――人を羨むなら、その人の苦労をも羨みなさい。
ずいぶん前に読んだ江原啓之さんの著書に
そんな一節があった。
忘れっぽい私が記憶している、貴重な言葉だ。
さて、同じ職場にいるケア・マネージャーのSが
明日からマレーシアに旅行するという。
仲間そろって「いいなあ!」。
一緒になってその言葉を口にした私だが
言った後で、ふと、江原さんのあの一節が脳裏によみがえる。
現在50歳のSは
5年前に大好きな大好きなご主人と死別した。
遺された息子は対人恐怖症でなかなか定職につくことができない。
娘はご主人が健在なころに家を飛び出し、キャバ嬢になった。
生活のために猛勉強してケア・マネージャーの資格を取った彼女だが
心の穴は仕事では埋められなかった。
娘がキャバ嬢をやめて家に戻ってきたのは3年前のことだった。
「もう一度勉強しなおして看護師になる」
高校中退の娘は新たな道を歩み始めたばかりか
いまだに亡き夫を想って沈みがちな母にプレゼントを差し出す。
「海外旅行に連れて行ってあげる!」
キャバ嬢時代に貯めこんだお金で
母親を海外旅行に連れて行ってやろうというのだ。
1回目に行ったのは
ご主人が生前「一生に一度は行ってみたい」と言っていた“オーロラを見る旅”。
そして今回が、3回目の母娘海外旅行となるのである。
「もうお金がなくなるから、今回で最後だよ。
次からはワリカンね」
そう言われたらしいが、それでも彼女は嬉しい。
もちろん、来年からは自分の分は自分で払ってでも
娘と海外を旅したいと願っている。
今年に入って、彼女はリュウマチで苦しんでいる。
仕事中も、時折、身体のこわばりによって机に突っ伏している姿を見かける。
そんなSの明日からの旅行。
事情を知っていれば、羨ましい!だなんて、軽々しくは言えないわけで…。
帰り際、バタバタしていて彼女に「行ってらっしゃい」が言えなかった。
だから今ここで
「行ってらっしゃ~い。どうかどうか、楽しんでおいで~」。
ずいぶん前に読んだ江原啓之さんの著書に
そんな一節があった。
忘れっぽい私が記憶している、貴重な言葉だ。
さて、同じ職場にいるケア・マネージャーのSが
明日からマレーシアに旅行するという。
仲間そろって「いいなあ!」。
一緒になってその言葉を口にした私だが
言った後で、ふと、江原さんのあの一節が脳裏によみがえる。
現在50歳のSは
5年前に大好きな大好きなご主人と死別した。
遺された息子は対人恐怖症でなかなか定職につくことができない。
娘はご主人が健在なころに家を飛び出し、キャバ嬢になった。
生活のために猛勉強してケア・マネージャーの資格を取った彼女だが
心の穴は仕事では埋められなかった。
娘がキャバ嬢をやめて家に戻ってきたのは3年前のことだった。
「もう一度勉強しなおして看護師になる」
高校中退の娘は新たな道を歩み始めたばかりか
いまだに亡き夫を想って沈みがちな母にプレゼントを差し出す。
「海外旅行に連れて行ってあげる!」
キャバ嬢時代に貯めこんだお金で
母親を海外旅行に連れて行ってやろうというのだ。
1回目に行ったのは
ご主人が生前「一生に一度は行ってみたい」と言っていた“オーロラを見る旅”。
そして今回が、3回目の母娘海外旅行となるのである。
「もうお金がなくなるから、今回で最後だよ。
次からはワリカンね」
そう言われたらしいが、それでも彼女は嬉しい。
もちろん、来年からは自分の分は自分で払ってでも
娘と海外を旅したいと願っている。
今年に入って、彼女はリュウマチで苦しんでいる。
仕事中も、時折、身体のこわばりによって机に突っ伏している姿を見かける。
そんなSの明日からの旅行。
事情を知っていれば、羨ましい!だなんて、軽々しくは言えないわけで…。
帰り際、バタバタしていて彼女に「行ってらっしゃい」が言えなかった。
だから今ここで
「行ってらっしゃ~い。どうかどうか、楽しんでおいで~」。