
ふた夜の宴会の、その盛り上がりについてはすでに独り言ちた。さらに書き添えるなら、そこに出た鹿肉料理だろうか。意外だったのは前回来た人たちはこぞって、今回の方が肉が美味しかったと言ったことだった。秋に捕獲した鹿の方が脂肪が付き旨味は増していただろうが、さて前回の鹿肉の状態がどうであったかまでは覚えていない。今回の肉は熟成の間、ビニールでなく布にくるんでおいたが、その効果があったのかも分からない。
翌朝の気温は零下10度、前日の朝よりも6,7度は暖かかった。みんなを送り出すため管理棟の外に出た。2泊3日の山の日々が瞬く間に過ぎていったことを、別れの時はさらに強調する。遠ざかる姿に手を振り、見送る。これまでに幾度、同じことをしてきたことか。
ガランとした小屋の点検と戸締りをして、外で待っていたHALを呼んだ。すでに帰りの時が来たことを承知していて、どの道を行くかを決めてやればそれで、HALは先導役を務めようとする。12年を一緒に暮らし、その間冬の入笠にHALのお供無しで来たことはない。
よく川上犬は寒さに強いと言われる。しかしHALを見ていると、その評価に疑問が湧いてくる。雪の上より乾いた土があればそこを選ぶし、里にいても、山にいても、少しでも暖かい所にいようとする。寒さが平気だというより、ただ我慢しているだけのような気がする。

帰路は念のため牧場内の見回りを兼ねて、また第1牧区に登ることにした。眺望は前日よりも良かった。風が雪面に風紋のような縞をつくり、2週間前にT君と残した足跡はとっくに消えていた。牧柵の外に出るところまで来て、御所平の方から来た足跡が目に留まった。それは牧柵に向かって真っ直ぐに進み、その直前で曲がっていた。しばらく牧柵に沿うように続き、再び法華道の方角に引き返していた。その足跡を目でたどりつつ、牧柵内に立ち入らなかった見知らぬ登山者に安堵と、好感を覚えた。
赤羽さん、84歳のヒーローが来ているのだと山の神に伝えて下さい。そして、たった1名の雪上講習のためにのみ登るのでは、老躯は泣くとも。クク。
光の明度が上がる、3月の入笠牧場が待っています。3月の3,4日は約1名様の雪上講習を兼ね上にいます。人数にはこだわりませんが、要予約。
営業については以下をクリックしてください。「冬季営業の案内(’17年度」は、前年のものを流用している部分もあって、段落や改行がおかしく、見苦しいかも知れませんが何卒ご容赦を。