議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

予算の自然成立

2022-03-21 | 憲法
〇日本国憲法第60条

2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

〇日本国憲法第86条

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

憲法第60条第2項は、憲法第86条に定める議決を経ずに予算を成立させる予算の自然成立を規定しています。

予算の自然成立については、2パターンあります。

〇両院協議会を開いても意見が一致しないとき
〇参議院が衆議院送付案を30日以内に議決しないとき

今回は、後者の参議院が衆議院から送付された案を30日以内に議決しない場合について概観します。

これまで、参議院が議決せず予算が自然成立した例は、昭和29年度予算、平成元年度予算の2例あります。

それぞれに混乱する要因はあったにせよ、参議院が議決権を行使しなかったことは二院制の意義を没却させるものであり、避けなければならない事態です。

よって、平成元年度予算の例を最後に参議院が30日以内に予算を議決しなかった例はありません。

ここで、30日以内とは、いつが起点でいつまでなのか、ということについて令和4年の例をもとに考えてみたいと思います。

令和4年度総予算3案は、令和4年2月22日に衆議院本会議で可決され、同日参議院に送付されました。

憲法第60条第2項に「参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後」とあるため、とある参議院元議長が受領を拒んだり遅らせようとしたりしたこともありましたが、衆議院が送付した日から起算されることになります。

令和4年度予算の場合は、令和4年2月22日が起算日となり、そこから30日目が令和4年3月23日です。

参議院に31日目がない以上、参議院が令和4年度総予算3案を議決するための本会議を3月22日にセットすること自体は自然成立を避けつつ、期日直前まで審査を尽くした(ようにみえる)という点において理にかなっているといえます。

令和4年度総予算3案は3月22日に成立することになりますが、仮に予算案採決のための本会議が3月23日にセットされ、なおかつ混乱した場合、気になるのが30日目の最後の時刻です。

3月23日午後12時(30日目)なのか、それとも3月24日午前0時(31日目)なのか。

過去には参議院送付後31日目を自然成立の日と解釈していたこともありましたが、必ずしも解釈が明確でなかったこともあり、昭和60年に30日目に自然成立とすることの見解が確立されました。

常会が1月に召集され、常会の会期が150日と定められている以上、ほぼあり得ない想定ですが、参議院送付後30日目が仮に会期末とすれば、後者の午前0時説をとった場合、会期内に議決ができないことからやはり30日目の自然成立となるのです。

最後に、平成元年度予算自然成立時の読売新聞社説の抜粋です。予算案は議決を含め、その賛否はとても重いものです。
「予算審議と予算の議決権は、国会の最も重要な役割のひとつだ。政府が行おうとしている政策のすべてが、予算案に凝縮されている。」

最新の画像もっと見る