「R62号の発明・鉛の卵」安部公房(1956) 1974新潮文庫(2004、30刷改版)
作者30歳前後の作品
人間の物質化ですか、そうですか。解説は便利なようでいて、作品を味気なくもするね。
今日の人間が疑わずに持っている諸観念の大胆な検証ですか、そうですか。
- 「R62号の発明」自殺を考える男を生きたロボット化、『一番安い天然資源』としての人間の有効利用。どの時代も変わらない、特に今では安倍政権にその片鱗を見る考えたかもね。で、技術ばかりで心(心理)を無視した作品R62号の、まるで復讐を果たしているかのように見える発明。
- 「パニック」泥棒がいるおかげで法律家も政治家も仕事ができ、保険屋や警察にも仕事が増えて経済が回る。だから、泥棒が社会を回していてもおかしくない、その大きな組織があっても。
- 「犬」犬と戦った男(友人)の話。本当に犬が話したのか?気が違っただけか。
- 「変形の記録」死んで魂になりまして、閣下が他の肉体に乗り移るのを見て、どうやるのか確かめようとついていく。
- 「死んだ娘が歌った」死んだ娘が魂になりまして、家に戻って家族の様子を見、同じように不遇な死を迎えた仲間たちにまみえる。
- 「盲腸」羊の。人に移植。人が藁を食べるようになれば飢餓問題も解決されるという実験。まるで『温暖化問題』のような展開、それが捏造だと知ってもすでにそれは思想となって転換することができない。藁への欲求は。
- 「棒」息子の目の前で落ちた男は棒になった。棒はありふれており、その罰は放置。ああ、アニメ「デス・パレード」でも虚無と再生の2択ではなく、放置っていうのがあってもいいじゃないかと、目からうろこ。「棒になった男」ってのもその後に書かれるんだね。
- 「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」人肉こそが高価値資源。完全にすれ違う価値観。豊かになれば君たちだって食えるよ、と。
- 「鍵」錠前工のおじさんが錠前やぶりになっていた。
- 「耳の価値」思うようにならない保険詐欺。安部公房、自分の名前(存在)を作品内に。
- 「鏡と呼子」村の中の情報屋。いらないものだけど手放せない。まるで今のIT時代を予言するように。
- 「鉛の卵」100年後に目覚めるはずの冷凍睡眠だったが、目覚めたのは80万年後、植物人間の世界。と、実はさらに12万年後の”どれい族(近人類(労働者))”の世だった。子孫たち、文明の変遷。
多くの作品が仕事を無くしたものが、外の世界を見るような展開であるわけで。
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