金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦64 2020年9月はやきもちの月

2009-05-04 13:09:06 | コードギアス
プロポーズ小作戦64
2020年9月のやきもち

中華は暑いから夏の間はブリタニアに居たいな。などと、勝手な事を考えていたスザクだが現実にはこの夏はほぼ中華を拠点とした。理由のひとつは蓬莱島が近いこと。そして、うっかり忘れられていたのだが、漆黒の騎士団の存在である。
ゼロ・レクイエムの後、黒の騎士団のうち各国の正規軍は自国に帰っていったがすでに帰る国の無い者もいた。また、帰る国のある者でもすでに戦闘中毒にかかっていて、平和に適応できない者もいた。扇は各国軍が帰国した後、原型黒の騎士団とも言うべきほぼ日本人で構成されたテロリスト時代のメンバーにも、なるべく普通の生活に戻るように声をかけた。扇自身が退役1号になった。南、玉城など古株のメンバーも抜けていき、もと軍人は正規軍に組みなおされた。
残ったのは国籍人種いりみだれた戦闘中毒者達。カウンセリングも行なわれたが、イシュヴァール、ベトナム、イランなど歴史の例を見ればわかるように人間の脳は簡単には切り替わらない。
そのうちに一部の中毒者は傭兵の世界に拠を移した。あまりにも傭兵が増えるのは世界平和のためには危険だと、藤堂は残った戦闘中毒者を漆黒の騎士団と仮称し自分の指揮下に置いた。残ったのは日本人および東洋系の人種が多かったから、国際的には原型の黒の騎士団に戻ったように思われているが、実際は古株のメンバーはほとんど普通の生活に戻っている。
漆黒の騎士団には20代の若者が多かった。彼らには戻るべき普通の生活というイメージがそもそも無かった。
物心付く頃には戦争があった。戦いが死が、当然としてある。少年期のスザクやルルーシュが見たものを彼らも見た。友達も知り合いもいなくなった。親戚も家族も、そんな言葉すら意味をなくした。
スザクは特殊な例として厳しい監視と虐待のなか生きたが、そのスザクすら最低の例ではなかった。
学校にもろくに行けず戦う事だけを覚えて生き残った。
戻るべき世界は彼らの中には存在しない。だから漆黒の騎士団は自分達を救い上げた藤堂を父のように思った。
藤堂と並び立ち、自分達に戦う場所を与えた大司馬は総司令であり大事な兄貴分だ。さらにゼロ、前のゼロではない。3代目こそは自分達のゼロだ。ゼロは自分達に戦う理由と正義を与えてくれる。

星刻は漆黒の騎士団が自分の支配下にあることを、多くの国のためになる事だと言い切る。
まず日本は不安定な分子を抱えずにすむ。
ブリタニアをはじめとして各国にとっては、増えすぎた傭兵がトラブルの種になる事を防いだ。
そして、中華。今まで大宦官付という特別待遇ゆえに、直属の部下をほとんど持たなかった星刻は強力な私兵集団を得た。

道場の同盟で一番得をしたのは星刻であった。




残暑厳しい折、ジノは天子を乗せて舟遊びとしゃれ込んでいた。
もちろん、朱禁城にも冷房はある。しかし、建物が古すぎて、おっと失言だ、伝統的過ぎて、ほとんど効かない。

天子が蓬莱島に行きたがるのも無理は無い。あそこは電子機器を置くので、自家発電をフル稼働して常時20度以下である。ただ、いくら自国内といっても天子の身分では簡単に出歩けない。そこで城の中でも楽しめるようにジノが小型ボートを浮かべた。伝統的な竜舟を浮かべるはずの大池に、ど派手な水しぶきが上がる。
ジノが持ち込んだモーターボートは5人乗り。スピードを上げれば水しぶきとともに暑いのも吹き飛ぶ。
「きゃー速い」
はしゃぐ天子の声。対比的に池の周りで悲鳴をあげる女官達。

