大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

決済通貨としての円は下落。ドルは60%を占めるも、アメリカ経済にリスクあり

2007年07月10日 | ニュースの視点
25日、欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏以外の国・地域の外貨準備高に占めるユーロの割合が2006年末に25.8%となり、04年末に比べ約1ポイント上昇したと発表した。

おそらく、今後の予測としては、このままユーロが約30%まで伸び、ドルは60%を切るくらいまで推移すると私は見ている。

日本円は、数十年ぶりにポンドを下回り、3%程度にまで落ち込んでいる。情けない限りだ。

この問題と日本が抱える800兆円を超える債務との関連性を論じる人がいるが、これは全く別問題だ。

日本の債務は外国に対するものではなく、主に国債という形による国民への借金だから、諸外国との取引を行う上では全く問題がない。

実は、債務国としてリスクを抱えているのは、日本ではなく、アメリカだ。

私は、かつて「米国がブラジルになる日」ということを提言したことがある。

それは、米国の外貨準備高が、かつてのブラジルと同じように、世界の国々からの借金で成り立っているため、このままではブラジルと同じ道を進む危険性があると警鐘を鳴らしたものだ。

そして、今、米国の現状は借金まみれで、もうこれ以上は外貨を借りられないといった状況になっている。

この状況の中で、世界がドルを決済通貨・準備通貨として認めなくなったとき、米国経済は甚大なる被害を受けてしまう。

ドルが決済通貨の約60%を占めているので、その影響は米国経済だけでなく全世界に及ぶ。

そうならないために、今は米国を鼓舞しつつ、何とか軟着陸を目指しているという状況だと私は見ている。

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