クラシックに耳を傾ける犬

出勤時に更新している

駅に向かっていたら

ある場所からクラシック音楽が聴こえて来た

お仕事疲れの帰宅民を癒すかの様に

それは夕暮れの街角に優しく響いていた

以前は補聴器を取り扱う店だった様だが

店の前にはガラクタ(失礼)が幾つも置かれ

ガラス張りの店内では

作業机に向かって店主らしきオジサンが

細かい仕事をしている風が

外から窺えたものである

店の外壁には看板の代わりに

補聴器の名称が立体文字で貼られていた

たまに店内に置かれたオーディオから

クラシックが洩れ聴こえてた事はあるが

今日は明らかに店の外に

小さなスピーカーを置いて

音楽を鳴らしている様だった

近所迷惑にならない程度の音量で

なおかつ流している曲も

夕暮れに相応しい静かなものだった

その店の向かいの建物の隅で

何かに腰を下ろして休憩している男性

６０代くらいで定年を過ぎた辺りに見えた

彼の事は仕事から帰って来る道すがら

時々見かけるのだ

いつも可愛い犬を散歩させている

白と黒のブチで雑種と思われるが

まだ若い犬だ

男性は散歩の途中で休憩している様だ

いつもの愛犬も

横で穏やかな表情をしている

二人してクラシック音楽に

耳を傾けているかの様だった

その様子がとても微笑ましくもあり

慌ただしい出勤時に一服の清涼剤だった

因みに店内には以前のオジサンではなく

その息子さんだろうか

若い男性？あるいはマニッシュな女性が

一人で机に向かっていた

壁に貼られた補聴器の名前は

いつからか剥がされている

あの店主とおぼしきオジサンは？

頭の中をいろんな事がよぎったが

素敵な夕暮れのひとときを

一瞬でも共有できた事が嬉しかった