入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「春」 (64)

2019年05月14日 | 入笠牧場からの星空

               M51、通称「子持ち銀河」        Photo by かんと氏

 浮いている。巨大な二つの銀河がまさに「無窮の遠(おち)」に浮いている。考えてみれば不思議な話だ、この宇宙、星や銀河を浮かべている空間は、超と付けてもいい何もない真空のはずなのに、夥しい数の天体をその何もない空間が軽々と浮かべている。もっとも、もし、この不思議な浮力が与えられていなければ、では生まれてしまった天体はどこへ落ちていったらよいのか、これも分からない。何もないはずの空間が、星や銀河を支えている。近傍の空間を少し凹ませながら、まるで水のように。
 いつか、もっと研究が進めば、どうして極小の宇宙が突如誕生し、以来100億年以上もひたすら「膨張」を続け、ばら撒かれたように多大な天体が生まれたそのからくりを知るようになるのだろうか。やがて遠いとおい遥か未来に訪れるだろう宇宙の終局を、夜空を眺めつ星の配列を神話になぞらえた人たちにも分かるよう、説明できるだろうか。
 138億年という時間の長さは膨大だが、まだ宇宙は誕生したばかりだと言う人もいる。一般人の時間の感覚を飛び抜けた話を、羊飼いの少年の知識とあまり差のないわれわれ世代が理解できる日は、恐らく期待できないだろう。しかしそれでもいい。
 宇宙の神秘にいつまでもこだわるのは、死後の世界についてあれこれと頭を悩ますようなもので、しばらく病で、"病気"が治ったらあとは専門の人に任せ、無言のまま我々を見下ろしている夜空を受け入れる。そして、別れた人を思い出すように時々星の煌く夜空を眺めながら、宇宙の神秘を懐かしむというくらいで充分だと、そう思う。
 入笠牧場からの夜空・・・、軽々しくは吹聴しない。

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