靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

全部一人で飲む!「条件付け」と「無条件の受け入れ」

2014-03-16 05:55:02 | 子育てノート
「全部自分で飲むの!シェアしたくない!」

ヨーグルトスムージーを手に、泣きべそ顔で言い張る次男四歳。

冷蔵庫に見つけてそれはそれは嬉しそうに手にしたものの、最後の一つ。私昨日飲んでないよ! 私なんて三日ぐらい飲んでないもの! 私なんて十二個入りの二箱買って以来一つか二つしか飲んでない! そんな声が周りから。

「じゃあ皆で分けて飲みなさい」と言ったところ、この次男の反応。

五人で分けると、確かに「おちょこ」くらいの大きさの器に半分程になってしまう。(笑) 


スムージーを握り締め、いよいよ泣き出しそうな次男の様子に、「まあ、私はいいわ」、と言いだす子も。その様子を見て、ますます、一人で飲む!が強くなる。

「あなたも飲みたいけれどね、皆も同じくらい飲みたいのよ。あなたは毎日のように飲んでいるけど、しばらく飲んでない子もいる、最後の一つは皆で分けようね」

という私の言葉に、うわ~んと泣き叫ぶ次男。床に突っ伏して足をばたばたさせて。

「ぼ、ぼく一人で飲むの~、の、飲みたいの~、シ、シェアしたくないの~」しゃくりあげて。


泣き叫びのピークから少しおさまりつつある頃、傍に座り、「おいで」と言うと、泣きながら膝に乗ってくる。抱っこして背中とんとんしてユラユラ揺れて。

思い通りにならない!と泣き叫び癇癪を起こす。そんな時、「もうなんて我がままなの!」とこちらもき~となって、と何度も繰り返してきたけれど、

1.こうした方がいいのよと(なるべく静かに落ち着いて)伝える 

2.やり切れない感情を出させる 

3.少しピークが去った頃、抱っこゆらゆら


この流れが、一番すんなりとおさまる。

膝から立ち上がり、姉に「分けて」と渡す次男。


リミットを示し、感情むき出しの反発を受け、こちらも感情むき出しモードにスイッチ、と引きずられることなく、リミットは動かさずとも、その子の苦しい辛い感情に共感し包み込む。すると、次第に落ち着いて、そのリミットを受け入れるようになる。

この流れは、子供が大きくなっても、有効だと感じている。「抱っこゆらゆら」は、カフェに出かけたり、美味しいものを部屋に差し入れたり、ハグだったり。



「条件を付け」「無条件に受け入れる」、その一見相矛盾して見える働きかけのバランスが、「子育ての鍵」とつくづく思うのだけれど、これが一つの具体的方法だろう。

それは、「利き手でない方で導き、利き手で抱える」ことでもある。より力の入る利き手で、常に抱えているということ。


 

「絶対」はないという前提の下、目指したい方向

2014-03-16 05:54:02 | 子育てノート
AさんとBさんが違う意見を持っている時:

1.どちらか一方が「正しい」と思うか、

2.どちらも「正しい面を持っている」と思うか。

もし、どちらも正しい面を持っていると思うならば、

3.どちらかが、どちらかよりも「より正しい」と「説明」できるか。



心理学者Kuhn氏によると、以上のような場面に出会ったとき、どう思うかによって、人は三つのタイプ(or 発達の段階)に分けられると言います。


1は、絶対主義者(absolutist)。現実とは、直接的に確かなものとして観察できると考えている。灰色はなく、白か黒。子供というのは、この状態にある。


2は、多様主義者(multiplist)。現実は直接的に観察することはできず、情報は必ず誤ることのある人々の感覚によってフィルターされ、知識というのは人の思考によって作られており、疑うことができるものと思っている。そうして何もかも決して「確か」ではないのだから、どちらか一方のみを選ぶ客観的な土台は存在せず、断言されている全てのものも、「単なる意見」に過ぎない、全ての主張が「同等の重み」を持っていると。子供達は成長するにつれ、こうした多様主義の考えを、少しずつ理解するようになる。

多様主義的考え方は、自分とは異なる意見を尊ぶ姿勢を生み、素晴らしいこと。子供達にも至らせたい地点。私自身、文化人類学を学び、多様な文化に触れる中で、この「2」のスタンスをとても身近なものと感じている。

Kuhn氏は、「2」を土台とした上に、次へと進む立場として「Evaluativist」を提示する。


3、評価主義者(Evaluativist)。「確固とした正しさ」は手に入れることができないかもしれない、それでも、「区別」をつけることはできると思っている。調べ、学び、考えることで、一方の説明は、他より「メリットがある」と区別していくことができると。



「2」から「3」へと踏み出していくこと。それまでの議論について調べ、証拠として出されたものを吟味し、考え、不確かさの中に「より良い」を築いていくこと。それは、私自身多様主義にどっぷりと浸った時代から、子供を育てる親となり、日常的に必要な姿勢として、学びつつあることでもある。

これからの世界、通信技術や交通手段がますます発達する中で、多様な考え方や価値観が、地球上のどこに暮らしていようが、ますます身近な日常に入り交ざっていくだろう。そんな中、異なる立場を尊重する「2」の多様主義を土台としつつ、「3」の評価主義を身に着けていくことは、とても大切になっていく。



心理学者Caren Walker氏は、次のような「ディスカッションの六つのルール」を小学校の高学年の子供達に学ばせていくことが、「1」から「2」へ、そして「3」へといった姿勢を培うことへと繋がるかもしれないとする。

立場を示す(State a position)

自分が同意するかしないかを考える(Figure out if you agree or disagree)

実際の事例を提示する(Present a real example)

差し出された主張に対する反例を提示する(Present a counterexample to a claim that has been proposed)

それまでに得た情報を基に、主張を練り直し、示す(Offer a revised version of the claim)

自身の主張を証拠と論理でサポートする(Support your claim with evidence or logic)



「絶対的な確かさはない」という前提の下、異なる立場や意見を尊重しつつ、その上に、「より正しく役に立つ」情報を模索していけたら、親としての自身と共に、子供達にも、そんな姿勢を身につけていって欲しい、そう思っています。




参考資料:
“Can We Raise a New Generation of Critical Thinkers?”by Gwen Dewar, Ph.D. Psychology Today

Kuhn D, Cheney R, and Weinstock M. 2000 The development of epistemological understanding. Cognitive Development 15: 309-328.


