入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    I still have a dream (1)

2014年06月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

   M57                                        Photo by かんと

 昨夜は上に泊まる。鹿の様子を見ようと、9時過ぎ外に出て驚いた。雨に洗われた広大な夜空に無数の星々が、まさにばら撒かれたように見える。天の川が煌めき、夏の大三角形が中天を領している。琴座のベガ、白鳥座のデネブ、鷲座のアルタイル・・・、かんと氏やT氏がいたら、きっと素晴らしい星の写真をものしただろうに。



 誘われても行きたくない山は、夏の富士山。そして夏の上高地。富士山では「弾丸登山」などといって、山小屋を利用しない登山をあたかも無謀のように言うが、さてどんなものか。またそれなら、何軒かの山小屋を、もっと早くから、もっと長く営業できるように、山小屋組合は検討してみてはどうか。混雑解消の一助になるだろうし、5月末から6月初めが、あの山のもっとも平穏であることを知らぬわけでもないだろうに。入山料はそれからのこと、と思う。



 上高地のゲンジボタルを駆除することが決まった。またぞろ学識経験者の意見を聞いたうえでの決定らしい。かの清少納言も「ほのかにうち光りて行くもをかし」と言っている(ここで当局者や学識経験者への悪態は省略)。一番かの地の環境に影響しているのは、もちろんゲンジボタルではない、人間サマだ。昔の上高地を知る者が、今の有様をみたら何というだろう。しかし、変貌を嘆き、否定してばかりいてもいけない。
 大正池に林立していた枯れ木は、もう殆どない。変わりゆくことを、許容せざるをえないこともある。そして諦めることも。あの懐かしい梓川沿いの旧道も、温泉も、いまでは多くの岳人の思い出の中にしかない。
 入笠の伊那側、今後どうなっていくのだろうか。一本のしっかりとした構想が欲しい。I still have a dream.

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては6月2日のブログをご覧ください。 
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   名無し峠の老人のこと

2014年06月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


最初の1、2年目は千代田湖経由で来ることが多かった。現在使っている芝平を通る山道は、「車がこわれる」と言われれるほどの悪路だったからだ。
 千代田湖を登り切ると道は二手に分かれるが、近年作られた道路ゆえこの峠には名がない。しかし、舗装路を左に少し下ると「枯木峠」という名の、かつては芝平の住人が大切にした、いまでは忘れられた古道がある。
 この名のない峠の少し手前の林で、来る日も来る日も切り捨てられた灌木を、ノコギリや鉈を使って山掃除している老人がいた。ここを通過する朝の8時を少しまわったころには、その老人はすでに幾つかの薪の束を作って、道路脇に停めた軽トラックの傍に積んであった。
 偶々声をかける機会ができて「毎日まいにちよくやりますね」と言うと、老人もこっちのことは気付いていたようで「みんなはもう知らんかもしらんが、これで風呂を沸かすといい湯になるだよ」と言って笑った。まるで、入浴のために、この老人の一日があるかのようだった。
 しかし、今なら分かる。わずかな入浴時間に味わう喜びとそのためにする労働が、実はこの老人にとっては等価であったことを。その日の労働を終えて、薪で沸かした風呂の中のご満悦な老人の幸福が分かる、目に浮かぶ。
 そのご見かけたことはないが、老人は今でも健在で、今日あたりは家の近くの畑でジャガイモ畑の草取りでもしていればよいのだが。いや、きっとそうしているだろう、働き者のお爺さんだったから。



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   牧の人・・・毒の人

2014年06月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

  牛たちに注視される牧の人

 午後2時過ぎ、とうとう”爆撃”が始まった。雨なら我慢できるが、入笠の雷は特別である。第1牧区のような周囲に何もない放牧地で草刈り機なんぞを振り回していたら、いつ直撃を受けることになるか。ましてここには昔し、芝平の人々が雨乞いをした「雷電様」まである。

 第1牧区に登れば対面に第4牧区全体が見える。昨日この牧区に移した牛の様子を見ようと朝一番で双眼鏡を携えて来てみたが、2頭を確認できるのみ。広い放牧地に他の牛の姿を見ることができない。この牧区は林もあるため、第1牧区の草刈を途中で切り上げ、やはり歩いて探すしかないようだ。
 午後、雷鳴を遠くに聞きながら、急登に耐えつつ登る。と、いた。こんな天気では、広い草地に出すよりここに置いておいた方がよかろうと、頭数を確認しただけで下る。


