毎日曜の午前6時10分から始まる<目撃!にっぽん>(30分番組)は、今の日本の様々な問題点を、分かりやすく描いて
くれるドキュメンタリー番組だ。
新聞はとっているのにあまり読まない私は、いろんなテレビ番組を見ることで、社会の問題を考える参考にさせてもらっ
ている。
<目撃!にっぽん>もその中の一つで、いつも録画しているが、今日は6時前には目覚めたので、直にテレビで見た。
今日のそれは、下の表題が示すように、何か衝撃的な内容を予感させるものだった。
今回のドキュメンタリーの主人公は、黒井秋夫さん・72歳と、31年前に亡くなられた父・慶次郎さんだ。
黒井秋夫さん(72歳)
父・慶次郎さん
黒井秋夫氏が何故に父親をそのように強く嫌ったのかは、秋夫氏の成長期・青年期に、父・慶次郎氏が全く父親らしい
態度をとられなかったばかりでなく、仕事もろくにされず、家族間での会話らしいものも全く無かったからだった。
父・慶次郎氏は、朝から晩まで、家族の誰とも話もせず、悲しそうな暗い顔をして、ぼんやりと過ごしておられたそうだ。
そんな父親の暮らしぶりでは、当然家計は苦しく、秋夫氏も貧乏な暮らしを強いられた。
暮らしの苦しさだけではなく、秋夫氏は当時の父親から、愛情らしいものを感じることもできなかった。
秋夫氏はそんな父親を全く理解できないばかりか、次第に強い不信感・軽蔑さえ抱かれるようになる。
自分の父親は人間失格のダメ人間だという思いが、秋夫氏の心を暗く閉ざした。
そしてそれは、父・慶次郎氏が亡くなられるまで、いや亡くなられてからも続いたのだった。
そんな秋夫氏が、父の状態に新たな思いを抱かれるきっかけになったのは、ベトナムからの帰還兵が、帰還から長い時
間を経た今でも、ベトナム戦争の悲惨な体験が自分を苦しめ、正常な精神状態でいられないことを、告白されたニュース
番組を見られたときだった。
そのとき、帰還兵の沈痛な表情と、父親の生前の顔が、重なった。
父・慶次郎氏は、20歳で召集され、中国北部戦線に従軍されていたのだ。
そのことがあってから、秋夫氏は父の戦争時代と戦後の足跡を尋ねて、父が遺されたものを再度見直し、父が往かれた
戦地の、口では言い表せないほどの過酷で残虐な状況などを、戦争体験者や研究者などの手も借りて調べ、追体験し
ていかれる。
そんな中で改めて見直された、父が二十歳で出征したときの写真。
それは、戦後の父親の姿からは想像もできない、初々しい青年の姿だった。
秋夫氏は、次第に理解していかれる。
父が何故にあのように、生きる屍のごとく日々を過ごしていたのかを。
何故にあのように暗い顔をして、ぼんやり過ごしていたのかを。
そして初々しい青年を、呆けた人間に変えてしまった、戦争の過酷さと残虐さを。
(初々しい人間的な心を持っている人ほど、その残虐さが耐えがたいものであることを。)
そしてそれは、テレビを見ている私の思いとも重なった。
私はこれまでに(実体験は無いものの)いろんな本や映画やテレビなどで、戦争の悲惨さはいろいろ知っているつもりで
いた。
でも…こんな形での戦争の被害があり、犠牲者がいるのだということは、あまり頭に無かったような気がする。
生きて戦争から帰っても、生きる意欲が失われ、人間らしくモノを感じる心が失われたならば、それは本当に酷いことだ。
とにかく、ありきたりだけど、戦争は絶対にアカン!
私がこの番組を見て新たに知った戦争のもたらす悲劇は、私の戦争に反対する気持ちを、更に強めた。