Walker CM, Wartenberg TE, and Winner E. 2012. Engagement in philosophical dialogue facilitates children’s reasoning about subjectivity. Developmental Psychology. 2012 Sep 3. [Epub ahead of print]

「柔らかい心」を大切に育てるということ

2014-03-16 05:53:44 | 子育てノート
繋がり(connection)についての研究を続けたストーリーテラー兼研究者のブラウン氏(Brene Brown)は、関係を築く壁となるのが「恥」や「不安」であり、その根幹に「傷つき易い柔らかい心(vulnerability)」があるとします。

そして、その「柔らかい心」とは、確かに恥や恐れ 自己肯定感などについての苦しみの中核であるのだけれど、同時に、 喜びや創造 帰属や愛情といったものの根源でもあると。

現代の多くの人々は、様々な問題を抱えた厳しい社会を乗り切るために、傷つかないようその「柔らい心」を麻痺させていると氏は言います。そうすることで、内面の奥深いところに感じる幸せ・創造・喜びにも蓋をしてしまっていると。


関係性の海の中で、「柔らかい心」をさらけ出すこと、それがまた、幸せ・創造・喜びへの道でもあると言う氏。Courage(勇気)とは、ラテン語で元々「心をさらけ出す」という意味でもあるそう。

完璧であろうと、がちがちに固めた防備を脱ぎ捨て、不完全さをさらけだし、「柔らかい心」を解きほぐしてみる。そこから、創造・喜びを可能にする、本当の関係性も始まる。


子供達に伝えたいのは、

あなたは完璧で貴い存在、私はあなたを完璧に育てて見せる、ではなく、

あなたは不完全で、苦しみを背負った存在、それでも愛に帰属意識に値するのよ、

というメッセージだとするブラウン氏の考え、とてもよく分かります。


「柔らかい心」を麻痺させず大切にできる子育て、

それは、完璧であることを突きつけ続けるのではなく、

足りない欠けている部分を認め、変わらぬ愛情で包み込み、

その上で、より良くなろうと励ましサポートし続けていくこと。


心がけていきたいです。



参考資料:

ブラウン氏の「柔らかい心(vulnerability)」についてのスピーチ、子供達の「不完全さを包み込む」ことの大切さを、教えてくれます。
http://recommend-ted.blogspot.com/2013/01/blog-post.html

氏のホームページ:http://brenebrown.com/my-blog/

高校のホームスクール その一

2014-03-16 05:52:07 | 子育てノート
米国では、学齢期の子供達の3-4パーセントがホームスクールをしているとされ、その数は、年々増えていると言われています。

長男、高校をホームスクールするか、まだ決まってはいないのですが、調べていることなど少しずつまとめていきたいです。


高校のホームスクールのカリキュラムを組むには、まず高校卒業後、何を目指すのかで随分と違ってきます。

1.大学に行かない
2、大学にストレートには行かず、ひとまず社会に出て体験を積んでみる
3.大学にストレートに行く

長男は、今のところ「2」か「3」を選んでいるので、大学入学に必要なカリキュラムについての情報を集めています。以下、メモ:

・高校卒業には最低19単位、大学進学には24単位以上必要になりますが、大学入学審査には、より多く難しいレベルの単位を修得していることが望ましい。

「必要以上の単位」は、その子がパッションを持っていることを突き詰めていくなら、本人が熱中している内に積み重ねていける。長男の場合は、ロボティックス、コンピューター関係など。

・高校に必要な単位を早くに取り終え、大学の単位を取っておくこともできる。より深い内容を学ぶこともでき、大学側には大学レベルの授業でやっていけると示すこともでき、また大学の単位としても振り返られ、大学入学後の学費節約にもなる。

アカデミックだけでない活動を組み込む。社交性、チームワークでの活動、リーダーシップなどを育むため。大学側も、全体的なバランスの取れた人材を欲している。

・実際に企業などで働かせてもらうインターンシップ制度の活用もできる。

・四年間のカリキュラム・活動記録を細かく整理し保存することが大切。この整理保存の方法について何冊も本があるほど!

読書記録をつける。自らの学びを整理し、後に知識の出典にも当たりやすい。また古典だけでなくポピュラーまで広い範囲の読書幅を、大学側は望んでいる。

現在、ほとんどの大学でホームスクーラーが受け入れられている。スタンフォード大学のマガジンには、「ホームスクールをしてきた学生に、大学側が欲する『特別なマインド』を見出しつつある」などとも書かれている。
”It’s the spark, the passion that sets the truly exceptional student – the one driven to pursue
independent research and explore difficult concepts from a very early age – apart from your typical bright kids. Stanford wants students who have it. Looking very closely at homeschoolers is one way to get more of those special minds, the admission office have discovered.” 
“Homeschooled students may have potential advantage over others in this, since they have consciously chosen and pursued an independent course of study.” by Christine Foster

・大学側は、パッションを持っている学生が欲しい。取り組みへのパッションこそが、未来の技術開発への道を開いていくことに繋がると。



最大限の力を発揮できるのは、自分が自分の手綱を握り、パッションを注ぎ込んでいる時、子供達を見ていて本当にそう思います。

長い間の学校生活で染み付いた「させられている」という思い込みから、「自分がしている」へ。

ホームスクールをするかどうか未定ですが、パッションを呼び起こし継続させる習慣、それを身につけていってくれたら、そう思っています。



参考資料:

“The HomeScholar Guide To College Admission and Scholarships”by Lee Binz

“College- Prep homeschooling”by David P. Byers, Ph.D. and Chandra Byers

歯を失くしちゃった、親の成長

2014-03-09 09:57:05 | 子育てノート
「見て、あの顔」、助手席の長女に声をかける。歩道に沿って停めた車に向かって、三女が目を輝かせ満面の笑顔で走り寄ってくる。その姿に、長女と顔を見合わせ、ふふふと笑い。

車に乗り込むなり、「歯が抜けたんだよ~!」と叫ぶ三女。「今日ね、○○君にね、ぐらぐらなのって見せたらね、ひっぱりなよっていうから、ちょっとひっぱってみたらね、抜けたの!」

ここ最近、毎日のようにその「ぐらぐら度」を家族に見せて回っていた。やっと抜けた二本目の歯!とそれは嬉しそう。

ハイウェイに乗って、そのままピアノ・レッスンに向かう。兄姉弟一人一人に歯を見せ終わり、「歯の妖精」がその夜訪ねてくれるのを楽しみに、ティッシュに包んで。

一時間後レッスンが終わり、車を発車させようとすると、ごそごそと車の床に這いつくばっている三女。どうしたの? 歯をね、失くしちゃったの。どこにおいておいたの? ティッシュに包んでおいたんだけどね、どこかに落ちちゃったみたい・・・。しばらく兄姉が探すも、見つからず。ため息をつきながらうつむいて座席に座る。

