ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅           アシアナ(医療監房)・・・・・8

2013-01-09 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ
 水浴が終った者から莚を敷き始めた、午後のティータイムだ。ティーはゆっくりとだが全部飲んだ。アシアナに入所して2日目、次は何をするのか全く分からない。見よう見まねで彼らの後について行くしかない。皆と一緒に玄関フロアーに座って待っていると午後の投薬が始まった。粉薬はない。薬は患者名が書かれたプラスチック・ケースに用意されていた。薬剤師から渡されたケースを薬務員はカルテの薬名と照合し一個ずつぼくの右手の平に置いていった。5~6種類のカプセル、錠剤は大きく飲み難かった。ぼくの後から投薬を受ける患者達の薬の量は段々少なくなった。回復に向かっているのだろう。投薬が終ると前庭にカーペットを広げたような形で莚を敷き適当な場所に皆座っていた。暫らくするとマダムが玄関に現れ見回すと一人の患者に何かひと言いった。彼は急いで玄関に入り椅子を持って出て来た。置かれた椅子にマダムはゆっくりと腰を掛け別の患者を指名した。彼は前に出て皆に向かって
「メロ・ナム(私の名前は)・・・」
と自己紹介し何かを喋り始めた。恐らくどうしてスタッフをやり始めたのか、その時の生活はどうだったのか、逮捕されアシアナで治療を受けスタッフをやめる事が出来た、二度と薬物はやらない。マダムを前にして更生した自分を嘘でも良いから表現しなければならないのだろう。したたかなインド人中毒者がその程度で悔悛し更生するとは思えないが。それが終ると患者の間から質問が出され質問がなくなると彼は次の患者を指名した。このミーティングは中毒治療の一環である。1日5回の水浴と投薬はアシアナの長い治療経験によるものだろう。
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