溜息がとまらない

風邪が流行っているが

当店のママやチーフ、週末バイトの大ちゃんやラスカルまでが

ひいてしまったようだ

月～木まで２人で店を守っている私とヒデミさんだけが

無事なのも皮肉なものだ


昨夜は金曜なのでママも仕方なく？出勤していたが

「もう無理矢理出て来たんだから

　ラスカルさん明日は休まないでね…」と

釘を刺していたが

「いやァ私も明日はどうなるか分かりません」と

切り返されたらしい


ラスカルは先週金曜日の営業終了間近に

咳込んでいた

きっと土曜日は休むだろうと思ったら

案の定、夕方にメールが届いた

営業中はいつものＫＹトークで同席のスタッフの会話を止め

女性客にはさかりのついた犬みたいに盛んにアプローチをかけている

彼女は性転換までしているが

女性にしか興味がなく

キャバ嬢がアフターで来店すると

同伴してる男性客などお構いなしに

自分のマニアックな写メなどを見せて喜んでいる

おまけにカラオケではお客様を差し置いて

「愛の賛歌」をバカデカい声で熱唱している

絶好調ではないか…

それなのに

「具合が悪いところを無理したもので

　本日は休ませていただきます」である


午前零時から出勤のノンケの大ちゃんは

先週の金曜日に「風邪引きました」と留守電に電話があったのを最後に

今週はまるで音沙汰がない

そのままバックレなのだろうか

２０歳のノンケがオカマバーでバイトする事自体キツい

元々社交性豊かなタイプではないのに

ママがいつもの気紛れで、彼が遊びに来てるところをスカウトした

客席ではまるでオブジェである

興味を示したお客さんが話をふっても

ハイ、いいえくらいしかリアクションがなく

会話にならない

「もうアノ子は来ないつもりかしら？」

ママが私に聞いてくる

「多分来ないんじゃないですか…」


昨夜閉店寸前にナカちゃんが若い男の子を連れて来店した

ナカちゃんは駅の反対側でスナックをやっていて

息子さんもウチの近所で串カツのお店を出している

私はテーブルにお邪魔しなかったので

連れの若い男の子がどう言った知り合いなのか分らないが

早速ママが電話番号を聞いている

「大ちゃんの代わりにアノ子どうかしら

　結構お喋りも達者なようだし…」

彼は別に面接に来たわけではない

しかもノンケだし

一体ママは何を考えているのだろうか

溜息が止まらない