歯を失くした!という出来事、これまでも何度か。袋に入れて皆に見せて歩き、そのままどこかに置き、誰かが捨ててしまったとか。ティッシュに包んでポケットに入れそのまま洗濯してしまったとか。誤って水道に流してしまい、泣き叫ぶ横で、夫が配水管をはずして管の曲線のところに運よく止まっていた「歯」を見つけたこともある。

この世の終わりのように泣き叫んだのを覚えている姉達、ちらちらと三女の様子を見ながら、私の方を向き「あーあ」という表情をする。

家も近くなり、黙ってうつむいていた三女が顔を上げ、「歯の妖精さん、お手紙書いたら分かってくれるかなあ」と。「そうそう、絶対見てくれるよ! 私もしたことあるもの!」すかさず答える姉達。

帰宅した途端、ガレージから家の中に駆け込み、お手紙を書く三女。

歯の妖精さんへ、車の中で歯を失くしちゃいました。

手に持っていた歯が床へ、の図。

その夜、枕の下に、お手紙を入れて眠り。朝、手紙の間に挟んであったコインを見つけ、大はしゃぎ。



今回のことでも思ったのは、子供によって同じような物事に対しても反応の仕方が本当に様々だということ。三女は普段からどちらかというとおっとりほんわりしていて、こういった時にも、「困ったなあ」という様子で一人ごそごと動き、「お手紙書こうかなあ」とぽつり言ったり。一方、「これで全てが終わりました」という様子で荒れ狂い悶え泣き叫ぶ子もいる。

三女のような場合は、その健気に見える姿に、自然と周りにも微笑みが生まれもする。そして後者のような場合は、周り緊張走り身体強張り、振り回されへとへとになることもある。そんな体験が積み重ねられ、その子に対する周りの印象のようなものもできていく。

親として気をつけたいのは、その都度リセットし、どちらにも同じ深さのケアと愛情を意識してかけ続けるということ。意識せずとも愛情たっぷりの微笑がこぼれる相手もいれば、自身の内に潜り、積み重なった塊を取っ払うことで、溢れんばかりの愛情が流れ出す場合もある。

そして、そうコンスタントに自身の内に潜るチャレンジを与えてくれる子ほど、親を、親として人として成長させる存在はない。そうしみじみ思います。


子供達一人一人の、泣き顔に、怒り顔に、笑い顔に、感謝しつつ。

努力の方向を見直す

2014-03-09 09:56:07 | 子育てノート
才能や能力は生まれ持ったもので変えることはできないと考える「固定型マインドセット」

才能や能力は努力の継続によって伸ばしていけると考える「成長型マインドセット」


こちら米国では、心理学者Dwek氏の研究を基に、近年、「成長型マインドセット」こそが、子供達を伸ばす鍵だと、学校現場でも目指されている。


それでも言ってみれば、「成長型マインドセット」というのは、アジア諸国では、より行き渡った当たり前とも思われる考え方ではないだろうか。努力すればできるはず、努力してないからできないのよ、そう親は、子供たちの背中を小さな頃から押し続ける。「できる子」を見れば、こちらなら、「与えられたギフトね」で終わってしまうことも、アジア諸国では、「あなたにもできるはずよ」と、叱咤する機会になるのではないだろうか。

アジア諸国では、才能や能力は生まれ持ったものだから、努力したってそうそう変わりはしないよといった「固定型マインドセット」は、そう一般的ではない。

特に東アジアでは、努力と継続こそが成功への鍵だと信じられているという研究もある。 (Chen and Stevenson 1995) だからアジア諸国の子供達は、アカデミック面でも高い結果を出すのだと。




それでは、なぜアジア諸国の子供達が、皆やる気満々で学校が大好き!とはならないのだろう? 「成長型マインドセット」が行き渡るならば、子供達は生き生きと自分の能力を伸ばすことにやる気を持つだろうと、こちら米国の研究者が予想するように。

それは、アジア諸国の「努力の方向性」に、決定的な違いがあるためだと思い当たる。

アジア諸国では、「努力するならより『彼ら』になれる」

一方こちらで理想として目指されるのは、「努力するならより『自分』になれる」

だからいくら努力しても苦しくてしょうがない。必死で「彼ら」になろうとする空しさ。



アジアでは、「努力して成長できる」よりも、「努力してより『自分』に成長できる」が強調されていく必要があるのではないだろうか。



参考資料:

“The right mindset: How a child's theory of intelligence can change the way she learns”http://www.parentingscience.com/theory-of-intelligence.html

Dweck CS 2006. Mindset: The new psychology of success. New York: Random House.

Chen C and Stevenson HW. 1995. Motivation and mathematics achievement: a comparative study of Asian-American, Caucasian-American, and east Asian high school students. Child Development 66(4):1214-34.

「四つの子育てスタイル」

2014-03-09 09:55:07 | 子育てノート
子育てについて様々調べる中で、押さえておきたいポイントなど、少しずつまとめていきます。


心理学では、子育てのスタイルには主に四つあるとされています。

1.Authoritarian (独裁・権威主義タイプ)
2.Permissive   (消極・受身タイプ)
3.Authoritative (権威ありつつ信頼できるタイプ)
4.Uninvolved   (無関心タイプ)

1は、子供に有無を言わせず従わせるスタイル。従わない場合は罰を持って接する。

2は、子供の意向中心に物事を進める受身スタイル。リミットを設定し守らせることに消極的。それでも温かみがあり子供の感情的ニーズを包み込む。

3は、子供の意向を尊重しつつも、リミットを設定し、ルールの理由を示し、子供の感情的ニーズにも責任を持って接するスタイル。
4は、衣食住の供給といった最低限のニーズを満たすものの、リミットの設定にも感情的ニーズにも無関心スタイル。


そして、世界中様々な地域での研究を通し、少しの例外はあるものの、普遍的に「3」のスタイルが、子供の能力や感情面を最も健やかに育てることができるという結果が報告されている。
(元々は、心理学者Baumrind 氏が米国白人家庭の調査を通し1966年にまとめた1-3に、1983年にMaccoby氏と Martin氏が4を付け加え、その後、世界中様々な地域での研究が続けられている。)

また、片親のみが「3」のスタイルであっても、全く「3」のスタイルが取られない場合よりも大きく違ってくるとされる。



1,2,4のスタイルで育った子供達には、以下のような特徴が指摘される。

1は、行儀良くいい子に見えるけれど、社会的なスキルが欠けていたり、不安感、鬱、自己評価の低さに悩むことが多い。

2は、不安感や鬱なども少なく、自己評価も高い傾向にあるけれど、様々な誘惑に負け易く、何かを成し遂げるということが難しい。

4は、あらゆる面に凹みが見られる。非行に走る子供の多くが、4のスタイルの家庭で育っている。



3の「権威ありつつ信頼できるタイプ」とは、1と2の間でバランスを取りつつ、見出す着地点でもある。子育てを通しつくづく思うのは、まさしく「条件に従うようにさせる」と「無条件に受け入れる」との「バランスが鍵」だということ。

