ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

キツネ憑きの夜

2014-10-26 22:48:55 | 日記
ミヨに狐が憑いた。
そんなはずはないが、そうとしか思えぬ奇怪なコールが
昨夜、夜勤の私を脅かしたのだった。

※ミヨについては10月4日付けの「ミヨの生きる力」参照。

日付が変わる前辺りから始まったミヨの迷惑コール。
「隣のおばあさんがうるさい」
「寂しい」
「私のお母さんはどこへ行ってしまったのかしら」
事務所でPC入力しながら
ときには他の利用者のお尻を拭きながら
はいはいと傾聴に徹していた私であったが
午前4時を過ぎてからのミヨの“憑依”に
私は震撼とする。

「このバカ女、クソ女! 早く出て行け~~~!!!」

電話(緊急コール)の向こうで叫んでいるのは、ミヨだ。

あ、あの、ミヨさん、どうされました?

しかしそんな問いかけに耳を貸さず、ミヨは叫び続ける。

「なんて図々しい奴だ。ここは私の家なのに
勝手に家族を連れて入り込んできやがって
そういうのを何て言うか知ってるか?
不法侵入って言うんだよ。
さあ、早く出て行け~!!!」

ミヨさん、ミヨさん
ここは事務所ですよ。私は事務所の人間ですよ。
落ち着いてください。

それでも止まらない絶叫。
狐のようにつり上がった目、逆立ったマントヒヒ・ヘアのミヨが
きっと、電話の向こうにいるのだろう。
激しい罵声・怒声と想像したミヨの姿に
私は震えた。

こわいよ、こわいよ、ミヨさん、こわいよお!!!

だがこんなコールが続いては仕事にならない。
意を決し、訪室。なんとか寝かせなくては。

ベッドの傍らでミヨの手をさすりながら
ミヨさん、どうされました?
何か怖い夢でも見ました?
そう話しかけると
ミヨは憑依が解けたのか
いつもの穏やかな笑顔で言った。

「あら、あなた今日も夜のお当番なの? 大変ねえ。
あなた、働きすぎじゃない? 少し寝たほうがいいんじゃない?」
さらに
「私なんだかノドがカラカラ。お水くださる?」

さんざん叫んで乾いたノドを潤すと
ミヨは静かに眠りについたのだった。

私をいたわる優しさがあるのなら
どうかミヨよ、夜は寝ておくれ。