靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

ドイツで出会った活動家

2013-11-24 10:09:45 | 子育てノート
十代最後の年、ドイツを訪ねた。議員や活動家の団体に加わり、最年少の参加だった。各地の市民運動団体と交流し、ホームステイしながら、強制収容所や秘密警察の施設跡を巡り、最後は同じ過ちを繰り返さないためにと、ベルリン市長に広島の被爆瓦を手渡し。二週間のスケジュールが終わり、その後二週間、知り合いになった人々を訪ねて一人旅した。

マインという町では、「緑の党」の元議員の家に泊まった。元議員といってもまだ二十代。私が接していたグループがそうだったのか、緑の党全体がそうなのか分からないけれど、若手の党員が議員をするといいんだ、そういった誰かがしなければならないことは、早い内に終わらせておけば、より本格的に活動に没頭できる、そう言っていた。議員であることの「ステイタス」とか、そういうものには全く頓着しないんだなと、驚いたのを覚えている。

「捕鯨」についてとてもラディカルな立場をとる緑の党、彼の友人達と集まると、何度も議論になった。他の党員が、食べ物に困っているわけでもないのに、まだ捕鯨を続けているなんて言語道断! といった態度に対し、彼は、僕達だって慣れ親しんだ牛や豚や鳥を食べ続けてる、日本人にとって鯨は同じような位置づけなんだよね。僕たちがあなたたちを批判する立場にはない。僕はね、肉を食べることを減らしつつある。そう言っていた。

また彼は民族音楽とロックを合わせたようなバンドもしていて、ベースを担当。トルコ人などの移民の友人と一緒にしているんだと、LPをプレゼントしてくれた。

ベースを弾きながら、彼はこんなことを言った。

いつも世界の問題について考えていたら、普通の生活ができなくなってしまってね。世界は問題に溢れている、暖かい家で、ママ手作りのルバーブケーキを食べていたとしてもね。いつしか僕は、笑うことさえできなくなってしまったんだ。世界の問題を嘆きながら、その次の瞬間にビール片手に笑って冗談を言い合う人々が、偽善者に見えてしょうがなかった。

でもね、それは違うのかなと思い始めたんだよ。ここで僕が楽しんでいるということは、世界を不幸にしない。むしろここで楽しんでいる、そんなスピリットが、世界を照らすんだよ。

それでね、僕はベースを始めたんだ

僕は今世界の問題について少しでも何かできないかと毎日活動してて、そして毎日音楽もしている。両方を続けることでね、僕が僕であるということを、より生かせられる、そう思っている。

彼の人生に対する姿勢は、当時十九歳の私に、その後どう生きていくかのヒントを与えてくれたように思う。

具体的現実的に周りへ何かをしていくということ、そして、ここに自分が楽しんでいるというスピリット。


今までの人生を振り返ると、こんなスパークの瞬間となるような出会いが、あちらこちらに散りばめられている。

これから大きくなる子供達、どんな出会いを重ねていくのか、楽しみです。


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2 コメント

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Unknown (テッサー)
2013-11-27 13:34:29
とても素敵だね。誰かが何かを我慢したり考えつめたりすることが世の中をよくするわけではないよね。ブッダもそれに気づいたんだよね。(ちょっと違うか)
自己を正当化するわけではなく、与えられた能力を最大限引き出すための調整ってことかな。フィリピンにスーパー台風の被害が起きてから、ずっとなんとなく思っていたことだったから、すっと腑に落ちました。ありがとー。
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テッサーさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2013-12-01 13:44:42
この言葉、体験、心に大きく残っていてね。子供達も将来、こんな瞬間に出会うときが来ればなあ、そう思ってます。

なるほど、仏陀! 苦行は必要ないと行き着いたんだよね。(私も違ってる?)

うん、自分の奥を引き上げていく方法だったんだろうね。

テッサーさんらしい。スーパー台風でずっとなんとなく思っていたということ。私もこのドイツでの体験にどれほど救われてきたか分かりません。

ありがとうねテッサーさん。師走!今年もお世話になりました。来年もよろしくね。と年賀状もまだ全然手をつけていないのに、ちょっと早すぎ。今週もよい日々を!




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