「天子様、危のうございます」
「あぁ、あのようなはしたないお姿で」
別に天子は裸でいるわけではない。ごく普通の半そでシャツと半ズボンに救命胴着を着ているだけだ。
2次成長の遅さもあって、反ズボン姿の天子は活発な少年に見えてくる。
別にジノは大騒ぎをしているつもりも、大騒ぎをさせるつもりも無い。この暑さにすっかり参っている天子を楽しませてやろうと思いついただけだ。それに形ばかりの会議とはいえ、初めて一人で取り仕切った天子にごほうびがあってもいいじゃないかと思う。
女官達は岸辺で大騒ぎしながらも、決して大司馬に連絡しようとはしなかった。あの過保護、溺愛、過干渉の大司馬に今の天子の姿を見せたりしたら、・・・ジノを切り殺しかねない。
愛情がありすぎて通り越しちゃうタイプというのが、女官達の星刻に対する総合評価。
本気の相手としては受け止めるのに大きすぎるが、浮気相手なら理想というのが国際的な貴婦人達の評価。


2020年9月時点で天子は15歳。ジノは20歳。そろそろナナリーもジノを自由にはして置けなくなる。今までは子供だからで何とか通した。しかし、すでに20歳。ジノもわきまえている。この舟遊びは天子とのお別れでもある。
ジノはボートを池の真ん中で止めた。
「天子様」
いつも天子ちゃんとか姫天子ちゃんと呼んでいたジノから初めて聞いた響き。
天子の表情も変わる。彼女ももう子供でない。例え、本気でコウノトリを信じていたとしても。
「私に帰国命令が出ました。皇帝陛下からの」
「帰るのね」
天子の声もさっきまでのはしゃいでいた声とは違う。
国際会議で見せた国の長としての強い声。
「また、中華を訪れる事もあります」
「そのときはヴァインベルグ卿なのね」
「はい」
「お別れの宴は開かないわ」
最後まで普通のお友達でいてと天子は言う。
「ご存知でしたか。私は当て馬としてここに来たのですよ」
「ライバルね」
天子は神楽耶から仕入れた知識で翻訳する。
「そうですね。決定打にはならなかったようですが」
「わたし、星刻が好きよ。星刻との赤ちゃんが欲しいわ」
「それを言えますか?星刻に」
「わからない。でも星刻との赤ちゃんは欲しいの」
このとき男女には大きな理解の差が合った。だが、理解の溝の深さにはまるのはジノではない。


翌日、ジノはブリタニアに帰国した。


ジノも天子も知らなかった。誰にも知られず話せる場所として選んだ池の中央。そのボート上の姿をある男に見られていたことに。
特に半ズボン姿の天子がジノを抱擁したシーンに、危うく血管が切れかけた。それは音声を伴えばごく普通の別れの挨拶だとわかるはずなのだが。
嫉妬とは自分が本心ではやりたいことを誰かがやってしまうときに最も深く重くのしかかる。
まったく外気に触れたことの無い真っ白の生足の天子がジノに抱き上げられる。それはボートから安全に降ろすためだったのだが、わかっていても納得できない。

もしここで男が姿を現せば、おそらく天子はジノに対して言った言葉を口にしただろう。
「星刻、あなたとの赤ちゃんが欲しいの」
その意味が『一緒にコウノトリを探しに行こう』であったとしても男は全て受け入れるだろう。自分が教えたのだから。

しかし、男は姿を現さなかった。彼には中華の支配者としての立場があった。
嫉妬心をあらわにするなど絶対に許されない。それに男のプライドは嫉妬心の深さに対抗できるほど高かった。


「あれもねぇ、つまんない意地を捨てたら、すぐ幸せになれるのに」
蓬莱島で神虎の母がプログラムを修正しながら白虎に話しかける。
手のかかる子ほどかわいいというが、神虎は本当にかわいい子で、相棒まで放っておけないほどかわいい子である。


プロポーズ小策戦63

2009-05-04 08:30:48 | コードギアス
プロポーズ小作戦63
2020年9月
夏が暑いのは当たり前だと日本人は思う。まぁ、今年は特に暑かったが。
しかし、スザクは思う。ブリタニアは涼しくて過ごしやすかった。
中華に鞘を預けたと見られているゼロ・スザクだが本人にはそこまでの自覚は無い。
シュナイゼル以外に星刻の頭脳も使えるようにルルーシュがしてくれた。まるでルルーシュが誕生日のプレゼントをくれたみたいに。その程度の認識である。
プレゼントとしては、星刻はいささか毒成分の多い存在だが、スザクは気にしない。そもそも猛毒のシュナイゼルを利用しているのだからそういう存在には慣れている。
さて、いったん蓬莱島に寄った後、スザクがいるのは朱禁城。それも内宮に近い離宮。
今、この離宮には誰もいない。スザク以外は。大司馬の厳命で、ゼロが滞在する間は何人といえど近寄る事さえできない。ありがたい対応ではあるが、スザクとしてはせいぜい一部屋でいい。それなのに100人が滞在できる離宮を丸ごと提供された。スザクが使っているのは一番狭い一部屋だけである。もったいないなぁとつい思う。名家の嫡男として生まれたが、人生の大部分を下積みの下級兵士としてすごしたスザクは、貧乏性だった。
ジノなどは同じような離宮を我が家のように使いこなしている。そういう点も根っからの貴族である。

