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文明から文化の再構築へ(上)

2019-01-03 12:01:53 | 日記
「シュペングラーは、来るべき時代が政治から経済の時代に移行すると洞察するとともに、文化から文明の時代になると予見した。この予見がほぼ妥当であったことは否定すべくもないが、その移行が“人類一般”の選択にとって良いのか悪いのかは別問題としても、経済の時代を単純に謳歌できない日本の事情はもとより、地球的規模でそれが問われていることを直視しないわけにはいかない。
 
 とりわけ、経済の時代が文明化作用を促進し、文化を片隅に追いやってきたと言う歴史を振り返ってみたとき、例えば文明化の典型としての大量生産、大量消費を不可避とする都市化の進展を見れば明らかである。都市化の進展・拡大による地域、農村社会、文化の衰退は日本のみならず地球的規模で拡がってきており、それがますます深刻化する南北問題、環境問題に関わってきていることももまた否定すべくもないのである。「西欧の没落」は、その予見性において高い評価に値するものの、現代社会の抱えている諸問題を直視するならば文明そのものが問われていると言う点で、すでに「西欧の没落」は越えなければならない通過点になっていると見るべくなのではなかろうか。
 
 その意味で、「経済学を超えて」たどりついた「成長の限界」は、石油を初めとした主要資源の埋蔵量・消費量の推定には問題があったにせよ、依然としてその有効性は失っていない。日本の経済的繁栄の基盤を築いた高度成長の理論的権威であった下村治氏が、石油危機に誰よりも早くゼロ成長を提唱したのは、まさに炯眼というべきであった。

                             『国際化を超える』北海道自治研修所、1992年3月 より