11月2日の朝。
朝刊の社会面。訃報を伝える小さな記事に、目を疑いました。
画家の堀越千秋さん。
ANAの機内誌、「翼の王国」の表紙イラストを長年描いてこられた方、といえば
あぁ、と思われる人も多いかもしれません。
マドリッド在住で、太陽の国スペインを思わせる大胆でのびのびした筆致。
その絵以上に、私が、「この人、何者? すごい!」と思わせられたのは
去年の今ごろだったか、同誌に載った「スペインはぐるぐる螺旋だらけ」のエッセーで、
階段の手すりやら、聖母マリアの衣服やら、ガウディ建築の端っこやら、ドアノブやら、
あちらこちらに画家の視線は「スペインのぐるぐる」を見つけてしまう。
それは、まさにこの方の描く絵そのもの、混沌とした魅力に満ちたエッセーだったのでした。
それ以来のファンで、飛行機に乗るたびに真っ先に「翼の王国」を座席ポケットから取り出し、
今回はどこの国の絵なのだろう、とうきうき眺めてきたのです。
たしか10月の熊本行きでANAに乗ったときも、表紙は堀越さんの絵だったはず。
なのに、そんなに急に…。
そう思いながら、乗り込んだその日の飛行機。
前ポケットから取り出した「翼の王国」は11月号になっていました。
珍しく、日本の絵でした。
でも、この感じは…と思い、表紙を開いてみると、やはり堀越千秋さんの絵でした。
こんなメッセージが添えられています。
旅先で思いがけないものを見たことがある。
新潟県小千谷市の夏祭り。
高い舞台の上に、等身大の変なおっさんの人形が座っていて、
後ろに人がいて、身ぶりもおかしく、リズミカルな語りに合わせて、
「〇〇でござる、××でござる」といった調子に手踊りをするのである。
それだけでもおかしいのだが、縁台の最前列に座った小学生の男の子が、
寸分違わずその真似をして躍っているのだ。
祭り関係者のファミリーなのだろうが、その熱中ぶりには、
何か脈々と生き続ける血筋、地元愛のようなものがひしひしと感じられて、
僕は大笑いしながらも、感涙をとめられなかったのである。
なんと、描かれていたのは、新潟の小千谷でした。
飛行機はまさに新潟へと飛んでいるところ。そして私の向かう先は、小千谷。
その機中で目にした、画家の、もしかしたら最後の絵。
これは永久保存版。
「翼の王国」、たいせつに鞄に入れました。
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