1と2の間を揺れながら、その場その時の最善に思われる着地点を見つけていく。そんな時、3の「権威ありつつ信頼できるタイプ」として挙げられる項目をより具体的に見ていくことで、その着地点がどういったものかというヒントにもなる。

・何かをするよう尋ねる前に、子供の望みや感覚感情を考慮する。

・子供に自身の感覚感情について話すよう励ます。

・子供が恐がっていたり動揺していたら助ける。

・何かをして欲しい場合はその理由を示す。

・親とは異なっているとしても、子供の意見を尊重し、子供が子供自身の意見を表すことを励ます。

・頼んで同意したことを途中やりのままにさせない。

・親の望みを満たすために「報酬」を与えることをしない。

・怒りの感情をぶつけない。

・「愛情を減らす」というかたちの罰を与えない。


完璧なバランスとはいかずとも、1と2のバランスを取りつつ、3を心に留め子供に接することで、随分と違ってくると感じています。



メモ:

・一つ興味深い研究に、ヒスパニック文化についての最近(2009年)のものがある。2の「消極・受身タイプ」が、3の「権威ありつつ信頼できるタイプ」と同じように、子供達に良い結果をもたらすというもの。

 これについては、調査においてどんな 「権威ありつつ信頼できるタイプ」の定義が用いられたかによって、結果も異なってくるといった意見もあるけれど、周りのヒスパニックの人々を見ていても少し頷ける部分がある。

 理性的で自己主張の強い欧米の子供達に比べ、どちらかというと情緒的なヒスパニックの子には、リミットを設け、理性的に説明してというよりも、感情面を包み込むことにより重きをおくことで、うまく育っていくという面もあるかもしれない。

そして、これは日本についても、当てはまる面があるのではないかと思う。


・一昔の前の日本では、1の「独裁・権威主義タイプ」を父親が、2の「消極・受身タイプ」を母親が受け持つことで、ある意味バランスがとれていたともいえるかもしれない。それでも、ジェンダーそして家族のあり方も変わりつつあり、これからは父であろうが母であろうが、個々人がバランスを心がけていくのが大切だろう。



  
参考資料:
Baumrind, D. (1966). Effects of Authoritative Parental Control on Child Behavior, Child Development, 37(4), 887-907.

Maccoby, EE and Martin, JA. (1983). Socialization in the context of the family: Parent–child interaction. In P Mussen and EM Hetherington,editors, Handbook of Child Psychology, volume IV: Socialization, personality, and social development, chapter 1, pages 1–101. New York: Wiley, 4th edition

”Parenting styles: A guide for the science-minded” 
by Gwen Dewar, Ph.D.,

http://www.parentingscience.com/parenting-styles.html

García F and Gracia E. 2009. Is always authoritative the optimum parenting style? Evidence from Spanish families. Adolescence. 44(173):101-31.

長女の診断を前に

2014-03-02 06:12:55 | 子育てノート
十二歳長女、四年ほど前気管支炎になり、吸入器にお世話になったことがあるのだけれど、それ以来、時々痰がからまったような軽い咳をすることがある。全く出ない日も多いけれど、一時間おきほどの日も。より重い症状のある夫が、「ハウスダスト・アレルギー」と診断され、「アレルゲン免疫療法」を始めてからすっかり症状がなくなったので、試しにと、アレルギー検査に出かけた。

医師助手(Physician Assistant)という男性が、診察して下さる。長女の胸と背中の音を聞き、その後受付のお姉さんが、肺活量を調べて下さる。

お姉さん:これ口にくわえて、吸って吐いてを繰り返して。
長女:深い呼吸? 
お姉さん:そうねこれくらいかな、ふ~。(実際に吐いて示してくださる)
(真似をする長女)
お姉さん:次はこうやっては~って。
長女:それは強く吐き出すということ? 
お姉さん:そうそう強くね。
長女:長くということでもありますか? 強く短く?
お姉さん:う~ん強くね。
(は~と長女)
お姉さん:じゃあ次はこんな感じで、ふ~、できるだけ長くもうこれ以上吐けないと出しきったところまで。
長女:弱くてもいいから長くということですか?
お姉さん:そう、長くね。
(ふ~と長女)
お姉さん:じゃあ初めからもう一回繰り返してみようか。

隣でお姉さんと長女のやりとり見ていて、わ、分かりくい・・・と思わずつぶやく私。

診察室に戻ると、医師助手の男性が、不快な症状を一から五までのスケールで表してね、と様々な質問。咳で診察に来たのだから、この不快度は高いだろうねえ、胸の辺りに痛み感じることあるでしょ? 苦しくなったりすることもあるに違いないね。長女、「そういえば、この前、そういう風に感じることもあったように思う。」

そして長女の顔をじっと見つめて、「君はね、喘息なんだよ」と。さっき聴診器をあてた時も、かなりぜーぜーという音(wheezing)が聞こえたしね。(そう言いながら受付のお姉さんがしてくださった肺活量の結果に目を通す)ああ!なんて数値だ! 今すぐ吸入器を出すからね。まずは、このぜーぜーを取り去るために、一日四回吸入器を使って下さい、念のため胸のレントゲンを一週間以内に撮ってくださいね。まあレントゲンは念のためであって、引っかかることはないと思いますけど。あとレスキュー吸入器というのも出しますから。呼吸困難に陥ったら用いてください。一週間して肺の雑音がきれいになったら、アレルギーがあるか調べてみましょう。

「一日四回」と書かれた吸入器とレントゲンを撮るための紹介状を持って車に。長女、「私喘息だったんだねえ」とぽつり。「近いし、予約なしでOKだって言ってたし、レントゲン今撮りに行こうよ」と。

う~ん、ママね、しっくりこない・・・。肺活量検査のややこしさ、四年前気管支炎になった時、最後の手段といった様子でかかりつけの小児科医が吸入器を出して下さったこと。楽になったら止めていいからねと。そんな話をしつつ、この医師助手の指示に従う前に、かかりつけの小児科に相談してみようということで同意。

帰宅し、長女の話を聞いた長男、「その人に今日『喘息』と言われなかったら、きっと自分が喘息だなんて一生気がつかなかっただろうね」と。そう、それほど喘息らしくない喘息。



翌日、小児科医へ。かかりつけの小児科医と同じ小児科グループの医師、前日いただいた吸入器を見て一言、「これは慢性喘息の薬です。例え喘息であっても、私だったら初めからこんなものは出しません。あなたがこれを娘さんに与えなくて、本当によかったです」と。四年前の気管支炎以来、吸入器を使ったこともないこと、それ以来風邪をひいてもそこまで重くなったことはないこと、時々少し痰絡み咳以外は、毎日スポーツもし、いたって元気に過ごしていることなど確認し、胸と背中に聴診器。「何のぜーぜーといった音も聞こえませんよ」

この女医さん、持参した吸入器、ゴミ箱に投げ捨てたあああ~! 

