靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

大学進学に価値がある?(米国事情)

2014-04-13 05:26:47 | 子育てノート
米国の大学の学費は、世界中を見回しても、高いと言われています。

多くの学生は、学生ローンによって通うことが可能となるのですが、卒業した時点での一人当たりの借金は、2013年の時点で平均して30,000万ドル(約300万円)近く。学費は1983年以来5倍となり、こうして借金の額も上昇し続けているにも関わらず、大卒者のサラリーはそれほど変わっていないようです。

また米国経済が低迷するにつれ、膨大な借金を抱えながらも、卒業後も思うような職につけないケースも増え、現在42%の大卒者が「大卒」でなくてもよい職種についているという統計もあります。かつての「大学進学が中流階級への仲間入り」「大卒の方が、高卒より収入がいい」そんな言葉も、定かではなくなりつつあるようです。また米国でトップに位置する大学の卒業者の41%が、思うような職につけなかったと思っているという調査結果もあるようです。

「学びたい」ということならば、現在オンラインコースで、諸経費や生活費抜き授業費を払うのみで、トップクラスの大学の質の良い授業を受けることも可能です。

オバマ大統領が、「大学へ行かなくとも貿易について学んだ者の方が、大学でアートの歴史を学んだ者よりよほど収入を得ている」と一月に発言し、アートの歴史の教授から謝罪要求されるなどあったようですが、それは現実的な問題としてあるようです。



今週の “The Economist”の「大学に価値はあるのか?」と題した記事には、こうした現状の説明と共に、例え膨大な学費を払ったとしても、二十年後にリターンのある大学とマイナスになる大学が載せられています(PayScaleによる調査)。卒業後二十年しても赤字のままの大学も多いと!

また何を「専攻」するかもその「リターン」に大きく関わってくると。エンジニアは手堅く、高卒よりも二十年後には一億円以上多く稼いでいるだろう、それに対し、アート専攻はかなり厳しく、一部の大学(コロンビアやカリフォルニア大学サンディエゴ校など)を除き、高卒より一千五百万円ほど少ない収入の場合もあると。

他の記事(US News)からになりますが、ソーシャルワーク、小学校教師、演劇、人類学、考古学などの専攻も卒業後の収入面からみると、ワースト5。

ソーシャルワークや小学校教師が入っているところ、この国の先行きを想います。



「経済面」から見た米国での大学進学の厳しさ。

こうした事実を踏まえた上で、それでも私自身は、もし子供達がパッション溢れどうしてもこれがしたい!という気持ちが強いのならば、アートなり、考古学なりの道を目指して進んでいったらいいと思います。

私自身振り返り、こちらでワースト1に位置づけられもする「人類学」専攻で(笑)、当時もうそれ以外のことは目に入らなかったわけですが、それでもそうして大学大学院で学んだことや時期というのは、周りの同じような興味を持つ友人達たちとの出会いも含め、私にとってどうしても必要でかけがえのない過程だったと今振り返っても思います。まあ今人類学者になっているわけでもなく、周りにはっきりと分かる形で表れているわけではないですが。

お金は確かに重要だけれど、その人の内面の中心部分を形作る、どうしても変えられないものというのがあるのでしょう。それが文学であったり、音楽であったりする人もいる。それらを会計やビジネスに置き代えるのは、どうしても無理な場合もある。



もし、そうした「これがしたい!」と確固とした気持ちが大学進学を決める時点ではっきりとしていないようなら、またはあれとこれとで悩むようならば、将来的になるべく経済面での「リターン」の多い専攻を選ぶよう導く、または、オンラインコースも充実しているわけだし、ひとまずは大学進学しないという選択もある。

そう子供達を見守っていこう、そう思っています。

オバマ大統領、「大学の学費をもっと皆の手が届くよう下げることで、多くの人々がより多くのチャンスを手に入れることができる」と今月二日に言ったようですが、現状が改善されていくことを願いつつ。


参考資料:
“Is College worth it?” The Economist 5TH-11TH Apr.

“5 College Degrees that aren’t Worth the Cost” US News


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2 コメント

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Unknown (よっちゃん)
2014-04-17 14:36:22
日本でも、奨学金を使っている大学生は私たちの頃に比べて多く、また仕送りも減少しているため大学生の食生活が乱れているという統計があるようです!
思う様に就職出来ず思う様に奨学金を返済出来ず、結婚などの障害にもなっている人も多い様。
4月になりせっかく就職した会社を僅か数日で辞めてしまう若者も多いとか。
せっかく苦労して良い大学に入り、良い会社に就職出来ても長続きしなければ、学歴もキャリアもないと思う。
私は学歴はないけど、色々な会社で教わった事すべて無駄ではないと思っていて、厳しく指導された会社ほど今、活かされてるてと感じてます。
Mac、Windows、CADが触れる様になったし接客業は話し方や電話の取り方も習えた。
結局、4大出た高学歴な友人達よりもお給料は貰っているしね。
頭がいい=勉強が出来るは違うし、高学歴が高収入でもない世の中。
子供たちの未来に学歴を押し付けるつもりはないが、どの選択にしても学費はなるべくなら助けてあげられる努力はしたいと頑張ってます。
あとは本人次第だけど、良く働く親の後ろ姿を見せているのでそれも感じとって欲しいと思っています。
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よっちゃんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2014-04-19 05:01:55
日本でもそういう現状があるんだね! まずは食を削ってということになってしまうんだね。私も大学院時代の一年、「育英会奨学金」にお世話になりました。

「思うように返済できず、結婚などの障害」というの、こちらでも全く同じような状況。車や家を買ったり、子供を持ったりといったことを躊躇する人も増えていると。

家も夫が長い長い学生時代を送ったため(笑)、今もこつこつこつ返し続けてますよ。

苦労して就職しても止めてしまう若い人も多いのね。

「せっかく苦労して良い大学に入り、良い会社に就職出来ても長続きしなければ、学歴もキャリアもない」
うん、社会に出て厳しい環境の中、学び続け、頑張ってきたよっちゃんの言葉、とても説得力ある。きっとそういう例を周りでも見てきたんだね。

「厳しく指導された会社ほど今、活かされている」と言える今があるのも、一生懸命歩いてきたからこそだね。

Mac、Windows、CADが操れて、接客の話し方や電話の取り方も身につけて、「高学歴」な友人達よりも給料もらってるなんて、本当に頼もしい。

うん、「頭の良さ賢さ」と、「学校の勉強ができる」というのはぴたりとは重ならない。「高収入」と「学校の成績がいい」というのも。つくづく思います。

こちらでも「いい大学」を出て、実際の会社などで使い
ものにならないということがあるよう。

学歴や机上の勉強だけでない、社会の現実の場で発揮できる「実力」や「たくましさ」が、これからますます必要となってくる、私もそう思ってます。

「学費をなるべく助けてあげられるように」そう息子君達の未来を思い、頑張ってるんだね。よっちゃんの背中を見て育った息子君達、社会に大きく羽ばたいていくと信じてます。

こうしてシェアしくれて、本当にありがとう。私も頑張るぞ~!とやる気倍増よ。仕事に家事に育児にと飛び回るよっちゃん、週末ゆったり楽しんでね!ありがとう!



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