シュウ子は取り憑かれたように、一人の老婆を追っている。
シュウ子はその老婆ハナコが
自分の通帳やカード、ワニ革の財布を盗んだ犯人だと確信し
毎日、捕まえるスキを狙っている。
どちらもひどい認知症だが
シュウ子はこのところ物盗られ妄想が激しくなり
普段つきあいのないハナコを突然犯人扱いしはじめた。
しかしハナコは穢れを知らない童女が
いきなり7、80年の歳月を飛び超えてしまったような
純粋無垢なおばあさん。
まさか自分に窃盗の容疑がかけられているとも知らず
毎日タリラリラ〜ンと生きている。
シュウ子はそんなハナコを
食堂のドアの陰から睨み
共用トイレの前で待ち伏せし
深夜、部屋を探して徘徊し・・・
それは不気味な行動をとり続けているのである。
サスペンスドラマのようだが
これ、我が高齢者住宅の現実。
私たちは毎日
ハナコを守るのに必死だ。