活する気がする。
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ドル円は現在78.92円で推移 (上石)
2012-02-16 22:59:06
 円高対策が政治や日銀にないのが現状だ。
 16日にやっと追加金融緩和だが、それは国債消化のためだ。それ以前は77.59円で、決定後は77.75円。インフレ目標は「1%」だけ。
 円高で外需がダメなら、工場のある地方はとどうなるのか?
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