プロポーズ小作戦62

2009-05-03 22:45:07 | コードギアス
プロポーズ小作戦62
2020年8月初頭
実のところ、会議は形式的なものに過ぎない。
政治のプロが天文学のプロである必要はない。
必要なときに必要な専門化を利用できるシステムがあればいい。

今回の会議のきっかけは、自国の被害を隠さず口にした扇の言葉。それに対して各国からも同時点に被害があったとの意見が出始めた。政治家として扇の判断は英断とたたえられているが、実のところ事実を隠しても仕方が無いという扇の人生観が出たに過ぎない。
その言葉を拾い上げ、「これは世界の危機であり、地球の悲鳴である」と口にしたのはシュナイゼル。
さらにそれに応じて、「世界は人類のものだが、地球は生命全てのもの」だ。
「地球の危機を乗り越えるために、世界は今一度原点に却って集まろう」と公式コメントを出したのはゼロ・スザク。
このコメントはシュナイゼルの言葉に対応しての事だと、当初受け止められた。しかし、ゼロ・スザクとタイミングを合わせて会議を提唱し、その前段階として科学者の集まりを開いたのは中華。

世界は新しい認識をした。ブリタニア寄りを言われていたゼロは、中華に鞍替えしたのだと。
となると、中華のコメントは天子が出しているが内容は全て、あの大司馬からなのは常識。
3代目ゼロは偉大な2代目ゼロの同盟者に鞘を預けるらしい。

世界で唯一の正義の剣とたたえられるゼロ。
そのゼロの鞘を受け取るという事は、中華が『正義』を使えるという事。
もちろんその為には相応の力が必要だ。

天子が、主催国のトップであるから当然の義務として、議長席に座った会議は敵対関係の国々が多いにもかかわらず、どこかほんわりと始まって終わった。もちろん中華に対して悪意を抱く国も多いが、基本的に今回はそういう意見はほとんど出なかった。また、天子が答えに窮するような問いも無かった。
なにしろ太陽風が原因という結論は、すでに科学者の会合で出ているし、緊急対策としていにしえの観測装置を何とかして使って今後の参考にしようとの結論も出ている。いにしえの観測装置とは人工衛星や廃棄された宇宙ステーションである。
ずっと以前、世界が戦争以外にエネルギーを向けていた時代の遺産。
それを持っているのは中華とブリタニア。

世界は正義の剣を中心に両大国がバランスをとる体制を見せ始めた。
もちろん、そこには大量の悪意も存在する。
しかし、いかなる悪意もこの微笑には融けてしまうだろうとはミレイの弁である。
平和の三女神。
ブリタニアの現皇帝、中華の天子。そして「一般人です」とのコメントを出し、公式には参加者ではないが、日本の皇。
会議が終わった後、すっかりくたびれた天子を囲んで、女性軍はお茶会である。
三女神のほかに、ミレイや各国首脳の夫人達も招かれた。
本来ならマスコミはシャットアウトなのだが、ミレイが招待された事でその辺りはあいまいにされた。
「お疲れでしょう」の海の瞳のお姉さまの声にポロリと本音を洩らす天子。
「服が重くて、それに、お尻が痛かったの」
このかわいらしい感想に各国首脳婦人は大いに警戒心を緩めた。
まだ子供だと。
天子はこの時点では知らないが、各国首脳婦人の中には複数の、星刻と関係があった女性がいる。
まだ青い頃からつまみ食いして、すっかりいい男に仕上がった頃においしくいただくはずが、天子に横取りされるとは。
悔しい、というのが彼女達の感情。
しかし、現実に目の前にいる天子はまだほんの子供。
となると噂は事実ではなく、もうひとつの噂、大宦官を廃したあと中華は革命将軍の下にある。しょせん天子は血筋だけの傀儡である。こちらが正しいと彼女らは信じた。人は自分の感情に都合のいい事実を素直に信じるものである。