そして私の方へ振り返り、「同意しますか?」と。大きく頷く私。

鼻や喉も調べ、「何の薬もいりません」ときっぱり。

そして、様子を見守り、もし不快感がひどくなるようなら、また診察に来てくださいね、アレルギーテストを受けてみるといいですよと。

最後、「さあ、よかったわね、思いっきり週末楽しむのよ!」と長女の背中を叩き、診察室から送り出してくださった。



これほど極端な見解の違いもすごいことですが、「何だかおかしいな」と思ったら、二度三度意見を聞いて回ることの大切さを、身にしみて思いました。



印象的だったのは、

その医師助手の診察室、日本人形や中国の置物や、オリエンタルなものがたくさん置かれていて、場所も「ウェルネスセンター」というような名前で、西洋医学バリバリとはまた違う対処局所でないホーリスティックなアプローチを目指しているようでもあり。また評判もいいようで、医師二人もいるそのセンターの待合室は満員、実際、夫もその男性による「アレルゲン免疫療法」で、症状が消えたのです。

一方この小児科医は、こちらの一般的な医者、それでもいつも薬をほとんど出さず、「自然治癒力」の力を最大限用いたいという姿勢。

「バイアス」を脱ぎ捨てて、その時その場の「より本当のこと」を見つめていけたらなと思わされました。





その後、長女本人が、女医さんの「全く問題なし」というのにはどうしても同意できない、やっぱり不快感があるので、第三の意見が聞きたいと。

そこで「アレルギーセンター」に連絡すると、予約を取るには「小児科医の紹介」が必要ということで、再びかかりつけの小児科グループへ。今度はまた別の女医さんが診て下さった。

聴診器をあて、「少しぜーぜー聞こえますね」と。

ということで、「アレルギーセンター」に診てもらうまでには多分二ヶ月近く待つことになるだろうから、その間にもし不快感が強くなったら使ってくださいねと、吸入器(慢性喘息用とはまた違う種類のもの)を出して下さった。そして、鼻の通りをよくするために、薬局などで購入できる鼻スプレーもいいですよと勧めて下さった。



私喘息だったんだ、から、私喘息なんかじゃなかったへと一日でがらりと変わり、それでも何だか不快感はあるしと再び診てもらうと、再び吸入器をいただき。長女もたった数日間でのこの診断の移り変わり様に、衝撃を受けてました。将来、彼女本人や彼女の子供や身の回りの人々が様々な診断を前にした時、どう動いていったらいいのか、学ぶ機会になったかなと思ってます。



周りの喘息持ちの方に聞いたり、少し調べてみると、喘息の軽いものや、咳喘息といわれるものは、本人も周りも気づかないまま過ごす場合も多いとのこと。それでも徐々に重くなり肺に負担がかかり過ぎる前に、しっかり治しておいた方がいいという意見も。また夫の例のように、アレルゲンを薄めたものを身体に取り入れ抗体を作るよう働きかける「免疫治療」で、すっかり喘息のような症状がなくなることもあり。

また遺伝が大きいというのも定説のようです。夫の家系には喘息持ちが何人か。

またアレルギーについては、片親がアレルギー持ちだと50パーセント、両親だと75パーセントの確率で子供にアレルギーが出る、また何らかのアレルギーを持っている人は、目の下に「くま」が出易いというようなことを、最初の医師助手の方がおっしゃってました。夫も私も軽いアレルギー持ち。


念のためにと出していただいた吸入器は、今のところ使うことはなさそうですが、四月終わりの「アレルギーセンター」での診察まで、様子を見守っていきます!

「人には二種類あります」ケン・ロビンソン氏

2014-03-02 06:12:40 | 子育てノート
クリエイターであり教育学者でもあるケン・ロビンソン氏は、「人には二種類ある」と言います。

1.今取り組んでいることを楽しんでおらず週末を待ち望んでいる人

2.今取り組んでいることを楽しんでいる人


そして、教育のあり方が、大多数である1の人々を生み出していると。一人一人の心の底からの情熱と、取り組みとが繋がる時、社会は変わる。それには、教育のあり方が変わる必要があると。



氏の描く「教育のあり方」の根幹とは、

1.幅の広いカリキュラム、学習過程の個別化による多様性の促進
 
2.創造的な教え方を通した好奇心の促進。それには高度な質を持つ教師の育成が不可欠。

3.統一テストなどが重視されることのない、オールタナティブな演繹的プロセスを通し、子供達の創造性を呼び起こすこと。



以下は、学校教育に対して私自身が思っていることを、まさに言葉にしてくれていると感じるスピーチです。

ケン・ロビンソン卿: 教育に革命を!

ケン・ロビンソン「学校教育は創造性を殺してしまっている」


教育とは、オーガニックなシステムであり、メカニカルなシステムではないと氏。

とても納得。

では、実際に今この日常で何をしていけば? それを見つめていきたいです。





参考資料:

以上の二つのテッドスピーチの他に、

Ken Robinson - Wikipedia

"Finding Your Element" by Ken Robinson



学習方法の違い、より伸ばしていくために

2014-03-02 06:12:15 | 子育てノート
学習の仕方の違いに、Auditory Sequential Learner(聴覚継次的学習者)とVisual Spatial Leaner(視覚空間的学習者)という分類がある。

以下、聴覚継次的学習者をASL、視覚空間的学習者をVSLと略します。

ASLは、ステップに順次沿い、主に言葉により学ぶ。一般的学校での伝統的な学習方法で、花開くタイプ。

VSLは、ホーリスティック(全体的)に、主にイメージ・絵・図によって学ぶ。伝統的学習方法には、フィットしない場合がある。

特に強い特徴を表すASLは全体の23パーセントほど、特に強い特徴を表すVSLは、30パーセント程という統計がある。


以下両者の具体的特徴について:

