おそるべきものを見た。
勿体ぶる必要はないから、ちゃんとタイトルを書きつけて、これをわが2011年の重要な記憶として、末永く脳内に留めておこう。モンテ・ヘルマン21年ぶりの新作『果てなき路』。あの『断絶』の、『コックファイター』の、「隠逸の天才」とでも呼ぶべきモンテ・ヘルマンに、「新作」などという場違いにも思えるものがコロリと出現し得たことに、不意を突かれてしまう。
上映会場と告知された場所へ、文字通り小走りとなって駆けつけた私は(試写場所を間違えていたのだ)、暗闇の中で四角いスクリーンが、モンテ・ヘルマンの時ならぬ復活にあたかもおののいたかのように、妖しく明滅するのを見た。最近のインディペンデント系の映画で猛威をふるうデジカメ、CanonのEOS 5Dは、ガラパゴス化した日本のテクノロジー産業が世界に提供しうる数少ない貢献物だが、モンテ・ヘルマンがこれを使うと、おそるべき画面の連鎖となってドロドロに流れ出す。
だが、正直に白状すると、私は画面で起こっていることのすさまじさに圧倒されはしたものの、じっさいどのような物語が語られているのか説明する自信がないのである。いったいこの人物は善人なのか悪人なのか、事態は好転しているのか悪化しているのかさえよくわからない。試写室で画面に視線を投げる他のお歴々は、すべてを把握しているのだろうか? 私だけが取り残され、迷子になってしまったのか? 焦燥感が募る。
ようするにこれはフィルム・ノワールなのだろう。『三つ数えろ』にしろ『キッスで殺せ』にしろ、フィルム・ノワールは私の頭では理解できないケースが多い。今作にも、ファム・ファタールのような謎の女(シャニン・ソサモン)が出てきて、主人公の神経をずたずたにしていく。『ミツバチのささやき』をDVDで見終えて落涙するシャニン・ソサモンを見て、『女と男のいる舗道』のアンナ・カリーナを少し思い出した。
『果てなき路』は2012年1月14日(土)より、シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷)ほか全国順次公開
http://www.mhellman.com/
勿体ぶる必要はないから、ちゃんとタイトルを書きつけて、これをわが2011年の重要な記憶として、末永く脳内に留めておこう。モンテ・ヘルマン21年ぶりの新作『果てなき路』。あの『断絶』の、『コックファイター』の、「隠逸の天才」とでも呼ぶべきモンテ・ヘルマンに、「新作」などという場違いにも思えるものがコロリと出現し得たことに、不意を突かれてしまう。
上映会場と告知された場所へ、文字通り小走りとなって駆けつけた私は(試写場所を間違えていたのだ)、暗闇の中で四角いスクリーンが、モンテ・ヘルマンの時ならぬ復活にあたかもおののいたかのように、妖しく明滅するのを見た。最近のインディペンデント系の映画で猛威をふるうデジカメ、CanonのEOS 5Dは、ガラパゴス化した日本のテクノロジー産業が世界に提供しうる数少ない貢献物だが、モンテ・ヘルマンがこれを使うと、おそるべき画面の連鎖となってドロドロに流れ出す。
だが、正直に白状すると、私は画面で起こっていることのすさまじさに圧倒されはしたものの、じっさいどのような物語が語られているのか説明する自信がないのである。いったいこの人物は善人なのか悪人なのか、事態は好転しているのか悪化しているのかさえよくわからない。試写室で画面に視線を投げる他のお歴々は、すべてを把握しているのだろうか? 私だけが取り残され、迷子になってしまったのか? 焦燥感が募る。
ようするにこれはフィルム・ノワールなのだろう。『三つ数えろ』にしろ『キッスで殺せ』にしろ、フィルム・ノワールは私の頭では理解できないケースが多い。今作にも、ファム・ファタールのような謎の女(シャニン・ソサモン)が出てきて、主人公の神経をずたずたにしていく。『ミツバチのささやき』をDVDで見終えて落涙するシャニン・ソサモンを見て、『女と男のいる舗道』のアンナ・カリーナを少し思い出した。
『果てなき路』は2012年1月14日(土)より、シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷)ほか全国順次公開
http://www.mhellman.com/
モンテ・ヘルマンの「新作」、イメージフォーラムの予告編で見て、自分もぶっ飛んでしまいました。お話を聞いていると、やはりとんでもない映画みたいですね。期待が高まります。
ウィキペディアの日本版にモンテ・ヘルマンの記事がなかったので作ったのですが、ほとんど参考文献にするようなものがなかったので苦労しました。そういうのもいかにもモンテ・ヘルマンらしいというか何と言うか。
失礼しました。
ウィキペディア日本版の記事、拝読しました。作成をご苦労様です。『果てなき路』の公開を機に『断絶』もリバイバルされますし、私たち日本国内の観客にはおなじみでない1960年代の作品も、見られるようになるといいですね。
デジタルの画質の点で私も同じ感想を抱きました。優れた作家がこんなすごい画を見せてくれるならば、デジタルも悪くないなとさえ思いました。冒頭の夜は「アメリカの夜」でしょうね。
『ミツバチのささやき』鑑賞シーンもおっしゃるとおりで、主人公にグッとくるのが先ですね。全体的に見て、主人公の映画へののめり込み具合がいい。シネフィル監督の映画撮影日誌みたいな映画は、たいがい自家中毒に陥りそうなもんですが、やはり作り手の聡明さや人徳みたいなものが反映したなあと思うんです。こういうのは才能の部分ですよね。