デザートには意外にも中華の菓子ではなく、オレンジムースが出た。
オレンジの香りを生かしたその風味にはさすがに8000年の皇族と、味に五月蝿い首脳婦人達も素直に頷いた。


女性達が平和と美味を味わっている頃、男達もデザートタイムとしゃれ込んでいた。ただし、こちらは美味とは程遠い。
中華軍精鋭の白虎300機が軍勢をそろえてお目見えした。あの神虎の意識を受け継ぐ量産機。
中華は正義の鞘を受け持つにふさわしい国であることを、各国の前に見せつけた。

実のところ会議に間に合わせるため、外見だけ大急ぎで造らせ、これからもう一度部品を外して取り付けしなくてはならないとはいかにも中華らしいお家の事情であった。

プロポーズ小作戦61

2009-05-02 13:32:33 | コードギアス
プロポーズ小作戦61
2020年8月

2020年8月初頭
蓬莱島で国際会議が開催された。議題は先日の世界大停電の件である。
どこの国も最初は自国だけと思った。しかし、情報をすり合わせるとほぼ同時に世界中に起きた事がわかった。どこかの機関の謀略を疑う声も大きかったが、今の世界にそれだけのシステムは無い。
わずか2年足らずで形骸化した超合衆国連合であったが、元参加国の間のホットラインはまだ生きていた。
集まったメンバーは世界をリードする政治家達であったが、同時にあの悪逆皇帝に捕虜にされたいた仲間でもある。
会議の前のティールームでは、天子を囲んでほのぼのとした空気が漂っていた。
「大きくなったね」
「いや、それよりもきれいになったよ」
「最近は外にも出られるようになったかい」
「古語もうまく話せるようになったんだね」
白髪頭の多い各国代表が口々に天子に話しかけるのを見て、取材キャスターのミレイは思う。
なんだか、久しぶりに本家の秘蔵孫娘に会えた、分家のおじさん達みたい。
気持ちはわかる。天子は前もかわいかったけど、最近はほんのり色づいて、かわいい以外の魅力も含まれてきている。

あんなにかわいい子の傍にいて、あの男よく理性が持つわね。
星刻は隠しているつもりだが、彼と天子が2重重ねの片思い状態なのは世界中に知りつくされている。
とうぜん、ミレイも知っている。
ミレイ的には心ひそかに、周りから見れば面白がって、応援もしている。
ミレイが知るところによると、ゼロ革命直後は天子をいだくように守っていた星刻だが、このところ妙に距離を置いている。かと思えばジノを天子に近づけさせてみたりと、まるで「私は忠義を捧げているだけで、断じて不埒な感情など抱いていない」と叫んでいるようだ。

ティールームのぽわぽわほのぼのの空気は、冷然とした声で吹き払われた。
その声を聞いた代表の一人は首筋に刃を充てられた気がしたと後に手記に書いている。
「代表の方々は会議室にお移りください」
中華大司馬の声であった。

プロポーズ小作戦60

2009-05-01 22:41:31 | コードギアス
プロポーズ小作戦60
2020年8月


スザクは携帯電話を手の中に隠した。縮小されたデータを拡大する。
そこには一枚の写真。1メートルもある大きなケーキにたくさんのろうそくが刺さっている。
20センチのチョコプレートには7月生まれおめでとうの大きな文字。
懐かしいアッシュフォードの誕生会のケーキ。
ろうそくの数は85本。
シャーリー スザク リヴァル ミレイ
みんなの分がちゃんとある。


その映像がアーニャのブログに上がったのは7月25日。キカイダーのネット名を持つ青年からの投稿。
なぜだか、一日だけで消えてしまった。       入力者注。ここでわかる人にはわかっただろう。何故キカイダーなのか。


