ひばりチャン

「世界の恐怖映像２００８」を見たわ

心霊系の映像を５０本紹介する番組なんだけど

映画「サスペリア」「ＥＹＥ」の様に

監督が意図的に挿入したヤラセも入ってたわ

どこまでホントなの？って首を傾げたくなるようなモノも

多かったのよ


私は昔から怖いモノが大好きなんだけど

オカマになって最初に勤めた店はキモかったわ～

その店は古いビルの地下に入ってたの

長く続いてる店だったので、お客様やオカマの中には

この世を去った人も居たみたい


ある冬のヒマな日、ソレは起きたの

お客様は熱心なひばりファンの女性が３名だけ

薄暗い店内にはママが持って来たひばりのテープが流れてたわ

「ひばりチャンはこの頃が最高よね！」

「ドームの時は声が出てなくて痛々しかったわ」

テープの歌に合わせて

「お嬢！！」

「ひばりチャン！」

と掛け声も忘れない

興味ない私は、早く次のお客さん来ないかな～って思ってたの

すると階段の上の扉が開く音が聞こえたの

キ～ッ

「いらっしゃいませ～」

私は階段の方に迎えに行ったんだけど

誰も居ないのよ

ガッカリして席に戻ったら

ひばりファンの３人の目が私の後方を一斉にパンしたの

えっ？誰かが私の後ろを通ったのかな

その途端

ギャ～！！！

生理が上がったオバちゃん達の悲鳴はドスが効いてて

地鳴りのようだったわ

「いまアンタの後ろを女の人が通って消えたのよ～」

オバちゃん達の後ろは鏡張りなの

向かい合って座ってる私の後ろを誰かが通れば

鏡越しに見えるはずよ

さっき席に戻ってヅラの具合を何気にチェックした時には

誰も居なかったわよ

「きっとひばりチャンが来てくれたのよ！」

短髪のフミヨさんが叫んだ

他の２人も相槌を打つ

「お礼に私が歌うわ」

そう言ってファン歴が短いサトコさんがマイクを握ったの

♪あいッ　さんさんと～



もし、ひばりサンが居たならテーブルひっくり返してたわ

と、その時　

店の電気が一斉に落ちたの

な、なんなの？

暗闇の中で野太い悲鳴が響く

レイコさんが懐中電灯を探すも見つからず

ライターをかざしてロウソクを発見

小さな光を頼りにブレイカーをチェック

しかし正常なのよ

外に出て同じビルの他のフロアを見るも

停電の様子はないの

店に戻ったら３人が揉めてるの

「アンタが下手くそだからひばりチャンが怒ったのよ！」

ろうそくの光の中、オバちゃん３人が罵り合う姿は

もっと怖かったわよ～