大前研一のニュースのポイント

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丸裸になった暫定税率の中身。道路特定税源の今後は?

2008年04月15日 | ニュースの視点
ガソリンの税率が下がったことを受け、暫定税率を復活させる租税特別措置法改正案に関する与野党の政策協議の機運も急速にしぼみつつある情勢。

この点について、民主党の小沢代表は衆議院での再可決に対し、「このまま下げてくれとの国民の意見が多ければ非常に難しいのではないか」と発言している。

今回のガソリン価格の下落を契機に、改めて暫定税率が適用される道路特定財源の内訳を見てみた私の正直な感想は、「暫定税率と言いつつ、こんなに図々しいことをやっていたのだな」というものだ。

最も額が大きい揮発油税では、本来の税率が24.3円(税収1.4兆円)に対し、暫定税率は48.6円(税収2.83兆円)と1兆円以上の大きな差額になっている。

そして、その差額合計は2.52兆円にも達するのだ。

これらが全て道路に使われているなどというのは、適切でないと考える方も多いだろう。

今回、暫定税率の中身が丸裸になったことで、暫定税率を作ってまで道路を作る必要が無いということが今後証明されていくだろうと思う。

これは非常に良いことだ。

これまでの利権を守りたい道路族と抜本的に改革を主張する民主党。

そして、その両者の間に立つ福田首相。

道路特定財源をめぐる問題の今後の展開は、この3者のバランスをどう見ていくかという点がポイントになるだろう。

私が思うに、今後の道路特定財源の論点となる「一般財源化」「暫定税率」「道路整備の中期計画」のいずれを見ても、

道路族の主張は自分たちの利権確保だけを主眼にしたもので、国民にとっても聞き入れがたいものばかりだ。

一方、ガソリン価格25円値下げという主張をしていた民主党には、今国民からの支持をもあり、追い風が吹いていると感じているだろう。

しかし、民主党はこのあたりを引き際と考えた方が良いと私は思う。

例えば、民主党の前原議員は暫定税率の問題に対して、「環境税」の適用などの案を提示しているが、これなど全く別問題として論じるべきだと思う。

今ある一時的な勢いに任せて民主党が暴走するのは避けてもらいたいところだ。

旧来の利権確保を狙う道路族と、勢いで抜本解決策を叫ぶ民主党。

福田首相が、この両者の間に立ち、リーダーシップを発揮してまとめていくことが、この問題の解決策としては最適ではないかと思う。

福田内閣支持率は厳しい局面を迎えているが、ここで福田首相には、日本の首相としてのリーダーシップを大いに期待したいところだ。

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