同じ画像を藤堂も見ていた。
スザク君、声をかけることはできなくても、君達を思ってくれている誰かがいる。


同じ画像を中華の大司馬も見ていた。テストパイロットを乗せた白虎5体を相手に模擬戦闘訓練をしている最中に。
5体の白虎からスラッシュハーケンが飛ぶ。神虎はほとんど足場を動かさずに避ける。
慣れたものが見ればわかるが、白虎の動きは完全に同調している。
(リンクプログラムを改善した方がいい。)
白虎には神虎のデータから作られた操縦補助プログラムが使われている。
パイロットの腕がレベル以下なら、補助プログラムは自律し操縦をカバーする。
どうやら、テストパイロットは誰一人として、補助プログラムよりいい腕ではないらしい。
ナイトメアで戦場を駆けていた傭兵上がりとはいえ、乗っていたのはグラスゴーである。無理な要求はできない。
まだ、航空訓練のデータも必要だ。
胃が、重い。
星刻は誕生ケーキの画像データを縮小する。見ているだけでも胃に重そうな映像だ。ケーキの映像が消える。
代わりに浮かび上がるのは幼い天子の映像。星刻の秘蔵の宝物である。
ゼロ・レクイエムの後、ようやく修理を終えた神虎に乗って最初にしたことは秘蔵映像のデータが無事かどうかの確認だった。



「天子様、あなたを御守りするモノを必ず創り」
誓いの言葉が途中で消える。
5番の番号を打たれた白虎が猛然と突っ込んでくる。他の機体は逆に後退している。
当然の判断である。訓練だから主砲は封じてあるが、神虎のスラッシュハーケンは健在だ。
補助プログラムが自動的に退避行動を採る。
では5番だけ何故別の行動を採れる?
星刻は訓練用のハーケンで5番の機体を倒した。
同時に残りのハーケンを打った。
4番の機体が戦闘不能サインを出す。
そのサインを確認すると同時に星刻は剣をはらった。2・3番機が倒れた。その背後から守られるようにして突っ込んでくる1番機。さすがにこれには星刻も少しあせった。
傭兵上がり達には給料以外に、神虎に傷を付けたらご褒美として最高級娼婦との一夜を約束している。幻の存在とうたわれる纏足の娼婦。星刻も一度抱いた事があるが・・・あれは快楽というより・・・苦痛だった。

突っ込んできた1番機はすでに剣を振り上げている。
いくら星刻でも今から剣で受けるのは不可能だ。
「修理代がかさむのは好きではないが、この請求はラクシャータにまわすべきだな」
つぶやいた星刻は剣の角度はそのままに、柄を1番機のコクピットにたたきつけた。
おそらくパイロットは気絶か失禁かを起こしているだろう。
もし訓練でなければ、完全破壊していたな。
星刻はそう考えながら、剣を鞘に収めた。


ナイトメア自身が仲間意識を持ち、目的のために行動する。今回の白虎の行動にはそういう要素が見えた。
なるほど計算された犠牲。最も効率的に神虎を倒す方法。確かに自分が白虎に乗って、自分の乗っている神虎を相手に戦うなら、この方法もありだろう。
星刻は今回のプログラムを白虎の基本に据える事に決めた。

これからの戦いにナイトメアはますますメインの兵器として使われるだろう。
その使われ方は、戦車軍団のような集団戦闘をメインとするはずだ。
ならば機体そのものにリンク機能を搭載し、もしもパイロットが死んでも、友軍が近くにいる場合自動的に戦闘に参加するようにしたい。いずれは親となる機体にだけパイロットを乗せ、子機体は無人化したいが、おそらく10年はかかるだろう。
今のゼロが見せている戦場のポイントを超絶スペック機で単機で押さえるやり方は、天才にしかできない。
中華に必要なのは平凡でも粒が揃った兵士達。
星刻が兵士達に要求するのは天子様への忠誠。足りない腕前は「私が補おう」

プロポーズ小作戦59

2009-05-01 22:40:14 | コードギアス
プロポーズ小作戦59
2020年8月
夜陰にまぎれて若者達は姿を消した。一人残った藤堂は道場がこのまま消えてしまわないかと、半ば本気で考えていた。

翌朝、日がまぶしくなっても、道場は解けてなくなったりしなかった。
月の魔法でも、狐狸のいたずらでもなかった証拠に、ぞろぞろやってきた工事人が教えてくれた。
つまりは町おこしだと。
このあたりは田舎の事でろくな産業は無い。これといった観光名所も無い。
一体どうやって復興したら良いやらと頭をひねる年寄りに若者が言い出した。
「奇跡の藤堂の道場を再建し、それを中心に観光化しよう」
たまたま完成間近だった道場で3人の男は出会い、新たな同盟という顛末になった。

最初は偶然、2度目は必然、3度目は作為、4度目からは普通の事になる。
はたして、この出会いはどこまで行くだろうか。