男前二態

せっかくの日曜も夕方から雷雨になった

私の様な夜の商売は夕方から活動するので

雨が降ると何処へも行けなくなる

結局傘を差してサミットストアへ行く羽目になった

先週と同じパターンだ


ちょうど刺身の盛り合わせに値引きシールが貼られる所だった

先週は揚げたてのコロッケに人が群がってたが

今週はカキフライが揚がったばかりだった

揚げ物に目がない私はノドから手が出たが

買い物カゴには刺身が入っている

一人の寂しい食卓にこの二つを乗せるのはどうか？

ってか組み合わせも変だ


逡巡してたら横をジャージのオヤジが通った

「あらやだ！タイプだわ」

５０代と思われるが若々しく

スポーツウェアに日焼けしたマッチョなボディを包んでいる

奥さんの方もテニスかなんかやってる雰囲気

「まあ羨ましい！今夜は肉でも食ってベッドでは野獣になるのかしら？」

全く下品な想像をしてしまう私


そう言えば今朝の電車でも素敵な男に目を奪われた

折り畳みの自転車を抱えて乗って来た彼は

いかにもトレーニングジムに通ってますと言った風貌

若い頃のやしきたかじんの様な苦みばしった顔

短髪、色黒、筋肉質と私へのご褒美かと思った

膝丈の短パンからはショートスパッツが覗いている

ラッキーにも私の真向かいに腰掛けた彼は

さっきから携帯でメールを打ちまくっている

その隙にじっくりと素敵なボディを目に焼き付けさせていただいた

幾つぐらいだろうか

４０は越えているようだ

嘗め回すように執拗な私の視線に気付いて

時々顔を上げるのだが

目と目が合わないようにサッと窓の景色に視線を移す私

写メで隠し撮りをする人の気持ちがよく解る

シャッター音さえしなければ…


そんなこんなで降りる駅が近付いた

後ろ髪引かれながらも席を立つ

「やだ～、もっと見て居たいわ」

どこまで行くのだろうか

江ノ島の方だろうか

電車を降りても振り返りたくなるようなイケメンだった

またいつかこの電車で逢えますように