AUDITORY-SEQUENTIAL      VISUAL-SPATIAL
Thinks primarily in words             Thinks primarily in pictures
Has auditory strengths                Has visual strengths
Relates well to time                 Relates well to space
Is a step-by-step learner              Is a whole-part learner
Learns by trial and error              Learns concepts all at once
Progresses sequentially from easy        Learns complex concepts easily;
 to difficult material                struggles with easy skills
Is an analytical thinker               Is a good synthesizer
Attends well to details             Sees the big picture; may miss details
Follows oral directions well               Reads maps well
Does well at arithmetic              Is better at math reasoning
                               than computation
Learns phonics easily                 Learns whole words easily
Can sound out spelling words          Must visualize words to spell them
Can write quickly and neatly           Prefers keyboarding to writing
Is well-organized                 Creates unique methods of organization
Can show steps of work easily             Arrives at correct
                               solutions intuitively
Excels at rote memorization          Learns best by seeing relationships
Has good auditory short-term memory      Has good long-term visual memory
May need some repetition             Learns concepts permanently;
  to reinforce learning               is turned off by drill and repetition
Learns well from instruction          Develops own methods of problem solving
Learns in spite of emotional reactions      Is very sensitive to teachers’ attitudes
Is comfortable with one right answer       Generates unusual solutions to problems
Develops fairly evenly                 Develops quite asynchronously
Usually maintains high grades             May have very uneven grades
Enjoys algebra and chemistry              Enjoys geometry and physics
Learns languages in class            Masters other languages through immersion
Is academically talented              Is creatively, mechanically,
                               emotionally, or technologically gifted
Is an early bloomer                     Is a late bloomer



まず、こういった分類を前にいつも思うのは、「そうでもあるけどそうでもないし」や「こちらもあちらも当てはまる」という箇所が必ずあるということ。「千差万別の人」を、紋切り型に分類する方が、元々無理があるのだろう。

私自身は、こうした分類は、特に子供が小さな時分は、本人に知らせないようにしている。「自分はこうだ」という思いが、可能性を狭めることにならないように。

子供が小さな内は、その子になるべく合った環境を整えるための参考として、活用できる部分は活用していけたら。それでも中学生くらいにもなると、本人が自分の「強み・弱み」を自覚し、意識的に調整するために活用することもできると感じている。強い部分をより深め、弱い部分により注意努力を払うための参考として。

長男はASLの特徴もところどころあるけれど、VSLの特徴を強く持っている。小さな頃からとにかく「組み立てる」のが大好き。目の前のもの何もかもが、組み立てる部品に変わっていった。機器を見れば、どうしてそうなるのか知りたくて分解したがる。文章の読解や複雑なコンセプトを理解するのは得意だけれど、スペルミスや計算ミス多発。ドリルや繰り返し練習を極端に嫌う。突拍子もないアイデアが頭を駆け巡っている。人の態度や表情に敏感。教室内に座って学習よりも、外に出て様々な体験を通し、繋がりや文脈のある「イマージョン的」環境でより伸びていくように感じる。「遅咲き」というのも納得してしまう。

長女は、VSLもあるけれど、どちらかというとASLかなといった様子。ある意味満遍なくバランスよく、一般的教室設定の中でも伸びていけるように感じる。


ちなみにVSLの適職としては、 芸術系、建築、エンジニア系、物理、航空学、ビジネス、コンピューター・プログラミングなどが挙げられる。コンピュータに関わる仕事がますます増える将来、VSL的才能がより必要とされるとも言われる。




 今の一般的学校教育はASL向けのものと言われている。言語重視で、時間軸に沿い、簡単なものからより難しく複雑なものへと順次習っていく。VSLは単に「できない子」と見なされることも多いという。


 画一的な教え方で一斉に何十人にも向かって働きかけ、この子はできるできないと振り分けるのではなく、一人一人が「より学べる方法」にフォーカスしたフレキシブルな教育環境が目指されて欲しい。

五人個性様々な子供を育てつつ、そう実感しています。
              

参考資料:

"The Visual Spatial Learner" by Linda K.Silverman, Ph.D., and Jeffrey N. Freed M.A.T.
http://www.dyslexia.com/library/silver1.htm

"The Right Tool for the Job"
by Alexandra Shires Golon http://www.visualspatial.org/files/rttool.pdf

"It Takes One to Know One:
Counseling Needs of, and Suggestions for, Visual-Spatial Learners"
by Michael Davis
http://www.visualspatial.org/files/michael.pdf

Gifted Development Center http://www.gifteddevelopment.com/Visual_Spatial_Learner/vsl.htm

「一人ではまだ大変なんですよ」

2014-03-02 06:10:24 | 子育てノート
夏、ピアノをまた始めたいと言い出した十二歳長女。これから毎日練習できるようだったら考えてみようねと言ったところ、一ヶ月程毎日のように練習し、何とか一年半前にやめたレベルまで戻し。そこでレッスンを秋から再び始めたのだけれど、中学生活、蓋を開けてみれば、宿題課題プロジェクト盛りだくさん、その上運動部も二ヶ月ごとにあれこれ続け、ダンスもありと、夏休みとは打って変わり、なかなか練習時間が取れない。

 いつしか優先順位の下の下になっていったピアノの練習。リサイタルなどで気持ちが盛り上がり、よしっとしばらくコンスタントに練習してみるものの、再び日常の嵐の中で、「他事」が上に積み重なっていく。

 傍から見ていても、普段の睡眠時間を過ぎてまで、ピアノの練習時間を盛り込むのはなあという日も多く、たっぷり時間がありそうなときだけ、「ピアノは?」と思い出させるなどしてきた。



 今週のピアノレッスン、クロスカントリースキーの試合に向けての練習で長女は休み。三女のレッスンが終わり、先生とお話しする機会があった。

 何とか将来的に長女にコンピティションに出る機会をもたせてあげたい。長女はピアノを始めたのも遅く、今まで三年半ほどしかしてないので、幼い頃からしている子のようなハイレベルのものに出ることはできないけれど、それでも、もししっかり練習するのなら、高校生くらいになった頃、また違ったレベルのものへ出られるチャンスもある。それには、今が踏ん張りどころ。今頑張るか頑張るないかが、最後の分かれ目。

 そして、「いくら中学生といっても、まだまだ子供。一人で計画立てて毎日しっかり練習というのは、特に他の事で忙しい場合は、やっぱり、一人ではとても難しいことなんですよ」

 何年もの間、何百人もの親子を見てこられた先生、流石だと思った。長女に対して、「全くの本人任せ」という我が家の親子関係が、すっかり見て取られている。長女には生活から勉強面からほとんど口を出すことのない私、ピアノの練習も、長女の普段の「他の事への頑張り」から、まあしょうがないかなと思うようになっていた。

 毎日最低三十分でもピアノの前に座る、そして中学生になったとしても隣から「もう五度弾いてみて、そこのリズムを直してみよう」など声をかけつつ、一緒に座る習慣を保ってみること、それで随分変わりますよと。