 牧区替えしたばかりで、こんな林の中に群れをつくるとは


 57番が番頭さんのように迎えてくれた

 ヤマカン氏が珍しく電話をしてきてくれた。彼とは東京で一緒に働いた間柄だが、いまは故郷の有田でセトモノ(陶芸)制作とコンピューターの新ソフト開発に余念がない。上手くいけば、貧乏な牛守にも大金が入るそうだ。その彼曰く、「ブログ、もう少し自分を出してもいいんじゃないですか」と。有難い助言だが、クスリのない毒だらけの人間が、ハ、ハ、ハ、堪えているんです、吐きたくて仕方ない毒を。毒、毒、毒。

 TDS君は俳人。この会の片隅から身を引く前も、後も友誼は絶えない。で、彼の近作。
        夏めくや群れ作りだす牧の牛   牧の人牛と寝てをり夏銀河

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては6月2日のブログをご覧ください。雷鳴止む、午後4時。


 

 

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     新しい放牧地へ、本日牧区替え

2014年06月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 こんな雨の日は牛ばかりでなく人も、何をしているのかと聞かれることがある。実は牛は普段とほとんど変わらない。人も、管理棟内でする仕事を雨の日のために用意してあるが(例えばチェーンソーや刃物の手入れ、罠の修理、結束線の準備)、今日は牛と同じように屋外で仕事をするはめに。
 第4牧区の電気牧柵を管理するモニターが漏電数値を上げている。雨に濡れた草が電線に触れているせいで、電線の下の草刈を始めなければならない。また、そろそろ牧区替えに備え、第4牧区の給水タンクに水を貯めなければならないが、水圧が低い。遠方の水源地まで行って取り入れ口の調整もしなければならない。これは詳述を避けるが、かなり面倒な仕事である。
 午後になれば雨は上がると読んでいたから、まず水源地の調整を済ませ、タンクに水を貯めている間に草刈をして、うまくいけば今日中に思い切って牧区替えまでやってしまうことにする。
 あいにく雨と草刈は午後も続くことに。


  頼りの57番を誘導する


  新しい放牧地で草を食む

 牛は最初5頭移った。そしてたちまち電気牧柵の洗礼を受けることになる。あちこちで「グゥ」とか「ゲェ」とか吠えている。すぐではなかったが、群を避けていた26番も他の牛につられるようにして移動した。万歳、である。
 こう書けば、いとも簡単のようだが、細かい作業や失敗とかやり直しもある。水源地へは三度も足をはこんだが、ともかくうまく牧区替えできて、実に、実にスッキリとした気分だ。

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   夏は夕暮れ

2014年06月21日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 「春は曙」とあの人は言ったが、夏は「夜」だと。「月のころはさらなり。蛍の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなどほのかにうち光て行くもをかし。」ウンウン、なるほどそして、えぇ「雨など降るもをかし」かぁー。フーン、どんな暮らしをしていたのやら。民草は竪穴住居に毛の生えたような家に暮らしていただろうに。
 止まれ。夏は夕暮れと言うために、長い前振りになってしまった。まだ季節的に少し早いが、一日の仕事を終えて小屋の前で呆けていると、何とも言えない満足感がこみ上げてくるのが、夏の夕暮れである。
 お百姓さんが一日の野良仕事を終えて、家路につく際に感ずる安堵感というか充足感にも似ているだろう。なら、一日を平和に終えようっという気持が、それまでしていた夫婦喧嘩の矛をおさめ、亭主がやさしくなるときと、この気持ちは似ているのだろうか。そうそう、「西の山に日が入るころには夫は妻にやさしくなるものだ」と、教えてくれた人がいた。


    チビは意外に食いしん坊

 やさしくする妻なるがいなければ、ビールに相手をしてもらうしかない。帰るのを諦めて、一日の疲れと満足感を黄金の酒に溶かすのだ。至福の時がゆっくりと暮れていく時の中に紛れ、豊饒な沈黙がさらに深まる。牧場(まきば)の夕暮れが止まる。


    思いがけないところにクリンソウ

 フー、何が何だか分からないことを言い出したゾ。
 上に泊まると当夜の夕飯、翌日の朝と昼、計三食を考えないといけないが、これが面倒。しかし、「夏も曙」!

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