夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

最後に勝つのは「誠意」だ

2010年10月19日 | 社会問題
 先日、日経新聞の木造建築の復権に関しての態度を甘いと非難した。でも甘い理由はその時から分かっていた。日経は株式に投資するような人々を読者にしている。金儲けを第一に考えている企業やその仕事人を読者にしている。木造建築の復権などよりも、最新のテクノロジーを駆使した超高層ビルの方が彼等にとっては魅力的なのは言うまでも無い。
 だからと言って、私は金儲けを非難しているのではない。ただ、節操のない金の亡者を非難している。身近な話をする。息子の勤めていた会社が潰れた。それは世界一の航空関連の会社の日本支社の、それも成田支店の話である。出資しているのは某有名な一流商社である。その商社は安さを武器に乗り込んで来て、ある航空会社のメンテナンスの仕事を半分、強引に奪った。しかしけちくさい根性だから、高価な機材は買わない。安い機材で出来る仕事しかして来なかった。
 そして、その航空会社がもっと大きな会社に吸収合併された。航空会社は似たような仕事を二社に請け負わせるのは損失が大きい、と一社に集中させる方針を取った。安い機材で一部の仕事しか出来ない会社が仕事を続けられるはずが無い。安さが武器だから、当然に給料も低い。航空界で意義有る仕事をしよう、と言う精神ではない。何とか安上がりに儲けたいとの根性しかそこには無い。商社の根性丸出しなのである。仕事なんて何でも良いのである。儲かりさえすればそれで良い。社員だってどうでも良い。単なる労働者に過ぎないのである。
 当然に、潰れた会社の人員は本来の会社に吸収される。そうしなければ、仕事は動かない。だから、単なる経営陣の交代劇とも見る事が出来るが、何しろ、動機が動機である。ああ、そうか、などと言っていられない。個人的な事だが、息子はその会社への移籍を断った。仕事を取られた恨みがあるから、その会社の社員達の息子の居た会社へのいやがらせは執拗だったと言う。そんな程度の低い連中の居る会社なんかに誰が行きたいもんか、と断ったのである。
 幸いに息子は認めてくれている人からの紹介で、羽田で新しく仕事を始める会社に就職が決まり、11月1日から出社する。私達が住んでいるのは東京の東部の湾岸に近い地域だから、成田への4分の1ほどの距離しかない。持ち出しだった通勤費は大幅に浮くし、時間的にもゆとりが持てる。何よりもその会社には、「今の所は」未来がある。値下げして仕事を取ったのではないからだ。ただ、航空業界は極めて流動的らしいから、先の事は分からない。

 この不況の時代、誰もが必死になっている。しかし同じ必死になるのでも、なりふり構わずでは駄目なのだ。自分勝手ではやって行けないのである。市況を見る、と言うが、多くの企業家がカネしか見ていない。人々にとって、何が必要で大切であるのかを見ていない。
 初めは儲からなくてもいいじゃないか、人々に自分達のサービスが何であるのかを認めてもらう期間なのだ、と考える事が重要だろう。もちろん、大幅な赤字続きではやっては行けないが。それと、消費者に本物を見分ける力が無ければ駄目だが。今までは、多くの企業が消費者を育てる事を怠って来た。消費者は自分で育つのではない。育てられるのだと私は思っている。
 じゃあお前はそれが出来るのか、と言われても私は引き下がらない。誠意は絶対に伝わる。問題はどうやって誠意を伝えるかにある。そのノウハウと利益を上げるノウハウとは違うはずである。安いサービスだけが誠意ではない。安くはないサービスで誠意を見せるのは本当に難しいと思う。でもだからこそ、そこに商売人の生き甲斐があるのではないだろうか。そしてその生き甲斐はカネが目の前にちらついていては、生き甲斐にはなり得ない。