 家に帰り、二人で話し合ってみますとお伝えし、レッスンを後にした。先生のおっしゃることが本当によく分かった。小学中学年の頃は必ず隣に座っていたものの、大きくなるにつれ、全くノータッチに。「まだ大人として扱うには早いんですよ」という言葉に、はっと目が覚めたような気分だった。




 長女の部屋で、ドアを閉め、二人で話し合ってみた。ピアノをどうしていきたいか。今が踏ん張りどころと先生がおっしゃっていること。そして、もしあなたが頑張りたいという気持ちがあるのなら、ママがまだあなたが小さかった頃みたいに、隣に座って一緒に練習してみようと思うと。

 黙って壁を見つめる長女。「まだまだ一人では大変なんですよ」という先生の言葉を伝えた時の、長女の表情が、私の心に突き刺さった。ほっと力が抜けた微笑。ああ長女も、そう感じていたんだなあ。

 
 その夜、何年ぶりかに二人で座って練習。ふざけておどけてはしゃぐ長女、四十分があっという間に過ぎた。そういえば、こうして二人だけの時間というのさえ、久しぶりだったかもしれない。練習が終わり、しばらくして「ありがとうママ」と。そして寝るまでの間中、ハイテンションで冗談を言いはしゃいでいた。その一つ一つの仕草が、嬉しく、そして切なく。

ピアノの練習を、毎晩の二人だけの時間としよう。

先生の言葉を、手のかかからない長女の全般にわたって、覚えておこう。



稲妻のような瞬間を、心に刻んでくださった先生に、感謝を込めて。

活用していきたい三つの動機付け

2014-02-23 09:29:41 | 子育てノート
でもさ、どうしてもやる気の出ない時っていうのがあるんだよね。目の前のこの課題をしないといけないんだけれどね、もう全然やる気になんない時、で、ちんたらちんたら普段の二倍くらい時間がかかったり、と長男。

終わったら、○○しようとか、自分に報酬を用意してみたら?

それだとね、報酬のためにざざっと済ませようと思って、何だかうまくいかないんだよね。

うん分かるなあ、「外発的動機」より「内発的動機」の方が力があるとママも思う。



そんなことを話していると、何年か前に目を通したことのある「モーティベーション」についてのリサーチを思い出し、少し調べてみた。

弁護士Dan Pink氏の理論で、世界でベストセラーになった「DRIVE」。

経済学では、「より報酬(外発的動機)が多ければ、よりモーティベーションが大きくなる」というのが定説。それでも、それは右から左へと何かを動かし続けるといった、よりシンプルで決まったことを繰り返すようなタスクにのみ有効。より複雑で、想像力や創造性を必要とするタスクにはあてはまらない。そして、現代のほとんどのタスクが後者といえる。

それでは、より複雑で想像力や創造力を必要とするタスクには、どんなことが「動機付け」となるのか?

それは、以下の三つの内発的動機付けだと氏は言う:

1.Autonomy 自主性 
2.Mastery  熟達
3.Purpose  目的


1は、自分が手綱を握っているという感覚。

2は、何かを習得し熟達させる喜び。

3は、自分を越えたより大きなものに貢献できるという気持ち。

1については、ドイツのソフトウェア会社での実験例などがあげられる。どこでいつどうやってでもいいから、二十四時間以内に結果を出すこと、という条件を与えた方が、場所時間方法を決められた場合よりも、生産率が伸びた。

2は、何ら外発的報酬に関係なく、何かができるようになっていくということ自体の喜びの大きさについて、例えば趣味でギターを少しずつマスターしていくなど。

3については、ある企業の雇用者に、「より高く売るため」という目的より、「地球環境に優しいプロダクトを無料で」という目的を与えたほうが、生産率があがったという研究結果などがある。



子供達に当てはめてみると、なるほどなあと思う。

1.「宿題しなさい!」という言うより、「今夜の計画は?」と聞いたほうが断然、本人やる気になる。

2.「できた!」という喜びの大きさ。

3.こんな暖かい家で勉強ができる環境にある子供達が、世の中にどれほどいるか。できる環境にある子が、少しでも技術を身につけて、少しでも世界をより良くしていくために何かしていけたらいいと思わない? そんな3に関わる問いは、大人が思う以上に、子供の透き通った心の奥底に響くと感じている。自分の技術を鍛えることが、これからの世の中に少しでも貢献できるかもしれない。目の前の受験やいい学校やいい就職先やといったことよりも、子供というのは本当は、こうした3のような目的を、心の底から欲しているのかもしれないなと思うことがある。目先の目的は、その先のより大きな目的に繋がっているのだと示していけたら。

これらを念頭に子供に接することで、確かに本人のやる気も高まる。



ピンク氏は、様々な実験から、「外発的動機付けは、創造性を潰すことにもなり得る」と言う。確かに一直線に走り抜けるようなタスクにはいいかもしれないけれど、途中様々なハプニングも起こりうる迷路のような道を行くには、より深く響く動機に支えられる必要がある、そうして歩き続ける過程に、創造やインスピレーションの瞬間もやってくる。

これら三つの「内発的動機付け」、活用していきたいです。




参考資料:

TEDスピーチ:Puzzle of motivation by Dan Pinkhttp://www.ted.com/talks/dan_pink_on_motivation.html
RSA Animate - Drive
http://www.youtube.com/watch?v=u6XAPnuFjJc#t=8
”DRIVE” by Dan Pink

育てたい七つの特性

2014-02-23 09:29:15 | 子育てノート
1994年にヒューストンで始まったチャータースクールKIPP。現在二十州141の学校で、五万人近くの生徒が学んでいる。生徒の大多数が、低所得家庭、移民、アフリカンアメリカン。

99年には、ヒューストンとNYの学校がコミュニティーでトップに、数々名門校のあるニューヨーク全市でも五番目に高いスコアで最初の中学卒業生を送り出す。http://www.kipp.org/(クリップみてその雰囲気に感動)

「大学への山を登れ」をスローガンに、大学に入学し、卒業しキャリアを積むスタート地点に立つことを目標としている。

現在KIPPでは、「キャラクター通知表」というものが用いられている。そこでは、以下の七つのキャラクターが評価される。

Grit      タフさ・やり抜く力
Zest        熱意
Self-Control     自制心
Optimism      楽観
Gratitude      感謝
Social Intelligence 社会的知性
Curiosity      好奇心


これらは心理学者SeligmanとPetersonの「人が良い人生を送るために必要な24の特性」の研究から、KIPPの創設者Levin氏 とNYの名門私立Riverdale country School校長Randolph氏が、心理学者Duckworth氏の協力を得た調査を通し見出したもの。

