ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

告別式の夜に

2013-12-27 01:15:32 | 日記
父の告別式。

火葬直前の棺を囲み
「お父さん、大好きだったよ」と
ポロポロ涙をこぼしながら冷たくなったその手をさする娘たち。
年がら年中憎まれ口を叩いていた母まで
「あなた、ありがとう」と涙ながらに両手でその頬を包む。

雨が降り敷く中
父の望みどおりひっそりと行われた家族葬。
賑やかなことが大好きだった父にはふさわしくない気もしたが
他人がいないからこそ見せられる素顔で
私たちは愛する父(夫)を見送ることができたのかもしれない。

骨壷に納まった父を実家に連れ帰り、線香をあげ
しめやかな時間が流れること約一時間。

誰が口火を切ったか記憶にないが
これからどうするか
現実的な事務処理について、家族会議が始まる。

実は、1、2年前から自分の逝く日を想定し
遺言と遺影用の写真選びに熱心だった父。
しかし、告別式の前日に娘たち総出で家中を捜索しても
それは見つからない。
あとで母が困らないよう家の権利書を確認しておこうと思ったが
それも、どこにしまったのかわからない。
いざというときの生命保険や年金、銀行の手続きといったものが
一切、書き残されていないのである。

まいったね、こりゃ。

あ、でも、こんなものがあるわ!と母が出してきたエンディングノート。
そうそう、これよこれ。
ここにすべてが記されているに違いない。
そう思ってページをめくってみたが
最初の1ページ目にある自分史がわずかに綴られているだけで
肝心なところは真っ白だ。

なあんだよ、これ!

そんな父の不始末を蒸し返し、告別式のあとの家族会議は
いつしかいい加減な父(夫)をなじる結果に。

そうなの、あなたたちのお父さんという人は本当に困った人で・・・
と、母。
しかし娘たちからしたら、父のそんないい加減な部分が愛しい。

あんなことがあった、こんなこともあったと
骨壷を前に繰り広げられる父のエピソード。
娘が三人いると、どうやらその接し方、育て方も違っていたようで
娘たちの語るエピソードも父親像もまちまちだ。

いつの間にか
家族会議は逝ってしまった男を偲ぶ“笑タイム”へと変わっていく。

ごめ~ん、お父さん。
アナタの告別式の日に、家族で大笑いしたわ。
でも、これってアナタが望むところでしょ?

何度も書き直した遺言だけれど
自分が死んだあとも家族仲良く――
と、その一行だけは書き換えなかったものね。

姉と私。そして二度目の母とその娘である三女。
なさぬ仲である4人が、アナタの死をきっかけに絆を強くせざるを得ない。
これって、アナタが一番望むところだったんだろうね。

そう思うと
天晴れ! アナタの思うようにコトが進んでいるじゃないか。

遺された家族のドタバタ笑いをもって
供養とさせていただきます。