ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

老人施設のマダムたち

2014-01-05 00:47:02 | 日記
オープンして一ヶ月。
いつの間にか、施設にマダムの会ができあがった。

SさんもKさんもAさんもHさんも
ともに認知症を抱えた70~80代の女性。
その4人が、いつも食堂で一緒にご飯を食べている。
みなさん情報をインプットするのが得意でないから
毎日一緒にご飯を食べていても
名前を覚えるどころか
お互いに「近くに住んでいるらしいお友達」という認識しかないらしい。
(実は皆さん廊下に沿ってお隣、あるいは1、2軒先という至近距離に
お住まいなのだが)

そのマダム・テーブルに
今日の昼、新入りさんが同席した。
脳梗塞による半身麻痺で
言葉がうまく出てこない70歳の女性・Tさんである。

私の同僚がいつも一人でご飯を食べているTさんを気遣って
その席に案内したのだろう。

大丈夫かな? Tさん、仲間に入れてもらえるかな?
ちょっと心配だった。

ところが車椅子で移動せざるを得ないTさんを
食堂から居室にお連れしようと食堂に行ってみたら
彼女を囲んでなんだか盛り上がっている。

みれば、Tさんが食後に服用する錠剤があまりに大きくて
これでは飲めない、かわいそうだ、なんとかしてあげなくちゃ!と
スプーンでそれを割ろうとしているのだ。

あとは私がやりますからと解散していただいたが
事務所で細かく粉砕したお薬をTさんに飲んでいただいたあとで
ふわ~っと、心が温かくなる。

いろんなことを忘れてしまっても
人を思いやる気持ちは忘れないんだなあ。
いや、介護される立場になって
反対に、人を思いやる気持ちが大きくなるのかもしれないなあ。

年末ギリギリに近畿地方から入居されたOさん(80代・男性)も
奥様に言わせれば「女房に手を上げるワンパク夫」だったらしいが
援助のたびに、私たち職員に「ありがたい」と手を合わせる。
そして傍らに寄り添う妻に向かって
「お前や私のような老人のために、この方々は働いてくださっているんだ」
などと仰る。

ラクな仕事ではない。
もちろん、儲かる仕事ではない。
中には理不尽な怒りをぶつけてくる方もいるし
泣きたくなることだって少なくない。

でも、虚飾のない思いやり、優しさ、感謝の気持ちに触れられるこの仕事。
なんて素敵なの!?
思いがけず飛び込んだ業界だけれど
この年でここに来たのは、正解だったように思う。
(これから先、仕事の不満を言うかもしれません。
辞めたい!と泣き言を言う日が来るかもしれません。
そのときは、どうか悪しからず・・・)



おっさん、始動!

2014-01-04 00:34:08 | 日記
父のことや仕事のことで忙しく
少し薄らいでしまった感のあるおっさんの存在であるが・・・。

お伝えしよう。
彼は明日から、いよいよ介護職に就く。

就活の結果、いくつかいただいた採用通知。
その中から彼が選んだのは
夜勤のないデイサービスでの仕事である。

夜勤がないと給料安いよと、さんざん言ったのだが
私を見ていて、夜勤にビビッたらしい。
(今更ながら、この小心者め!!!)
いまに「やっぱ、給料安いから・・・」と言い出すかもしれないが
まあ、とりあえずはそこで技術や知識を
習得してくればいいさ。
だけど、入浴介助の多いデイサービス。
それはそれで大変だぞ~。
ジジイのキミに務まるかな?

といった具合に、おっさんの再就職を高見から見ている私。
結婚生活30年
ようやく賢く、偉く、そして夫より収入の高い妻の座に就いて
ふんぞり返っている次第である。

あっはっは!!!

きっと、この日を忘れることはない。

2014-01-02 23:48:17 | 日記
年明けの夜勤を
私はほとんど施設にご入居のNさんと過ごした。

Nさんについては12月10日付のブログでも少し触れたが
下半身の自由が利かず、右手は拘縮
さらに難聴で、尿管にはカテーテルをつけている
88歳の男性である。

何ゆえ彼とともに年を越したか。
親しんでいただいてはいるが
そうするほどの仲良しというわけではない。

年が変わったばかりの午前0時
私はちょうどNさんの体位交換(床ずれ防止)をしようと
彼の居室がある1階までエレベーターで向かった。
扉が開くと、廊下の奥のほうから悲鳴が。
「助けてくださ~い! 助けてくださ~い!」
紛れもなくNさんの声である。
慌てて走り、お預かりしている鍵でNさんの部屋に突入。
電気をつけてみると
Nさんがベッドから転落しているではないか。

うわ、大丈夫ですか? 痛いところはないですか?

確認したところ、幸いなことに怪我も打撲もない。
しかし、である。
転落した大柄男性Nさんを
しかもさまざまな障害を抱えているNさんを
私一人の力でベッドに引き上げることはできない。
ベッドに上がり仁王立ちの姿勢で引き上げようと試みたが
どう踏ん張っても無理である。
一人夜勤。応援は頼むべくもない。

では、どうする? どうするよ、わたし。

こうなったら床で寝ていただくしかない。
ならば、風邪を引かせないように
抱えている足の痛みを悪化させないように
それを第一に考えるべきだろう。

毛布を何枚も重ねて敷布団代わりにし
掛け布団のほか、部屋にあるバスタオルや洋服を総動員して
Nさんの身を覆い
それでも不安で離れることができず
曲がったまま伸ばすことができないNさんの両足をひざに乗せて
祈るような気持ちでマッサージを続ける。

いくらか落ち着いてイビキをかき始めたNさんの口から
「ありがとう、ありがとう。○○さん(私の実名)、ありがとう」と
うわごとのような言葉が繰り返される。

やめて、やめて! ありがとうなんで言わないで!
私の介護力が未熟だから
アナタをこんな冷たい床に寝かせることになってしまったんだから。

マッサージを続けながら
非力な自分が情けなくて泣けてきた。

しかし、ここで泣いているばかりにもいかない。
夜中だが、他にも排泄介助やらナンやらで
私を待っている人たちがいる。

Nさんの様子を見守ったりマッサージをしたりする合間に
他の利用者さんのお部屋を訪問し
気がつけば、元日の朝を迎えていた。

その後、早朝出勤してきた同僚と二人がかりで
Nさんを無事ベッドに戻すことができたが
は~っ、何日分のエネルギーを費やした夜勤だったことか。

2014年の幕開け。
この日を忘れることはないだろう。