今日の「賢さ」の主な指標IQが高かろうが低かろうが、成功していくのは、これらの特性のある人々だと。


一方、米国でトップレベルの私立学校の校長Randolph氏、「七つの特性」を育むカリキュラムを導入しようと思うにも、様々な問題点にぶつかる:

・「通知表」という形にするのなら、「A」を取るためにこぞって準備を始める家庭が多いだろう。これらの「特性を身につけるため」というより、「Aを取るため」という目的の方が大きくなってしまう。

・親が米国で最も成功した層であり、学校側から「どうしたら成功するか」を教えてもらいたいという立場にはない。

・毎年多くの生徒を名門大学に送り出しており、「大学へ行く」ということがあまりにも当たり前で、「七つの特性を身につけ大学への山を登ろう!」といったKIPPのようなスローガンは効力がない。

それでも、Randolph氏は、「より深い意味での成功」には、「七つの特性」が必要だと考える。

氏は、上流層にフィットするよう最高のパフォーマンスを親から期待され続ける子供達が、いかに不幸せであり得るか、心理学の研究を挙げる。親達は、子供達が飛びぬけてできるよう背中を押し続けつつ、同時に、子供達が「失敗」しないようあらゆる網を張る。人生に必要なスキルや性質というのは、「失敗」したときに最も学ぶにも関わらず。

困難にぶちあたり、失敗を繰り返すからこそ、「七つの特性」は磨かれる。それでも「上流階級」にある子供達は、何にも「失敗」しないよう周りから万全に守られており、「より深い意味での成功」を手にするための機会を取り去られていると、Randolph氏は考える。

Randolph氏自身、ボーディングスクールから、ハーバード大学に入ったものの、自分というものを完全に失ってしまっていたと。そこで休学して大工の見習いとなり、卒業してからも、イタリアで低い賃金の仕事をしながらオペラを何年か学ぶ。何度も何度も失敗し、そうしてようやく、より深い意味での成功を得るための知恵を身につけたと。



低所得者層の困難な状況にある家庭、米国の上流トップ層に関わらず、「失敗」や「困難」に向き合うことで、子供達は成長する。「困難」続きの子供達に、越えていくためのサポートを、恵まれた子供達に失敗させ乗り越える機会を。

両方の要素をもった移民中流家庭の我が家、失敗させないサポートより、失敗させ立ち上がらせるサポーをしていくこと、覚えておきたいです。



参考資料:
KIPP http://www.kipp.org/
”What if the Secret to Success Is Failure?” The New York Times
http://www.nytimes.com/2011/09/18/magazine/what-if-the-secret-to-success-is-failure.html?pagewanted=all&_r=0

長男の高校考

2014-02-23 09:27:40 | 子育てノート
 来年から高校生の長男、AP(アドバンス)クラスやIB(国際バカロレア)クラスが始まるまでの二年間(こちらの高校は四年間)、ホームスクールをしてみようかという流れになりつつある。高校のHGプログラム(英語に力が入れられ課題量半端でない、数学なし)やオナーズクラスの情報を集めるにつれ、そう傾きつつある。

 「カスタマイズされた学びのあり方」を模索してみようと。脳の作りが人によって違うのならば、その能力を伸ばす方法も人によって違うはず。学業面は、オンラインコースやチューター(州政府からホームスクール援助金が出る)などで、弱い面を集中的に磨き、強い部分をより広く深く伸ばし、そうより効率的に学業面の力を蓄えるなら、本人の渇望するスポーツ(ホームスクールしていても公立高校のチームに参加できる)、ロボティックス(自分のチームと共に小学生チームのコーチなど)、NPO活動にも精力的取り組んでもいけるのではないだろうか。その合間に、廃車場から部品を少しずつ揃え、「車」(乗られるもの)を作りたいとも言ってるのですが。(笑) 

 こちらは、ホームスクールのカリキュラムも随分と充実している。

 私自身を振り返り、大検という制度を活用すれば、もっと有意義な高校時代をおくれたのじゃないかなと思うことがよくある。電車に揺られ、ぼーと授業を受けと過ぎていった毎日。やるぞと集中した自宅での一時間の方が、「教室でデイドリーム状態」の何倍も力をつけることができた。だから長男が思い描く高校生活というのが、とても自然に思えるし、そんなチョイスがあるのならばと、かなり肯定的に考えてしまう。

 年齢の低い段階でのホームスクールは、キンダーと小学一年生を我が家も体験したけれど、「親」がメインに関わる必要がある。それでも高校生にもなると、コミュニティーの中に「自分」で切り開いていく必要がある。自らカリキュラムを立て、遂行するため自分を律する必要があり、そういった訓練ともなるでしょう。

 五人見ていても、本当に皆違って。既成のストラクチャーの中で花開いていく子もいれば、外に飛び出すことで生き生きと伸びる子もいるのじゃないか、まっすぐ進んでいける子もいれば、たくさん寄り道することで力をつけていく子もいるのじゃないか、そんなことを思いつつ。


 まだ決定ではなくて、一つのオプションとして模索中。まずは一年試してみるという選択も。周り身近な高校ホームスクール体験者の話も含め、情報を集めていきます。

歯ガタガタ、舞台恐怖症

2014-02-23 09:23:00 | 子育てノート
土日と長男長女がNPOの合宿へ。長男は、ここ二ヶ月程練習していたチームでのプレゼンテーションをすることになっていた。発表直前、初めて歯ががたがたするほど「上がった」のだそう。今まで、学校やいくつかの大会などで発表、ということはあったけれど、傍から見ていても結構平気そうだったけれど。とにかく、これほど緊張したのは、初めてだったそう。

「あがる」ということについて調べていると、

準備をしっかりする、早く晴れ舞台に立って皆さんに伝えたくてしょうがない、というほど準備をする、というのに互いに納得。

私自身振り返っても何をして何を言ったらいいのかが分かっていたら、どんな大勢を前にしても「あがる」ことがなかったのを思い出す。あとは場数、慣れでしょう。

こんなTEDのスピーチも、よかったです。http://www.ted-ja.com/2014/02/joe-kowan-how-i-beat-stage-fright.html

シンガーソングライターなのに極度のステージ恐怖症だった話者、自分の弱みを歌にし、会場中と共有することを繰り返す内、ステージ恐怖症が溶けていったという話。

極度のステージ恐怖症から、ステージに毎週立ってみようと決意したの、まさしく、「成長型マインドセット」だなあと。「自分はステージ恐怖症」だからと、諦め、ステージを避けるのでなく、毎週ステージに立ち、工夫し。良くしていく「過程」だと信じて。

TEDの観衆に見守れながら、気持ちよさそうに歌う彼の姿が印象的でした。